Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§85「憂國」 三島由紀夫, 1961.

2018-04-08 | Book Reviews
 今から約七十五年前に起きた、二・二六事件の外伝。

 勅命に従い武装蜂起した仲間を鎮圧するのか?勅命に叛き武装蜂起した仲間に合流するのか?近衛連隊に所属する中尉が選択した行動を通じて、「自らは誰であるか?」という根源的な問いに答えようとしているような気がします。

 因果性に基づき論理的に解釈できる心理的状態が〈意識〉。つまり、國に報いるとは帝都の治安と帝を護ること。

 自らの在るべき姿を意識できる心理的状態が〈自我〉。つまり、帝を護る誉れ高き精鋭として自らを律し鍛えねばならないこと。

 〈自我〉を役割として強く規定した心理的状態が〈超自我〉。帝の勅命に従い敵を討つことが自らの果たすべき役割。

 でも、そんなか〈超自我〉が直面する自らの役割が果たせない時の心理的状態が〈不条理〉なのかもしれません。

 自らが近衛兵として、國に報いることができなかったものの、國を憂い自決する行為そのものが美意識に彩られる時、〈不条理〉は解消されるのかもしれません。

初稿 2018/04/08
校正 2020/10/14
写真 旧海軍兵学校
(現 海上自衛隊幹部候補生学校)
撮影 2009/02/14(広島・江田島)
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♪32「Season's Greeting 〜2018春」

2018-04-01 | Season's Greeting
 「花の色は うつりにけりな いたづらに
    我が身よにふる ながめせしまに」
  (小野小町~小倉百人一首 第九番歌)
 
 春の訪れと共に瞬く間に咲き誇り、散り乱れる桜。

 その美しさは、幾重にも彩り始める芽吹きを
感じさせるからかもしれません。

初稿 2018/04/01
校正 2021/11/10
写真 幾重にも彩り始める芽吹
撮影 2017/04/04(京都・高瀬川)
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