ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

「要介護認定」算定の枠組

2009年03月19日 | 社会福祉士
 4月からの要介護認定システムを改定することで混乱が生じており、「要介護認定 認定調査員テキスト2009」と「要介護認定 介護認定調査会委員テキスト2009」を読んでみたが、ここから分かってきたことについてのコメントは次のブログに譲るとして、今日は、要介護認定の本質を最初に述べておきたい。

 要介護認定は、介護時間調査をベースにしていることからも、個々の利用者に対してどの程度精神的・身体的な介護に時間を費やしているかを明らかにし、時間を規定している要因を明らかにすることである。この結果、利用者の様々な要因について調査すれば、介護時間が予測され、要介護度が決定されることである。

 次の、要介護の時間を規定する要因としては、利用者の病気、ADL、IADLといった身体機能的な要因、利用者の意欲、精神・行動症状(BPSD)といった心理行動的な要因、介護者の有無や近隣との関係、住環境といった社会環境的な要因、が考えられる。これらの要因が関連して、様々な身体的・精神的介護状況が生じてくる。これら様々な介護状況についての時間の総和が介護時間になる。

 これを図にすると、以下のようになる。



 そのため、介護を必要とする時間をカウントする場合は、2つの方法が可能である。第1は、利用者の様々な身体機能的要因、心理行動的要因、社会環境的要因について調査し、それぞれの要因について重みづけ(ウエイトづけ)を行って、時間を算定する方法である。第2の方法は、第1の結果導き出される様々な介護内容について、それぞれ必要な時間を総和する方法である。

 これら両方の方法には、それぞれ難点がある。第1の方法については、要因が多様であり、そうした要因を引き出すことが難しく、同時に多くの要因を尋ねなければ、介護時間が算定できなくなることである。第2の方法については、現実に実施している介護内容が適切であるのかどうかの妥当性が検証されていないことがある。また両方の調査の難は、調査で明らかになった介護時間が適切なものであるかどうかである。場合によっては、ミニマムの介護であり、他方は過剰な介護である場合もある。

 現在の要介護認定は、第1の方法を採用しているが、その際に、身体機能的要因に重点が置かれているといえる。さらに、現在の元になった調査は施設入所者に限定されたものであり、一定の社会環境状況の下で行われたものであり、在宅では大きく異なる社会環境要因が除外されることで、在宅での本当の意味での介護時間の必要度は算定できないという問題をもっている。

 さらに、来年度からの認定調査の変更については、第1の方法(申請者の能力、障害や現象(行動)の有無)と第2の方法(介護の方法)に分け、ミックスしてしまったことに抜本的な問題を生み出していると考える。問題はあるが、従来通りの第1の方法のみで認定を貫徹していれば、混乱や問題が生じなかったのではないかと考える。