Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

#57「誕 生 日」

2020-10-20 | Liner Notes
 「パパ、なんで居るの?あっ、誕生日か。忘れてなんかないよ。おめでとう!で、いつまで居るの?」

と気まずそうな顔をしつつ、どことなく安心したかのように話す高校二年の長男。

 少しずつ定着してきたテレワーク。そのおかげで家族と一緒に過ごす時間が増えると、一人で過ごす単身赴任先では見えなかったことを気付かせてくれることがあります。

 YouTubeを見ながらペットボトルを振り回す小学四年の次女。何をやってるかと思いきや、ミルクを注いだワイングラスにペットボトルから取り出したホイップを乗せて、

「はいどうぞ!」

「ここ最近、パパの誕生日プレゼント、何にしようか?って考えてたみたい。でも、自分はコーヒー苦手なのにね」

と笑いながら囁く妻。

 午前零時を廻る直前、慣れない一人暮らしを始めた大学一年の長女から届いたLINEメッセージ。

「まだまだ伝えたいことは沢山ありますが、それは二十歳になった時に手紙で書きますね」

 子供達一人一人の成長の一歩を感じた誕生日。その歩みは遅いのもあれば、踏み出すのに躊躇するのもあるけど、そんな歩みを焦ることなく認めてあげることが大切なんだと気付かせてくれました。

初稿 2020/10/20
校正 2022/01/20
写真 ダルゴナコーヒー(次女のプレゼント)
撮影 2020/10/20(兵庫・西宮)


#56「お 引 越」

2020-10-11 | Liner Notes
 「静かにしてね。最後のお別れをするんだから」

様々な業者さんが出入りするお引越当日、その模様をスマートフォンで泣きながら撮影する小学四年の末娘。

 「誰も写っちゃダメなの。誰の声も入っちゃダメなの」

何度も何度もの撮り直しの連続に、業者さんの一人も、よっぽどお引っ越しをしたくなかったんだねと呟いていました。

 親として子供たちの為に出来ることをしてきたのに、泣き叫ぶ娘を見ていると思わず胸が締め付けられましたが、その撮影を終え、鍵を返却する時、娘はいつの間にかいつもの表情に戻ってこう言いました。

「さぁ、新しいお家へ行こうよ」

 ひょっとしたら、娘が撮影したたくさんの動画や写真は記録として再び見ることはないかもしれませんが、彼女にとっては約七年ほど過ごした少女時代の記憶からの旅立ちへの準備だったのかもしれません。

初稿 2020/10/11
校正 2022/01/19
写真 甲山を仰ぐ関西学院
撮影 2015/01/06(兵庫・西宮)

#55「Believe in yourself」 阿部真央, 2014.

2020-10-02 | Liner Notes
 「今のままだと志望校に合格しないな」と先生に言われ、「やっぱ、そうですよね」と思わずつぶやいてしまったと漏らす高校二年生の長男。

 ひょっとしたら、先生は否定しているのではなく、関心を持っているからこそ言葉として伝えているのであって、考え方や教え方は違うにせよ、応援する気持ちは変わらないのかもしれません。

 だから、大切なことは応援してくれる人の声にちゃんと耳を傾けて、誰かと自分を比べることなく、やれるだけのことをやりきったと日々実感できる等身大の自分になること。そうなれば、「やっぱ、そうですよね」なんてつぶやくことはないはずです。

 そんな等身大の自分が、在るべき自分の姿との違いをちゃんと認めることができるとき、自己という真の自分の姿に近づけるような気がします。

「やれるだけやりきったかなんて
 自分しかわからない
 だから自分に嘘つくな
 自分にズルするな

 誰かと自分を比べるよりも
 己を誇れる人になりたい
 自分を投げ出さず生きた今日を
 ほめ続けられる日々を送ろう

 君にしか分からなくたって
 楽な道は選ぶな
 最後に報われるのは
 逃げずに居た君自身だから

 思い通りにならない日も
 無駄にだけはしないで
 大事なのは君が君を
 最後に認めてやれるかだ」
(Lylics by Mao Abe)

初稿 2020/10/02
校正 2022/01/18
写真 ありのままの自分
撮影 2012/10/06(東京・浜離宮恩賜庭園)