伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

医療者が語る答えなき世界 「いのちの守り人」の人類学

2017-08-02 20:40:10 | 人文・社会科学系
 入院患者に対する管理、高齢者に対する(ベッド)拘束、手術室にまつわるルールとその合理性、ワルファリンやDOACなどの抗凝固薬の薬効・副作用と医師によるコントロール(処方の微調整)の是非、根拠に基づく医療(Evidence - Based Medicine)と漢方、治すことと患者の意思・選択、認知症の意固地な人の在宅復帰、失語症とリハビリという8つのテーマを題材に、医療者が何を考え悩んでいるかをインタビュー等によって描いた本。
 医療者側の都合で患者を機械・材料のように扱うこと、患者の納得や選択よりも「治す」ことを優先する医療への疑問を、それに疑問・迷いを持つ医療者の言葉から浮かび上がらせようとしています。患者を人間として扱えという話を、患者・家族・遺族側からするのではなくて、心ある医療従事者側の自戒・心情で語る点にポイントがあるわけですが、他方で、そんなことを言っていたらとても(他の患者のケアも含めて)仕事が回らず、医療従事者が過労で倒れるだけという怨嗟の念を持つ者も多数いると思います。そのあたりの困難さを考える素材としてはいいかなと思います。
 ただ、血液をさらさらにする薬のDOACに「直接経口凝固薬」って振ったり(93ページ:血液をさらさらにするんだから「凝固薬」じゃなくて、「抗凝固薬」でしょ)、EBMについて Evidenced Based Medicine とか(110ページ)、ちゃんとわかって書いてるのか不安になります。医療の分野じゃないけど、181ページの賃貸マンションの例では「賃借人」と「賃貸人」逆だと思いますし・・・


磯野真穂 ちくま新書 2017年6月10日発行
 
コメント (2)
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