伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

厚生労働省戦記

2010-05-26 22:55:38 | ノンフィクション
 2007年8月から2009年9月まで厚生労働大臣だった著者が、在任中に対処に追われた「後期高齢者医療制度」問題、妊婦たらい回し事件に象徴される医師不足問題、消えた年金記録問題、新型インフルエンザ、薬害肝炎訴訟、原爆症認定訴訟について、当時の状況と自らと周囲の対応を語った本。
 比較的最近の現実の問題の舞台裏という観点からも、容易に解決できる性質のものではなく多数の利害関係者が様々な意見を持つまた妨害者の多い問題をどう説得し進めていくのかという観点からも興味深い本です。
 前半で書いている後期高齢者医療制度問題では著者自身も役所の視線が強い感じがしますし医療問題では医師会サイドの肩を持ちすぎている感じがしますが、最後に書いている薬害肝炎訴訟や原爆症認定訴訟では政治家としてのあり方を考えさせてくれます。近年の自民党政権で、政策についてはさておきハンセン病差別訴訟、薬害肝炎訴訟、原爆症認定訴訟等で敗訴して従来の行政の誤りを指摘されても上訴しないで被害者救済に動くケースが出てきたことは、私は素直に評価しています(小泉路線が嫌いな私もハンセン病裁判で1審の熊本地裁での敗訴を官僚の意見を抑え込んで控訴せずの結論を出したときは感動しました)。
 ただ著者のスタンスが、最大の敵は民主党、次がマスコミという点で貫かれ、族議員と官僚は敵扱いだったり持ち上げてみたりというのはちょっと残念。書いている中身からすれば、著者の意見がむしろ官僚や族議員よりも民主党と一致している場面もあるように感じられるのに、何があっても民主党はほめないという姿勢は、いかにも政治的というか私怨を感じさせます。問題によっては野党と共闘して族議員や官僚を説得することもあり得たでしょうし、そういう姿勢を見せた方が懐の深さを感じさせたでしょうに。


舛添要一 中央公論新社 2010年4月25日発行

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