ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

学部レベルでの社会福祉専門職養成教育における達成課題について(3)

2008年11月11日 | 論説等の原稿(既発表)
3.基礎教育と社会福祉士の基礎科目の関係での課題
 社会福祉士養成カリキュラムでの基礎科目とされるものは、旧カリキュラムの場合は「心理学」「社会学」「法学」「医学一般」であったが、新カリキュラムでは「人の構造と機能および疾病」「心理学理論と心理的支援」「社会理論と社会システム」「現代社会と福祉」「社会調査の基礎」となり、社会福祉士受験資格の基礎科目は、より社会福祉士が実践する上で必要な知識に収斂した科目名なりシラバス内容に変更された。

 このことは、確かにメリットとデメリットがある。メリットとしては、よい専門性と関連性の深い教育となり、社会福祉専門職教育の専門性を高めることに役立つ。一方、デメリットとして、広く人材を育てる側面が弱くなったことも確かである。

 これについての見解は、社会福祉士資格試験に関わる科目としては、社会福祉士の実践に近い領域での知識の習得であり、基本的な知識については、個々の大学の特色を活かしながら、独自の教育をしていくことが基本方針である。そのため、個々の大学で独自の基礎教育が求められる。それは、日本学術会議が言う「社会思想・社会哲学」「社会史」「社会学」「経済学」「経営学」「政治学」などの社会科学、「生命倫理」「人権思想」「文化人類学」などの人文科学、「社会計画論」「社会運動論」「社会起業論」「福祉経営学」、さらにはスピリチュアリティやホスピスなど現代社会が抱える人間科学的な内容やユニバーサルデザインなど行動科学であろうか。こうした科目を単に羅列するのではなく、そうした基礎として、どのような社会福祉専門職像を築いていくかのコンセンサスが求められ、そこから基礎教育の内容が明確になってくる。

 この具体的な展開は、一般教育科目や一・二回生等のゼミナールで確保することになるが、ここでは、この一般教育科目の位置づけが単に社会人になるための必要な素養と、さらに社会福祉専門職養成に求められる素養は全て重なるわけではない。但し、前者を目的とする素養についても、かっての教養教育という視点が弱くなり、今回、日本学術会議でも「教養教育のあり方」をテーマにして提案を準備している。後者については、旧カリキュラムにおいては、基礎教育科目は多くの大学では一般教育科目で出来る限り賄ってきたのが実情であるが、今回の新カリキュラムの名称通りの教育を実施するとなると、どのような専門職像を捉え、そのために一般教育科目の位置づけを明らかにし、具体的に必要な科目の設定が求められることになる。

 ここで最も重要な社会福祉専門職像については、今後の議論であり、社会福祉の実務者と研究者との総意で創り上げていかなければならない。