・ 義理人情の世界をたっぷり描いた、マキノ節全開!
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高倉健のヒット・シリーズ「日本侠客伝」11作の記念碑的な第1作。監督はシリーズ9作を手掛けた巨匠・マキノ雅弘。
深川木場の材木を一手に取り仕切っていた運送業者・木場政組。新興の沖山運送が政治家や軍と手を組み、何かと争いのタネとなっていた。
争いを好まぬ組長の死をキッカケに、沖山兄弟(安部徹・天津敏)は木場政組の取り潰しを画策し、利権争いが益々激化していく。
小頭・辰巳の長吉(高倉健)を始めとする昔気質の任狭に生きる男たちと、それを支える女たちの一途さが切なく描かれていてマキノ・ワールド満載。
「人生劇場 飛車角」で、ハマリ役・宮川を好演し主役に抜擢された高倉健。本来主演する筈だった中村錦之助がスケジュールを理由に断ったため、シナリオが大幅に書き換えられて除隊した組員・長吉として開始20分後の登場となった。
錦之助は、木場政の客員ヤクザ・清治役で特別出演扱いとなり、先代に借りた恩を返すため理不尽な沖山へ単身乗り込んで惨死する。このパターンはシリーズに受け継がれ、鶴田浩二、若山富三郎、池部良など大物俳優が担うことになる。
マキノは切った張ったの大立ち回りより、<男と女の微妙な色恋沙汰を描くのが得意>で、本作も3組のカップルを登場させている。
長吉といろは亭の娘おふみ(藤純子)の純愛、長吉を想う辰巳芸者・粂次(南田洋子)への赤電車の鉄(長門裕之)の一途な恋、清治と命懸けの駆け落ちをして一人娘(藤山直美)と暮らすお咲(三田佳子)。
いずれも切ない別れが待っていてこの伏線があってこその刃傷沙汰が映えてくる。
兎に角豪華キャストで、木場政組には田村高廣、大木実、松方弘樹が登場するが「次郎長三国志」の監督だけあって夫々見せ場があるのは流石。
幼少の頃から東映時代劇で育った筆者にとって、本作を契機に<昭和任侠もの><実録ヤクザ映画>へ舵を切って行く東映映画との決別を予感させる作品でもあった。