シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その6・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2019-12-20 11:54:39 | 日記

さて「その6」は前回予告の様に
「なぜ河川事務所と飯山市は皿川樋門を開きっぱなしにしたまま台風19号を迎える事で合意していたのか?」
という事がテーマの話となります。

国が管理する千曲川の部分については、飯山市としては避難勧告、避難指示と言うような「受け身の対応をする事」が主な仕事となります。

しかしながら県や市が管理する小河川や排水路についてはそのような対応だけでは不十分であり、より積極的な対応をしていく事になります。
その様な目的の為に「大規模氾濫減災協議会」という組織が作られました。

・「水防災意識社会 再構築ビジョン」に基づく  北 信 圏 域 の 減 災 に 係 る 取 組 方 針(1018年2月5日)
https://www.pref.nagano.lg.jp/hokuken/saigai/documents/04hokushin-houshin.pdf

この組織の主要メンバーの一つとして飯山市が入っています。
それからアドバイザとして
国土交通省 北陸地方整備局 千曲川河川事務所 の名前が確認できます。

やることとして
『「現状の水害リスク情報」
「市町村が行う円滑かつ迅速な避難の取組」
「的確な水防活動等の取組」など
各取組状況の情報を共有し、円滑かつ迅速な避難及び的確な水防活動等を実現するために地域の取組方針を策定し、周知すること』
と書いてあります。

その文書の5ページに以下の様な表があります。
表-2 【近年の災害発生状況】
この中で【飯山市】 と書かれた部分が一応飯山市が認識している災害記録であり、したがってそれらがまた繰り返される事が無いようにする、という事がそのまま目標ともなる訳です。

そうなりますと飯山市としては
千曲川(県管理区間)
樽川
広井川・日光川
という3か所が要注意場所である、コトバを変えますとそれ以外の場所は注目しなくてもよい、という様に認識していた事が分かります。

千曲川(県管理区間) は飯山市の相当に下流域であり、今回の皿川氾濫とは関係を持ちません。
樽川は千曲川右岸にある支流であって、これも左岸にある皿川氾濫とは無関係です。

広井川・日光川・(今井川)流域は千曲川左岸にあり、ここと皿川との関係は、どこに事前に排水ポンプ車を配置しておくのか、という事前準備の検討段階で関係が出てきます。

そうして問題の皿川は 表-2 【近年の災害発生状況】には登場してこないのです。
しかしながら実は
「30数年前にも、内水氾濫したのにその後キチンと改修しなかったのか、どうしたことだろう。」
と言うような情報もあり疑問も指摘されています。
そのようにして「皿川が氾濫すれば飯山市内は水浸しになる」というのは相応の年齢の方には周知の事でありました。

さてそういう訳で飯山市はこのリスク認識を元に今回の台風19号対応の為の事前準備を始めました。
まず第一に
『平成 29 年 10 月 広井川・日光川 台風 21 号 浸水被害【飯山市】』
という事例に対応しなくてはならない、と考えたのです。(2020/9/4:追記:この時の被害は床上・床下合計15件、住居以外は9件:市報H29/11月記載)

それでこれは具体的には以下の事例であると思われます。

2017年 10月23日 飯山市降水量119.5ミリ 立ヶ花水位ピーク8.22メートル

この時は詳細については後述いたしますが皿川については「皿川樋門は開いていたが、ぎりぎりで氾濫と言う事態には至らなかった」のでした。
しかしながら、広井川・日光川・(今井川)流域では浸水被害がでた、という事です。

それで、「浸水被害が出た」という情報だけで「広井川・日光川流域があぶない」という事になりかつそれは上記 の「水防災意識社会・・・取 組 方 針(1018年2月5日)」にも記載されており、協議会内部での共通認識でありましたから「広井川・今井川に対しては事前準備を万端に整えた」という様にしました。
しかしながら事実は、といいますれば、「前回、皿川堤防はぎりぎりセーフ」であっただけであり今回の台風19号では耐える事は出来なかった、-->飯山市水浸しでありました。(注1)

19号台風襲来に対する飯山市と千曲川河川事務所の事前準備について
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今井川対応(今井川樋管)
飯山市ーー>国、県に対し事前の排水ポンプ車の出動を依頼
           飯山市保有の1台の排水ポンプ車も出動
県の報告「台風19号による県内への影響について」 P22
https://www.pref.nagano.lg.jp/bosai/documents/7re.pdf
『今井川 いまいがわ 飯山市
県 排水ポンプ車稼働 ・国、県、市ポンプ車各1台出動 12日23:30~ →13日19:00 完了』

今井川に対しては事前に国、県に出動要請し12日の夜から合計3台にて排水作業を行う。
そして今井川樋管を閉じたのは12日23:30である事がわかる。(樋管を閉めてから排水するのが手順。)

樋管を閉じたのは国から樋管操作を委託されている地元の方。
そうしてここで国とあるのは千曲川河川事務所の事です。
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上記今井川に対する飯山市が行った事前準備についての情報は飯山市の報告の中には出てきていません。
それゆえにまた今井川樋管をいつ閉じたのか、という情報も飯山市からは公開されていません。

これは飯山市が行った2回のプレス発表でのストーリー、「飯山市は避難勧告を出すのが遅れた、というミスのほかは特に目立ったミスはない」という主張を正当化する為であるように見えます。

といいますのも飯山市と千曲川河川事務所は皿川と皿川樋門に関しては「皿川樋門を閉じて排水ポンプ車で排水を行う」という計画を立てず、したがって皿川については何も事前準備をせず、「皿川樋門は開けっ放し対応とする」という事で合意していたからです。

そうしてその事が今井川樋管に対する飯山市が行った事前準備の情報を公開することで両者の事前対応が比較されてその相違点が明確になってしまう事を恐れたのです。

そうしてこのように飯山市が判断し行動したのは何故か、といいますれば「皿川樋門は解放状態でも大丈夫であろう」と想定したからであります。(注1)
そうしてこのような想定は河川事務所もまたその様に想定し、同意していたものと思われます。

といいますのも、今井川に対しては「樋管を閉めなくてはならない」と飯山市も河川事務所も想定し、同意し、したがって排水ポンプ車を今井川に事前に配置しておくという準備を行いました。
同様にして、もし皿川樋門を閉めなくてはならない、と河川事務所も飯山市も想定していたならば、そこには今井川と同様に排水ポンプ車が事前に配置されていたことでしょう。

しかし事実は皿川には今回、何の事前準備もなされていませんでした。

注1
この件詳細につきましてはページを改める事と致します。

注2
上記記事で参照している飯山市の報告は以下のものです。
令和元年台風19号関連災害経過報告【第2報】
https://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/senryaku/press/1028iiyama.pdf

追記:2021/6/20:関連情報として : 水害に備え排水ポンプ車を配備 2019.11.15 長野県飯山市 : 今回の台風19号での水害では、太田地区の今井川樋門で12日深夜から13日夕方まで出動し、内水排除を行いました。 : 


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