Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

∫44「東京 建築 十選」〈邸宅編〉

2022-04-17 | Architecture
 明治後期から昭和初期の時代は、日本が西欧化から近代化へと変貌した黎明期。

 宣教師の住居であったり、政府が雇用した「お抱え外国人」と呼ばれた技術者が設計した邸宅(下記①, ②, ④, ⑤参照)などを通じて、当時の生活様式や文化などをその建築様式に溶け込ませながら、今もなおその面影を今に伝えてくれています。

 ところで、「お抱え外国人」の役割は官公庁建築を担う各省庁の営繕課に引き継がれ(下記③, ⑥〜⑩参照)、当時の設計思想や価値観もまた、現代の設計コンサルタントや建設会社にも脈々と受け継がれているような気がします。

 ひょっとして、建築様式とは機能性や合理性のみならず、時代や社会の影響を受けた思想や価値観なるものも表現しているのかもしれません。

初稿 2022/04/17
写真「東京 建築 十選」〈邸宅編〉
 ※○建築名(場所)設計, 竣工年度.
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①旧岩崎邸(東京・上野)
 ジョサイア・コンドル, 1896.
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②旧宣教師館(東京・雑司が谷)
 マッケーレブ, 1907.
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③旧竹田宮邸洋館(東京・高輪)
 旧宮内省内匠寮(片山東熊), 1911.
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④綱町三井倶楽部(東京・三田)
 ジョサイア・コンドル, 1913
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⑤旧古河邸(東京・駒込)
 ジョサイア・コンドル, 1917.
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⑥鳩山会館(東京・音羽)
 岡田信一郎, 1924.
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⑦日立目白クラブ(東京・落合)
 旧宮内省内匠寮(森泰治), 1928.
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⑧旧前田侯爵亭(東京・駒場)
 旧宮内省内匠寮(高橋貞太郎), 1929.
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⑨旧李王家東京邸(東京・紀尾井町)
 旧宮内省内匠寮(北村耕造), 1930.
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⑩旧朝香宮邸(東京・白金台)
 旧宮内省内匠寮(権藤要吉), 1933.
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∫43「東京 建築 十選」〈庁舎・民間ビル編 II〉

2021-10-10 | Architecture
 近代国家として成立した日本が帝国主義に傾倒していった1930年代、その時勢は建築様式にも影響を及ぼしたのかもしれません。(帝冠様式 下記①〜②参照)

 戦後の荒廃から高度経済成長期にかけて、建築様式は装飾性よりも機能性や合理性を重視した結果、建築構造も横長から縦長へ拡張するとともに都市構造の変革をもたらしました。(モダニズム建築 下記③〜⑦参照)

 しかしながら、合理的な画一性を重視することで単一性をもたらしたモダニズム建築に対して、多様性や新たな価値観を見出そうとした建築様式が登場します。(ポスト・モダン建築 下記⑧〜⑨参照)

 「近代化」は歴史や思想など様々な文脈で用いられますが、建築様式にも色濃く反映しているような気がします。そして現代建築と呼ばれるものもまた、コロナ禍後の社会に応じて絶えず変化していくような気がします。

初稿 2021/10/10
写真「東京 建築 十選」〈庁舎・民間ビル編 II〉
 ※○建築名(場所), 竣工年度.
''記載がある場合、高さと延床面積を引用"
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①遊就館(東京・九段), 1932.
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②旧軍人会館(東京・九段), 1934.
※保存・再開発予定, 2022.
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③西武百貨店(東京・池袋), 1952.
※横に長いビルとして日本一(当時ギネス記録)
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④NTT日比谷ビル(東京・内幸町), 1961.
"42m, 79,754㎡"
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⑤霞ヶ関ビルディング(東京・霞ヶ関)【1968】
"147m, 153,960㎡"
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⑥サンシャイン60(東京・池袋), 1978.
"240m, 190,595 m²"
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⑦新宿副都心 高層ビル群
(中)損保ジャパン本社ビル(東京・西新宿), 1976. "200m, 124,438㎡"
(左)新宿野村ビルディング(東京・西新宿), 1978. "210m, 119,442㎡"
(右)新宿センタービル(東京・西新宿), 1979. "223m, 183,064㎡"
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⑧東京都庁第一本庁舎(東京・西新宿), 1990 "244m, 195,567 m²"
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⑨モード学園コクーンタワー(東京・西新宿), 2008. "204m, 80,865㎡"
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⑩大手町プレイス(東京・大手町), 2018. "178m, 354,000㎡"
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∫42「東京 建築 十選」〈大学編〉

2021-10-03 | Architecture
 ようやく、緊急事態宣言が解除されましたが、人混みの多い処へ行くのは控えつつも、都内の大学建築のなかから概ね時代に沿って印象に残った写真をピックアップしてみました。

 はじめに、「近代化」の黎明期においては、医学や物理学といった西欧の科学技術は日本の伝統的な建築様式と折衷した木造の学舎にて営まれたことを偲ばせてくれます(下記①〜②参照)

 そして、西欧の近代的な教育システムは、キリスト教系の大学だけでなく、近代国家としての独立自尊や学問の独立を志す大学にも導入されていきました(下記③〜⑥参照)

 また、近代国家として成立した日本が帝国主義に傾倒していった時代を迎えようとするなかであっても、異文化理解と共栄を志す大学も設立されていきました(下記⑦〜⑧参照)

 一方、関東大震災を契機として国民の公衆衛生を護る専門家を育成する育成・研究機関も設立されました(下記⑨参照)

 なお、自分達が置かれた社会環境の変化に対応するための基礎的な力を培うことを旧制高校が担い、それがリベラルアーツと言われる原型のような気もします(下記⑩参照)

 建築様式は構造力学や材料技術の進歩によって進化すると漠然と思っていましたが、ひょっとしたら、時代に応じて求められる事を成すための理念を眼に見えるように具現化しているのかもしれません。

初稿 2021/10/03
写真「東京 建築 十選」〈大学編〉
以下、注釈
○建築名(場所), 竣工年度. ''理念等を引用"
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①旧東京医学校本館(東京・小石川), 1868.
(現)東京大学 総合博物館 小石川分館
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②旧東京物理学校(東京・神楽坂), 1906.
(現)東京理科大学 近代科学資料館(復元)
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③慶應義塾図書館 旧館(東京・三田), 1912.
"独立自尊"
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④立教大学 本館(東京・池袋), 1919.
"普遍的なる真理を探究し、私たちの世界、社会、隣人のために"
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⑤東京大学 安田講堂(東京・本郷), 1925.
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⑥早稲田大学 大隈講堂(東京・早稲田), 1927.
"学問の独立"
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⑦拓殖大学 A館(東京・茗荷谷), 1932.
"人種の色と地の境 我が立つ前に 差別なし"
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⑧上智大学 1号館(東京・四谷), 1932.
"他者のために 他者とともに"
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⑨旧国立公衆衛生院(東京・白金台), 1938.
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⑩旧制第一高等学校 講堂 (東京・駒場), 1938.
(現)東京大学 教養学部 900番教室(講堂)
----------〉以上


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∫41「東京 建築 十選」〈庁舎・民間ビル編〉

2021-09-11 | Architecture
 東京での単身赴任生活も早四年になりますが、ここ一年半ほどリモートワークが多いのもあり、これまでに撮った写真を整理してみました。

 まず、明治から大正後期までに竣工した都内の建築のなかから概ね時代に沿って、自分のなかで印象に残ったものをピックアップしてみました。

 特に、明治(〜1912年)の建築は赤レンガ造の構造と西欧の歴史的建築様式を織り込んだデザインが印象的です。(写真①〜④参照)

 一方、大正12年(1923年)の関東大震災を契機に鉄筋コンクリート構造と重厚で機能的なデザインに変貌しているような気がします。(写真⑤〜⑩参照)

 当然、建築構造の変化は科学技術の進化に起因するかもしれませんが、建築様式の変化もまた「西欧化」から「近代化」の歴史を現在に伝えてくれるのかもしれません。

初稿 2021/09/11
写真「東京 建築 十選」〈庁舎・民間ビル編〉
 ※①〜⑩ 建築名(場所), 竣工年度.
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①旧三菱一号館(東京・丸ノ内), 1894.
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②法務省旧本館 (東京・霞ヶ関), 1895.
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③旧近衛師団司令部(東京・北の丸),1910.
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④東京駅(東京・丸の内), 1914.
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⑤国立科学博物館(東京・上野), 1926.
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⑥聖徳記念絵画館(東京・神宮外苑), 1926.
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⑦和光本館(東京・銀座), 1932.
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⑧明治屋本社(東京・日本橋), 1933.
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⑨日本橋高島屋(東京・日本橋), 1933.
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⑩宮内庁庁舎(東京・皇居内), 1935.
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∫40「長等山(園城寺)」 滋賀, 686.

2018-02-18 | Architecture
 白河上皇曰く、「賀茂河の水、双六の賽、山法師、是ぞわが心にかなわぬもの」

 山法師に喩えられた比叡山 延暦寺の勢力を牽制する役割を担ったのが天台寺門宗総本山である長等山 園城寺。かつては同じ天台宗で在りながらも、山門派と寺門派としてそれぞれに権勢を誇ったのは、浄土真宗における西本願寺と東本願寺のような力の均衡による平和を担っていたのかも知れません。

 ところで、またの名を三井寺と称するのは、天智帝、天武帝、持統帝の産湯を汲んだ井戸に因んだという言われもあるそうです。

 壬申の乱で敗れた天智帝の子、大友皇子の菩提を弔うことを赦したのは、同じ天智帝の子、大海女皇子(後の天武帝)、同じ産湯に浸かった兄弟の鎮魂と平和を希求したのかもしれません。

初稿 2018/02/18
校正 2020/10/20
写真 三井寺(天台寺門宗 総本山 園城寺)
撮影 2017/02/04(滋賀・大津)
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