伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

女囚たち ブラジルの女性刑務所の真実

2023-10-16 23:26:07 | エッセイ
 ブラジルで30年以上にわたり刑務所に通って診察を続けた著者が、州立女性刑務所での7年間の勤務の過程で見聞きしたことを記した本。
 数ページごとのエピソードで、前半はテーマを立てて総論的な解説をしようとしているようですが、断片的な叙述になっています。後半ははっきりと出会った受刑者から聞いたエピソードの羅列となっています。そういう構成ですので、体系的な論述というよりは思いつくままに書かれたエッセイという読後感です。
 登場する受刑者たちの収監に至る事情を読んでいると、薬物の悲劇を痛感します。その流れで著者は違法薬物との戦いを正当化しようとしているのかと思っていたのですが、何と、著者は終章で、禁酒法が社会を腐敗させ密売や犯罪を助長させたとして、同じようにドラッグの使用と密売を違法にする法律が「我々を最悪の状況に導いている」と主張していて(282ページ)驚きました。
 著者の経験で、男性の囚人には女性(母、妻等)が列をなして面会に訪れる(ブラジルでは面会時に同衾さえ許されるそうです:40ページ)(もっとも、それは面会に行かないと報復・暴力が待っているからということであるようですが:42~43ページ、286ページ等)のに、女性の囚人は見捨てられ夫や愛人はほとんど面会に来ない、それはその女性がその男のために収監された場合でも同じ(42ページ等)というのが、悲しいですね。


原題:PRISIONEIRAS
ドラウジオ・ヴァレーラ 訳:伊藤秋仁
水声社 2023年8月10日発行(原書は2017年)

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