9、この場所での過去の氾濫例
さて「台風19号での静間樋管での氾濫は3回目である」という証言を得ている。
そうして「前回は平成18年であった」と聞いている。
それで指摘のあった平成18年の大水の例を以下に示す。
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H18( 2006年) 7月19日 梅雨
立ヶ花ピーク 19日 15時 10.67m(10m越え12時~18時)
飯山ピーク 19日 10m近い (18時頃)
24時間雨量 一時間雨量最大値
18日 49ミリ 22時と24時に6ミリ
19日 44ミリ 2時に9ミリ(11時から晴れ)
以上よりこの時には飯山の千曲川ピークは18時頃、8mを越えたのは11時頃である事が分かります。
但し台風19号の2年前の台風ではこの場所での氾濫は確認されなかった模様である。
↓
2017年 10月23日 台風21号
立ヶ花水位ピーク 8.22m 15時
飯山ピークは 8m 18時頃
24時間降水量 119.5ミリ(3時13ミリ 9時10ミリのダブルピーク)
千曲川水位ピークは18時の8mであった。
この時もいままで検証してきた状況からすると、この場所ではゲートは開きっぱなしであったと推定される。
だがこの場所ではこの時は氾濫は確認されていない。
さてそれは何故か、ということになる。
答えは「この時は千曲川水位がこの場所での氾濫を始める水位に対してぎりぎりであった」という事である。
それでこの問題を検証する為に飯山水位観測所と静間樋管との間の河床勾配を求める事になる。
一般的には飯山辺りでは平均で1/1000という値が用いられる。
しかし実際に地図で調べてみると観測所と静間樋管のあいだの河床勾配はそれほど大きくはなく1.6kmで0.89mであった。(注1)
この値を使って飯山観測所での水位8mを水位標高に換算して得られた値315.1mを静間樋管に戻すと
316.2m(=315.1m+1.11m)という値になる。
それでこの水位では静間樋管の地上面標高値316.3mを超える事はなく、ぎりぎりで氾濫しなかった、という事がわかる。
だがしかしH18( 2006年)では水位は8mを越え、10m近かった。
従ってこの時はこの場所では2m弱の高低差をもって千曲川の水が逆流した事が分かるのである。
この様にして「最初に示した住民の方の証言は検証される事になる」のである。
10、ここまでの結論
さて、台風19号の折に飯山観測所で水位8mに達したのは13日の午前1時であった。
従って消防団・第一分団の分団長がその時刻までに静間樋管を閉めていたら今回のこの場所での氾濫は防ぐことが出来たのである。
もちろん分団長が自己申告している「12日の23時に本当に閉めていた」ら、この場所で千曲川からの逆流は起こるはずがないのである。
したがって飯山市が公表している「12日の23時に静間樋管を消防団・第一分団の分団長が閉めた」と言うのは虚偽報告である、という事になる。
注1:ただしこの値は川底の勾配ではなく堤防道路の勾配である。
川底の勾配は地図で調べるのはなかなか難しいので、そのかわりにここでは堤防道路の勾配を使っている。
そうして、飯山水位観測所と静間樋管との間の距離は2kmであるので河床勾配による補正値は
1.11m=(0.89m÷1.6km)X2.0kmという事になる。
追記(2021/2/16):千曲川増水時に静間樋管が閉められたかどうかを確認する方法。
静間樋管の操作部、ゲートを上げ下げするシャフト部分を写真撮影すればよい。ゲート本体は千曲川の増水によって見えなくなり、したがってゲートが閉まっているかどうかはその方法では確認できない。しかし、ゲートが実際に下まで降りているならばそのゲートを下まで降ろしたシャフトの高さも減っていなくてはならない。
静間樋管の通常の時のシャフトの高さはここまである。->・静間樋管1
それで千曲川増水時にそのシャフトを写真撮影し、後日、ゲートが上げられたとされた時にまた写真を撮る。その二つの写真を比べて「確かにシャフトの高さがゲートを下げるのに必要な分だけ下がっていたなら、ゲートは閉められていたことになる。」だがそうでない場合は「静間樋管を閉めた」という消防団、あるいは飯山市の報告は事実とは違う、という事になる。
さてもうひとつ、静間樋管が今まで一度も千曲川増水時に閉められた事がない、動かした事がない、という証拠(?)を示そう。
静間樋管のひとつ北側にある城南樋管はこうなっている。->・城南樋管
写真を見ると分かるのだが、シャフトの上部が白くペイントされている。これは千曲川増水時にゲートの位置をみなくても、このペイント位置を目印としてシャフトを降下させ、そうしてゲートが実際に下まで降り切った事を確認するためのものである。ちなみにこのペイント目印は有尾樋管にも雨水排水ポンプ場の貯水池ゲートのシャフトにもついている。だがしかし静間樋管にはこのペイント目印がついてはいないのである。
つまり「静間樋管はいままで一度も千曲川増水時に操作された事がないのでは?」と疑いを持つのに十分な状況にある。
ちなみに城南樋管、排水ポンプ場は「まちづくり課が管理担当」そうして静間樋管は「道路河川課が管理担当」である。
追記:2023/9:静間樋管のシャフトに白ペンキのマーキングを確認した。
飯山市はようやく「静間樋管を大水の際には閉める事を決めた」様である。
しかし、それにしても消防団第一分団長の無責任さにはあきれるし、そうしてまた道路河川課のいい加減さ、議会での虚偽答弁には腹が立つのである。
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追記の2:2023/10月
静間樋管のシャフトにはいまだ白ペイントマークがなかった。
上記グーグルマップで一見、白ペイントがある様に見えたのは見間違い。
現物確認したら、白ペイントマークがない。
つまり「市役所は今もまじめに静間樋管を閉めるつもりは無い」という事を示している。
そうであれば大水の際には県町エリアには千曲川からの逆流がまた起きる可能性が大である。
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