伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

夫が知らない家事リスト

2021-04-25 23:43:51 | エッセイ
 家事には掃除、洗濯、炊事、育児というような大括りの見えやすいものの他に細々とした雑用が無数にあって終わりがないこと、それを家事を主として受け持たない相手方が理解していないと腹が立つということをアピールする本。
 そういう嫌みを言うために家事を書き出し始めたら止まらなくなって148項目のリストを作って夫に突きつけたら夫は「離婚届突き付けられるより怖かった」と思ったとか(6ページ)。そうでしょうね。こんなにたくさんやってて大変だねと思うよりも、こんなに私は大変なんだと言うために148項目も書き連ねる執念・怨念におののくでしょう。たとえば「洗濯」の中で「洗濯洗剤を買ってきて詰め替える」「柔軟剤を買ってきて詰め替える」「漂白剤を買ってきて詰め替える」が別項目として1つずつカウントされて列挙されていたり、「お風呂場の掃除」の中で「浴槽を洗う」「壁・ドア・鏡・手すりを洗う」「フタを洗う」「洗面器・椅子などを洗う」「床を洗う」「取れるパーツを外して洗う」「排水溝を洗う」「排水溝のフタを洗う」が別項目として1つずつカウントされて列挙されていたりして(14~21ページ)、そういうことを積み重ねて148項目だ211項目だと言われたら、まぁそういうやり方なら211項目といわず、すぐに1000項目にでもできるでしょうから、挙げられた項目の多さよりも、とにかくそうまでして自分は大変だとアピールしたい心理状態なんだな、怒っているんだなということは理解できると受け止めるしかないでしょう。
 料理は「水面下で24時間稼働している家事」「基本的には主婦はいつも頭の片隅で常に献立を考え、足りない物を買う段取りを、自分のその日の行動の流れに取り組みながら動いているのだ」と書かれていて(51ページ)、それはそういう面があると思いますが、文字通りいつも頭の片隅にあるというのも言い過ぎでしょうし、仕事はある程度そういう面があるものではないかとも思います。よくニュートンがリンゴが落ちるのを見て万有引力を発見したという逸話があるが、それはニュートンがずっと引力・重力のことを考えていてそれがたまたまリンゴが落ちるのを見て頭の中でひらめいたというか整理されたのだという解説がなされます。ニュートンも文字通り四六時中引力のことを思い詰めていたということではなく、疑問に思い時々・思い起こして検討していたのだと思います。弁護士の仕事でも、それぞれの事件の自分と相手の主張、証拠、類似のケースの裁判例などを頭に入れた上で、今ひとつモヤモヤしていたものが、あるとき何かの拍子でいい理屈、いいフレーズが思い浮かんだり、すっと頭の中で整理されることがあります。そういう形で多くの事件について、頭の中で発酵させているというか、おぼろげに潜在的に考えています。他人の指示に機械的に従う肉体労働でない限り、仕事というのはそういう性質をある程度持っているものだと思います。この本の著者は放送作家だということですから、本業では当然いつも頭の片隅で仕事のことを考えているのだと思います。そちらについてはいつも頭の片隅で考えているんだと偉そうに言ったり文句を言ったりはしないでしょう。そこは、家事が楽しくないから、評価してもらえないという怨みを持っているからそう言いたくなるということなのでしょう。
 家事のありよう、現実の対応は夫婦・家庭によりさまざまなところでしょう。著者は「はじめに」では、家事の項目ごとに担当者を決めない、どちらかできる人がやればいいと述べています(8~9ページ)。しかし、使った物は元の場所に戻せというところで、「テーブルやテレビ台の隅とかに、ずーっと置きっぱなしの細かいものがあると、『いつ片づけるねん』とイライラしてしまうのだ。え?住所が決まってるのなら私が帰らせて上げたらいいんじゃない?だと?なんでやねん!それやってもうたら、こっちの“負け”やろ!今後ずっと帰らせるのは、私の役目になるかも知れないのは嫌なんじゃー!」と主張しています(111ページ)。妻がこう考えている場合、夫が妻がやって欲しいと思っていることをやらない心理も同じなんじゃないかと思います。
 と言っても、夫婦関係は理屈を言えば悪化するもの。世の妻の(たぶん)多くは、こういうふうに思い憤懣を募らせているのだ(こういう本を読んで共感しているのだ)と認識する好材料ではありましょう。


野々村友紀子 双葉社 2019年9月22日発行
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