Liner Notes

素人感覚で自由にあれこれ思うことを綴ってみました!

§98「スキャンダル」遠藤周作【1986】

2019-12-29 | Book Reviews

罪と罰、善と悪とはなにか?それらを通して、「自己」を見い出そうとする、これまでとは一線を画した実験的な作品だと思います。(ユング心理学の普及に尽力した河合隼雄が解説文を寄稿しています)

罪は秩序を乱すこと。罰はその報い。罪には限りがあり、罰を受け罪を贖えば、いつかは救いにつながるのかもしれません。

善とは秩序を保つこと。悪は、偽り・策略・謀略・略奪・支配・偏見・差別といった無意識に潜む「影」から想起される思想や行為を含むので、悪には限りがなく、救いもないような気がします。

キリスト教作家として、追い求めてきたあるべき姿は、「自我」に他ならず、他ならぬ「自我」が切り捨ててきた「影」と対峙し、受け入れざるおえない時、救いを求めるのではなく、ありのままの自分「自己」を見いだせるのかもしれません。

「砂の城(→§97)」のなかで、成長してゆく娘が「自己」とはなにか?を考えはじめるきっかけとなったメッセージは、「美しいものと善いものに絶望しないでください」という言葉。

年老いてゆく人が「自己」とはなにか?を考えざるおえないきっかけとして、「美しくないものと善くないものに絶望しないでください」というメッセージを投げかけているような気がします。

初稿 2019.12.29
於 目白聖公会・東京
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§97「砂の城」遠藤周作【1976】

2019-12-25 | Book Reviews

「負けちゃだめだよ、美しいものは必ず消えないんだから」
 娘に託した母の手紙には、戦地に赴く初恋のひとからの言葉が綴られていました。

 娘の親友は駆け落ちした恋人のために罪を犯してしまいます。彼女にとっては、娘はかなわぬ存在。言わば「コンプレックス」。
 刑務所で彼女が娘に語る「自分の生き方に後悔していない。憐れまないでほしい」という言葉は、娘には真似できないこと。

 キャビンアテンダントになった娘が遭遇したハイジャックの主犯は娘の初恋のひと。
 彼がつぶやく「やがて、わかるよ、ぼくらが何故、ハイジャックしたか」という言葉は、娘が理解することができないこと。

 難病に苦しむ人々の救済に人生をかけるパリで出逢った初老の紳士は、偶然にも娘が探していた母の初恋のひと。
 彼がつぶやく「美しいものと善いものに絶望しないでください」という言葉は、娘が「自己」とはなにか?を考えはじめるきっかけ。

 誰もが信じようとする美しいものは、浜辺に築く「砂の城」のように波に消されてしまうと考えられがち。
 時間と場所の隔たりを超えて偶然に巡り会う設定は、ユング心理学における「シンクロニシティ」の世界観を示唆しつつ、ありのままの自分とはなにか?つまり「自己」を絶えず追い求める物語のような気がします。

初稿 2019.12.7
於 山陰海岸
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♪41「Season's Greeting 〜2019冬」

2019-12-24 | Season's Greeting

赤を纏う白を基調としたクリスマスキャンドル。首都高速6号線のランプとともに、隅田川の水面に映えて、碧い天空を支えているような気がします。

初稿 2019.12.24
於 東京スカイツリー
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