ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

日本におけるサービス・デリバリー・システムについて(5)

2008年11月27日 | 社会福祉士
5 日本におけるソーシャル・デリバリー・システムの課題
 
日本におけるサービス・デリバリー・システムを確固たるものとしていくためには、以下の4点の課題を克服していく必要がある。

①全ての利用者を対象としたサービス・デリバリー・システム
高齢者のサービス・デリバリー・システムと障害者のサービス・デリバリー・システムは現状では別個のものとなっている。現実には、高齢者は介護保険制度の要支援・介護者であり、同時にその人々は半数以上が身体障害者手帳取得者である。そのため、同じ人が別のサービス・デリバリー・システムを活用することにもなっている。そのため、すべての住民を対象としたサービス・デリバリー・システムを作り上げていくことが第1の課題である。

②生活圏域を基盤にしたサービス・デリバリー・システム
現状では、利用者を発見したり、支えあったりしていく場合には、利用者が住んでいる当該地域でサービス・デリバリー・システムを形成していくことが求められる。これが現在言われている地域包括ケアであり、利用者の生活圏域を設定し、当該生活圏域を基盤にサービス・デリバリー・システムを形成していくことが求められる。

③ケアマネジメント人材の養成
このサービス・デリバリー・システムを機能させていく核となる人材はケアマネジャーである以上、この人材の養成が不可欠である。この人材は利用者の自立を支援し、地域でのQOLを高めていく支援が必要である。このような人材養成は現状では様々な専門職に委ねられているが、本質的にはソーシャルワーカーや保健師が適任であると考えるが、大学および大学院教育に位置づけ、そうした人材の養成が求められる。

④追加的なサブシステムの構築
サービス・デリバリー・システムを構築していくためには、利用者が自己決定・選択できるべく情報提供の仕組み、意思表示が十分できない人に対する意思が反映できる仕組み、さらにはサービスに対する苦情を受け付けて質を高めていく仕組みが求められる。こうしたサブシステムを確保することにより、サービス・デリバリー・システムはより適格に機能することになる。

 さらに、多くの質疑の中で、韓国への示唆として、優秀なケアマネジャーなりのサービス・デリバリー・システムの担い手を養成し、同時にそのシステムを作ることができれば、財源の抑制にも効果を発揮するであろうことを強調しておいた。具体的には、以下の5点である。

①病院からの退院を容易にし、医療費の抑制に貢献できる。
②在宅生活の持続が可能となり、施設入所を抑制することで、福祉財源の抑制に貢献できる。
③インフォーマルサポートも活用でき、フォーマルサービスの利用が少なくなることで、財源の抑制が可能になる。
④利用者の意欲を高めることで、セルフケアが活用でき、フォーマルサービスの利用が少なくなることで、財源の抑制が可能になる。
⑤在宅のサービス間での重複を避け、効率的に利用することで、財源を抑制できる。

 このことが実現するためには、日本においてもシステムの見直しとケアマネジャーの養成の両面での課題が大きいといえる。