Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§170「地下室の手記」ドストエフスキー, 1864.

2023-10-22 | Book Reviews
 「地下室」とは、誰しもの心のうちに潜むなにがしかの暗喩なのかもしれません。

「自分にさえ打ちあけるのを恐れるようなこともあり、しかも、そういうことは、どんなにきちんとした人の心にも、かなりの量、積もりたまっているものなのだ」(p.61)

 にもかかわらず、生成AIを万能であるかのように信じてしまい、効率性を享受していたつもりが、いつのまにか考えることを効率化してしまいそうな現代を予言しているような気がします。

「いつかはぼくらのいわゆる自由意志の法則も発見されるわけで、恣欲やら判断やらがほんとうに全部計算されつくしてしまうかもしれない」(p.43)

 そういう世界観を持つ〈わたし〉が、それがそうであるということを分かるには、それがそうではないということを分かる必要があるのかもしれません。

 〈わたし〉が〈わたし〉であるということはどういうことなのか?その問いを手記という形で深く物語ろうとしたような気がします。

「ぼくの人生においてぎりぎりのところまでつきつめてみただけの話なのだ」(p.205)

初稿 2023/10/22
写真「---?」朝倉響子, ---.
撮影 2023/03/12


最新の画像もっと見る

コメントを投稿