伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

他人を見下す若者たち

2007-03-06 08:23:15 | 人文・社会科学系
 他者の能力を低く見積もることによって、自分の過去の経験や現実に基づかないで自分を他人より偉いと感じる「仮想的有能感」を持つ者が増えてきているというテーマを論じた本。
 本来の経験や事実、信頼できる周囲の人間からの賞賛等に裏付けられた自信ではなく、見知らぬ他者(多数)を軽視することでお手軽に偽りのプライド・自己肯定感を生じさせているということです。こうした傾向は大人にも見られますが、若者に増えており今後どんどん増えていく、こうした社会は、誰もが競争に勝ち抜くためにまわりの相手を軽視したり軽蔑し人間同士の暖かみの伝わらない冷え切った社会になる(204頁)と著者は論じています。現在の人びとは、この厳しい世の中で自分だけが犠牲者でストレスを多分に受けていると思いこみ、自分が他者にストレスを与えていることには思い及ばず自分だけがストレスを被っていると考えている(205頁)とも。
 直観的には、思い当たることの多い本です。ただ論証としては、客観的データは少なく、データ解釈にも他の読み方ができそうな部分が少なくないように思えました。
 また同時に若者には他人を軽蔑もしないが自分にも自信がない「萎縮型」も意外に多い(209頁)とか。そうすると「他人を見下す」よりも本質的に「自信がない」ことの方が現代の若者の特徴になりそうですが。


速水敏彦 講談社現代新書 2006年2月20日発行
コメント
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