ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

今回の要介護認定システムの基本的な問題

2009年03月20日 | 社会福祉士
 「介護認定調査員テキスト2009」を拝見すると、今回の要介護認定調査システムの改定の目的は、認定のバラツキを防ぎ、同時に調査の簡素化にあるという。これは確かに重要な課題であり、そうした工夫は多く見られる。その意味では評価できる部分もある。

 しかしながら、今回の改正で混乱を生み出した最も大きな原因は、「心身の能力」、「障害や現象(行為)の有無」、「介助の方法」の3つの評価軸に分けたことにあると考える。

 従来は、調査項目は、昨日のブログで示したように「心身の能力」や「障害や現象の有無」でもって、すなわち、利用者の身体機能状態と心理行動状況でもって(社会環境状況を除外して)、介護の時間を推計していた。ところが今回は、従来は能力等で捉えていた16項目について「介助の方法」という軸で捉えるように変更したが、これは別個の調査項目に相当し、同じ軸で評価することが理論的に無理ではないかと思う。

 「心身の能力」の18項目や「障害や現象の有無」の21項目も「介助の方法」に収斂させた調査項目にするか、逆に、従来通り「介助の方法」の項目を能力として捉えるのであれば、このような新たな混乱を引き出さなかったと思う。前者にするとたいそうであり、個々の「介護の方法」について身体機能状況、心理行動状況、社会環境状況で介護の程度を捉えることになる。

 具体的な例として、「介助の方法」として「洗身」を取り上げると、この介助には、利用者の身体機能状態、精神心理状態、社会環境状況が影響して生じているため、調査員ハンドブックでも説明が加わることになるが、単に洗身する能力だけでなく、ひとり暮らしや福祉用具活用の有無等の社会環境要因や意欲といった心理的要因により影響を受けることになる。この介助の方法は、ある意味、身体機能状態、心理行動状況、社会環境状況が連動し合い生じたものであり、「心身の能力」や「障害や現象の有無」とは別個の次元のものであり、同時に両者をミックスすると、「心身の方法」と「障害や現象の有無」は2重にカウント部分が出てくる。

 ただ、「心身の能力」や「障害や現象の有無」の項目を「介護の方法」に転換できれば、最終的には、心理行動的要因や社会環境的要因が含まれた、私の考えに近い要介護認定システムになると考える。その意味では、すべての項目を「介護の方法」に転換していく過渡期での混乱であるとすれば、少しはやむを得ないのかもしれない。

 ただ、それぞれの「介護の方法」を軸にすると、家族介護をその要素に位置づけざるえなくなり、当然家族の介護力が弱ければ、介護ニーズが高くなるという結果になる。このことは、要介護認定において、従来から言われてきた、家族の介護力については、認定に含めないという原則が崩れることになる。

 そのため、具体的に、「洗身」について家族をどのように扱っているかを「認定調査員ハンドブック」でみてみると、「常時、介助を提供する者がいない場合、不足となっている介助に基づいて基本調査の選択を行う。」としている。これは、明らかに家族の介護力をベースにした判断が行われることを意味しており、認定調査において大転換をしていると考える。

 ただ、このように書かれると、次の疑問が生じる。すなわち、家族の介護力がある場合には、どのように基本調査に書くのかについての言及が必要である。これは認定での最も根本的な問題を提起しており、一定の方向を示さなければ、さらに認定でのバラツキを生み出すのではないかと危惧する。