伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

股間

2006-12-09 23:04:08 | 小説
 劇団毛皮族を主宰する作者の、たぶん自伝的な、小説。
 最後にフィクションと断られてはいますが、主人公の名前が重信ジュリ(作者はジュンリーと呼ばれているそうです)、主人公の主宰する劇団が「毛布教」、スター女優の名前が港乃マリー(毛皮族の主演女優は町田マリーというそうです)という具合では、自伝的小説と読むしかないでしょうね。
 文体も、本職の作家でないせいでしょうか、小説というより手記っぽいし。
 それ以外の登場人物の名前のつけ方はかなり投げやり。どうでもいい男子・堂出本伊井也(18頁)とか、そういうネーミングを見ただけで作者の意欲とセンスを疑ってしまいます。

 お話は、主人公が劇団の女優ら身近な女性に次から次へと恋愛感情を持ち肉体関係(レズの)を持ち、その人間関係のこじれと劇団の盛衰・経済的逼迫が延々と語られています。
 それが今ひとつストーリーとしてまとまらないまま、エピソードとして積み重ねられ、なんとなく締まらないままに終わっています。
 そういう点からも、劇団と作者自体に興味のある読者がどこまでが事実だろうという好奇心で読むための読み物なのでしょう。純然たる小説として読むには相当辛いと、私は感じました。


江本純子 リトルモア 2006年8月10日発行
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世界は単純なものに違いない

2006-12-09 23:01:13 | エッセイ
 1963年生まれ、有吉佐和子の娘の著者がここ10年間にあちこちに書いたエッセイを集めたもの。
 過去に書いたものを編集して、第1章が子どもの頃の世間の風俗・事件の想い出、第2章が青春時代、第3章が自分と家族を中心としたもの、第4章が文化・芸術関係の評論という感じに仕分けしています。
 前半は著者と概ね同世代の私にはなつかしく思えるところが多くありました。さくらももこ(ちびまる子ちゃん)が出てきたときに似たノスタルジーというところでしょうか。
 最後の方の文明論というか環境問題的なものも含めて、そうだよねと思うところは結構ありますが、どうも寄せ集め編集のため、強い印象や強い共感は感じにくいですね。ごくゆるい読み物として読むのが適切でしょう。


有吉玉青 平凡社 2006年11月20日発行
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