ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

介護の雑誌も勝ち組・負け組が決まる時期(下)休刊の辞

2009年03月10日 | ケアや介護
 『介護支援専門員』が休刊になるため、最終号に編集委員を代表して、「休刊の辞」を載せてもらうことにした。ここには、率直な無念さを書かせていただき、同時にある意味で編集委員としての責任を果たし得なかったことを、読者にお詫びするものとなった。  

 これは、最終号となる3月号に掲載される文章であるが、最終ランの第11巻2号を是非ご購読いただき、有終の美を飾らせてあげたいと願っている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                         休刊の辞

 『介護支援専門員』という文字通りケアマネジャー向けの専門誌である本誌が休刊になる。介護保険制度が始まる2000年4月より遡ること1年前の1999年5月に創刊号が出されて以来,編集委員のひとりとして関わってきた者にとっては,至極残念でならない。

 この雑誌は,今回でもって休刊となるが,通巻で60号となり,この11年間,介護保険制度でのケアマネジャーの姿を追い続けてきた。現実に,休刊に至った理由はどこにあるのかを編集委員として考えると,大きく2点あるように思う。

 第1は,ケアマネジャーの多様化に応えることができなかったのではないかという反省である。この雑誌の特徴は,ムック的に,その時その時の課題に合わせた,より適切なテーマを決め,それにふさわしい著者を決めていくことにあった。ところが,介護保険創設当時は,ほとんどケアマネジャーは同じレベルであり,一定のレベルの底上げを狙いにするだけでよかった。しかしながら,毎年輩出されてくるケアマネジャーにより,新人からベテランまで多様になっていった。同時に,ケアマネジャーも居宅介護支援事業所だけでなく,介護保険施設からグループホーム,小規模多機能型生活介護,さらには地域包括支援センターにまで広がっていった。こうした多様化に伴って,毎回単一のテーマ設定だけでは,多くのケアマネジャーのニーズに応えきれなかったことが原因しているのではないかと反省している。

 第2に,読者数を増やせなかった理由は,二度におけるマイナスの介護報酬改正と,特に居宅介護支援事業者の慢性的な赤字状況が影響を及ぼしたと考えている。ケアマネジャーの場合は,確かに個人購読が多いことも事実であるが,介護事業者経営実態調査でも明らかであるとおり,事業者の経営が悪化していたのと同時に,個々のケアマネジャーの給与も低くなっている。こうした介護保険制度の環境が休刊に至る上で大きかったと考える。

 そのため,編集者から休刊するか否かの相談を受けたときには,今回の介護報酬改正で,居宅介護支援事業者の収支が黒字になる事業者も多くなることが見込まれるため,多様なケアマネジャーを意識して編集することで,もう1年様子をみることができないかと提案させていただいたが,それでも上司からよい返事をもらうことができなかったようである。

 ケアマネジャーが学ぶことができる専門誌がひとつ減ることが残念でならないが,あえて言うなら,休刊であり,廃刊でないことに一抹の希望を見いだしたい。同時に,愛読いただいたケアマネジャーには他の専門雑誌等を活用し,今後も研鑽に励んでいただきたい。

 最後に,この雑誌の60号すべてをひとりで切り盛りしてきた編集担当者の走り仁さんに,「ご苦労さんでした」という言葉を添えて,休刊の辞としたい。


                           『介護支援専門員』  編集委員  代表 白澤政和