『
ふと覚めた枕もとに
秋がきていた
遠くから来た と言う
去年からか ときく
もつと前だ と答える
おととしか ときく
いやもつと遠い という
では去年私のところにきた秋は何なのか
ときく
あの秋は別の秋だ
去年の秋はもうずつと先へ行つている
という
先の方というと未来か ときく
いや違う
未来とはこれからくるものを指すのだろう?
ときかれる
返事にこまる
では過去の方へ行つたのか と聞く
過去へは戻れない
そのことはお前と同じだ という
秋
がきていた
遠くからきた という
遠くへ行こう という 』
* 石垣りん(1920-2004) 女流詩人
からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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