今回の千曲川増水(7月8日~9日)の時の状況を前の記事はライブカメラ映像の観察が主体でしたが、千曲川の水位からはどうであったのか、以下、一応検討しておくこととします。
立ヶ花ピーク水位 7月8日 18時20分 7.32m
柏尾橋ピーク水位 ↑ 22時30分 10.22m
柏尾橋の水位観測所から100m程上流に日光川樋管はあります。
従って河床勾配分としては0.1mのプラスとなりますか。
1、全体のロケーション
(1)空撮画像
千曲川にかかっている橋が柏尾橋。
そのすぐ下側に日光川が流れ込んでいて、日光川樋管がみえる。
少し離れた上の方には今井川が流れ込んでいて、今井川樋管が確認できる。
そして今井川樋管の堤防をはさんだ反対側にはこんな風に遊水池が広がっている。
その二つの川に挟まれた左岸堤防に2つの千曲川まで続いている筋がみえる。
その筋で端に近い方に「柏尾橋水位観測所」が設置されている。
設置されている水位計の設備が取り付けられたポールの影が確認できる。
そうして、実際にその場所を歩いてみるとそこには「柏尾橋水位観測所」という銘板とともに設備一式が確認できるのである。
さて日光川樋管を真ん中に今井川樋管と反対側にもう一つの重要な施設、広井川樋門と排水ポンプ場がある。
2つの樋管と遊水地、それから樋門についてはライブカメラ映像からも確認できる。
(2)道沿いに見ていくとすると、、、
野沢側から戸狩へ橋を渡り切ったところで右を見ると今井川樋管と水位観測の設備が設置されているポール(ぼやけてますが、、、)が確認できる。
前を向くと左側に日光川樋管が見え、道が下り坂になっており、それに合わせるかのように堤防も高さが低くなっているのが分かる。
その道を下り切って突き当りを左折すると日光川にかかる橋がある。そこから千曲川の方を見ると日光川樋管の建屋まで見通せる。
後ろを振り返ると日光川が右側にカーブしその先にJR飯山線の線路が見える。
さらにその道を進むと戸狩野沢温泉駅に着く。
そこを通り越して踏切を渡ってすすんで行くと今度は広井川の橋を渡る事になる。そこから千曲川堤防の方を見るとJRの鉄橋、そのもっと先には柏尾橋のトラス構造が確認できる。
橋からの下り道の突き当りを右折して進んで行くと左側に山に向かう登り道があり、踏切がある。台風19号の時にはその踏切辺りまで浸水した模様。(注1)
さらにみちなりに進むと今井川と交差する事になる。道から下流側を見るとこうなる。 河道が左にカーブしているが、今井川増水時はこの辺りから下側が遊水地となる。 遊水池の西端にあたる位置からの眺め。奥の方に千曲川の堤防が見える。
2、日光川樋管は何時閉められたのか?その時の千曲川水位の値は?
「・その33-1」によれば
#434 2020/07/08 13:22
日光川樋管ではゲートが開きっぱなし
いいのかねえ、閉めなくて??
#437 2020/07/08 13:51
ねえ河川事務所さん
日光川樋管の左側のゲート、下まで降りずに途中で止まっているよ
右側のゲートはしっかりと降りたようだ。・・・
となっている。
従って8日の13時22分には開いていて13時51分には閉じていた、もっとも左岸側のゲートは半開き状態だったのだが、、、。
これを柏尾橋の水位データと観測所の標高値300.5m、それから河床勾配分の+0.1mを加味して日光川樋管位置での水位標高をだすとこうなる。
13時20分 309.2m ゲートは上がっていた (柏尾橋水位8.58m)
13時50分 309.3m ゲートは下がっていた (柏尾橋水位8.71m)
こうして「千曲川水位が309.3m程度になると日光川樋管は閉められる事が必要となる」という事が分かる。
さて前述したように柏尾橋のピーク水位は22時30分 10.22mである。
この時に日光川樋管の水位は標高値換算で310.8mとなる。
そうして日光川が氾濫を始める水位もちょうど310.8mあたりにある事が地図から読み取れる。
こうしてこの時は千曲川の水は左ゲートが半開きだった為日光川に逆流したものの、ぎりぎりで日光川は氾濫せずに済んだ、という事が分かるのである。
3、では昨年の台風19号の時はどうであったのか?
この時の柏尾橋のピーク水位は15.03m。
標高値に換算すると315.5m、河床勾配補正0.1を足しこんで、日光川樋管位置では315.6mとなる。
それで千曲川左岸堤防そのものの標高は317.3mですから、それなりに余裕はありましたが、橋から下り坂になる道路との接続部の標高は315.8m程度であり、この部分は本当にぎりぎりで越水を免れた模様です。
つまりは「千曲川の水は堤防をぎりぎりで越える事はなかった」のです。
しかしこの時も日光川樋管の左ゲートは半開きだった為、千曲川の泥水が大量に日光川に逆流しそのあたり一面を水浸しにしたのです。
戸狩野沢温泉駅から今井川の遊水地を囲むようにして走っている道路の標高は312m程度でありこの道を越えて水はJR線路敷地まで押し寄せたかと思われます。
ちなみにその様でありましたから、今井川の遊水池に溜まりこんだ水は今井川上流から流れ込んだ水はもちろんの事、日光川から逆流してきた千曲川の泥水も道沿いに流れ込みそこに大量に混じりこんでいたものと思われます。
この逆流水は今井川のある北側のみならず広井川のある南側にも流れ出しました。
しかしその水はそこで広井川に流れ込み、広井川を越えては南側には流れ出しませんでした。
何故かと言いますと、その時には広井川の排水ポンプがフル稼働しており、広井川に流れ込んだ千曲川の逆流水はそこから排水ポンプによってまた千曲川に戻されていたからであります。(これは不幸中の幸い、と言える事なのでしょうか?)
こうしてこの地区の浸水エリアは北は今井川の遊水池周辺、西がJR線路敷地、南が広井川までに限られたのでした。
注1:飯山市報2ページ目下段に「大深区・戸狩区、内水の氾濫による浸水」の地図と記述が確認できます。
但し閉められるべき樋管のゲートが半開きで、それゆえに千曲川の水が逆流し氾濫した事を「内水による氾濫」と分類する事は出来ないと思われます。
日光川樋管で起きていた様な「ゲートが閉じられていなかったために千曲川からの逆流が発生し、氾濫した」と言う状況は、それぞれに経緯は異なるものの、もたらす結果としては皿川樋門、そうして有尾樋管で起こっていた事と全く同じであります。
それぞれに異なる経緯:日光川樋管は「設備メンテナンス不良」、有尾樋管は「担当者の単なる閉め忘れ」、そうして皿川樋門は「始めから閉める予定なし」というもの。
訂正の追記:飯山市の浸水エリアの報告は「過小報告」になっていた件。(2020/8/28)
飯山市の昨年11月の市報報告に基づいた以下の記述は間違っていました。
↓
この地区の浸水エリアは北は今井川の遊水池周辺、西がJR線路敷地、南が広井川までに限られたのでした。
正確には「令和元年東日本台風(台風第19号)による千曲川・犀川出水状況」という河川事務所の報告の25ページにある記述となります。
つまり「JRの線路を越えて西側に」も「広井川を越えて南側にも」浸水エリアは広がっていたのです。
それにしても「飯山市の報告の信頼性の無さ」には驚くばかりであります。