Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

#90「声を出すということ」

2024-03-24 | Liner Notes
 中学一年生の次女が所属するバスケ部が市の新人戦で優勝してから注目されているせいか、他の中学校との練習試合が多くなり、たまに配車のお手伝いをするかたわらで観ることが増えました。※

 「いったい、ベンチに何人座ってるの。。もっと声を出しなさい!」

監督からの檄が飛ぶと、「負けるな〜。はいるよ〜」とか、ベンチはプレーの結果に対する声は出すようになったものの、プレーそのものに対する声までは出ないような感じでした。

 そんななか、なぜか次女の出番がまわってきてしまい、笑顔は負けてない?ように見えるけど、ボールをちゃんと見ているのか、いないのか、観ている親としてはなんとなくハラハラしてしまいます。

 「わたしは、ここにいるよ!」

ひょつとしたら、こんな声を出せるようになれば、自信がついてきている証なのかもしれず、いますぐでなくとも、いつかはきっとそんな声を出せるような先輩になって欲しいなと思います。

初稿 2024/03/24
写真「鶏舎の朝」古賀忠雄, 1951.
撮影 2024/03/09(佐賀・県立博物館)
※)#80「もうひとつの新人戦」
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#89「世界を知るへや」

2024-03-15 | Liner Notes
 少し前の話ですが、長男が東京から京都へ帰る日に少しだけ時間があったので、上野のとある図書館に二人で赴きました。

 国立国会図書館は全国に三館あり、児童書を専門に扱う国際こども図書館はその一つ。長男は本に関わる仕事に少し興味があるらしく、この図書館も大学の講義を通じて多少は知っているとのことでした。

 ところで、1906年に竣工した洋風建築に眼を惹かれる私に長男が見せたいところがあると言って、連れて行ってくれた部屋の入口にこう書いてありました。

「室内では、本の読み聞かせをすることができます」

 図書館では静かに黙って読書するところだとごくあたりまえに思っていましたが、知っているつもりの国々やそうでない国々の絵本に囲まれるなかで、表紙の絵柄や題名に興味を覚えた一冊であったり、そうではなく偶然、手にとった一冊を親が幼い子に読み聞かせるその場所はまさに、〈世界〉を知るへやそのものであり、学ぶということ本来の姿を垣間見せてくれたような気がします。

初稿 2024/03/15
写真「世界を知るへや」
撮影 2024/02/18(東京・国際こども図書館)
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#88「来るべき言葉のために」

2024-03-12 | Liner Notes
 少し前の話ですが、長男が珍しく東京を訪れました。大学三年生の長い春休みに何か思うところがあったのかもしれません。

 まったく縁もゆかりもないものの、偶然にも同じ名字を持つ写真家の没後初めての回顧展※を知り、これも何かのめぐり合わせと感じて二人で赴きました。

 入場するとまもなく、「来るべき言葉のために」と題された目を惹く言葉が飛び込んできました。

「言葉がそのリアリティを失い、宙に舞う他ならぬ今、ぼくたち写真家にできることは、既にある言葉ではとうてい捉えることのできない現実の断片を、自らの眼で捕獲してゆく」

 長男の後姿を垣間見ながら感じたのは、写真家であろうとなかろうと、日常に拡がる眼前の〈世界〉を何の疑いもなくあたりまえと思いこむのではなく、それがなぜそうなのかと問いかけることが、学ぶということのような気がします。

初稿 2024/03/12
写真「学ぶということ」
撮影 2024/02/17(東京・国立近代美術館)
※)「中平卓馬 火-氾濫」2024/02/06〜04/06
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