漢字を学び心を育む

2回目のチャレンジで漢検1級に合格。
現在、ペン習字に傾倒。
硬筆書写検定1級が欲しいです

昭和という時代(2)

2011-08-29 23:58:23 | ◇1級:文章
 
 食べ終えて、祖母に手を拭いてもらってから、洗面所横の小部屋をのぞく。顔中をシャボンの泡だらけにした父が、母の鏡台の脇につるした かわと で剃刀を研いでいる。

『海苔巻きの端っこ』父の詫び状/向田邦子








 かわと=革砥



昔、床屋のおじさんがよく研いでいましたね。




 妻が向田さんのファンだったことから、わたしも感化され屢読むようになった。
不慮の事故で急逝してから、この夏でもう30年が経ちます。
わたしの父と同じ昭和4年生まれですから存命なら82歳になるのでしょうか。

 「昭和の達人 向田邦子」

東京山の手中流階級のお嬢様。(父は保険会社支店長)
戦後のキャリアウーマンの先駆者、そしてかなりの才媛である。
「家」を大事にし「古い言葉」を「昭和の言葉」を頑なまでに大切にした。


山本夏彦は著書の中で、”向田邦子は突然あらわれてほとんど名人である”と大のお気に入り。
「七色(なないろ)とんがらし」と書いて、「七味(しちみ)とうがらし」を決して許さず、
「風呂あがり」ではなく「湯あがり」に拘り続けたと邦子を絶賛している。



向田邦子を読むと懐かしい昭和の言葉が随所に鏤められている。



 かや(蚊帳)
 ちゃぶだい(卓袱台)
 おひつ(お櫃)
 おむすび
 おこうこ(たくあん)
 瀬戸物
 寝押し
 お出掛け
 よそゆきの洋服(余所行き)
 おみおつけ(御御御付)
 なかんずく(就中)
 字引き
 これは寝過ぎた、しくじった。(兎と亀)
 ベソをかく
 差義長(さぎちょう)
 注連縄(しめなわ)
 うわばみ(蟒蛇)
 剣呑(けんのん)
 ご不浄
 蝦蟇口(がまぐち)
 たち(質)
 割烹着(かっぽうぎ)
 はめ殺し窓





  カレーとライスが別の容器で出てくるのがカレーライス。ごはんの上にかけてあるのがライスカレーだという説があるが、私は違う。
金を払って、おもてで食べるのがカレーライス。
 自分の家で食べるのが、ライスカレーである。厳密にいえば、子供の日に食べた、母の作ったうどん粉のいっぱい入ったのが、ライスカレーなのだ。


『昔カレー』父の詫び状/向田邦子






なんだか、涙がでてきます。

全くもって同感です。
昔はルーではなく、小麦粉と片栗粉とカレー粉を混ぜて作っていました。





向田邦子は、 ”昭和” を生きてきたオンナです。
決して ”西暦” のオンナではありません。





昭和という時代
http://blog.goo.ne.jp/sh_tech/e/36068c45a77ef95ef78cb85a873dbdb0

サラドはお嫌いですか。

2011-08-27 18:45:54 | ◇1級:文章

  二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。
「ぜんたい、ここらの山は怪しからんね。鳥も獣も一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
「鹿の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞もうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒れるだろうねえ。」
 それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。


注文の多い料理店/宮沢賢治








ショ、ソ、ヒツ、
ひき、あし



【解字】象形。もと足と同形で、あしの形にかたどり、あしの意味。雅の省略体の牙を疋に誤り、雅の意味に用いる。疋を音符に含む形声文字に、胥・楚・疎・疏・礎・糈・蔬・醑などがある。

  1. あし。
  2. ただしい。⇒雅。
  3. ヒキ。匹
  4. 古くは銭十文を一疋とし、後には二十五文を一疋とした。
  5. 一疋は、布二反をいう。






 ご存知、「雨ニモマケズ」でお馴染みの宮沢賢治先生。
東日本大震災被災者を元気付けるためにも、花巻市出身の宮沢賢治が注目されてるという。
「上を向いて歩こう」の坂本九さん、「こだまでしょうか」の金子みすゞさんもそうですね。


これを ”童話” というのには少し怖いし無理があるような気もします。
内容も、比喩というか諷刺が盛り込まれており小学生では難しいのかもしれませんね。
わたしも宮沢賢治を読んだのは恥ずかしながら30歳過ぎてからです。
娘の情操教育(笑)のため、蒲団に入って毎晩読み聞かせをしたのが最初です。
子供は毎晩楽しみにしていましたね。わたしが読んでるうちにいつの間にか眠りに落ちているんですが。
でも、とっても幸せな眠りだったと思います。
娘のお気に入りはこの本と『セロ弾きのゴーシュ』でした。




さて、



<Wikipedia>



  1. 古代日本において布帛2反(端)分を指して呼んだ。古代中国において使われた長さの単位両(=40尺)が転じたものという。
  2. 鎌倉時代から江戸時代にかけて用いられた銭貨の数え方(通貨単位ではない)で、100疋をもって1貫とした(この方式によると1疋=10銭(文)となるが、疋と銭(文)を併用する慣例はなかったとされている)。また、初期の頃には1疋に換算する銭貨の数は定まっておらず、『徒然草』には1疋=30文とされている。1疋=10銭(文)とされたのは犬追物に使う犬1疋(匹)の値段が10銭(文)だったからという伝説がある(『奇異雑談集』・『貞丈雑記』など)
  3. 匹とは助数詞のひとつで、動物(悪い意味では人間も)を数える単位。現在では一般的に「匹」を用いるのがほとんどであるが、古くは「疋」も用いられていた。




なるほど、疋が匹に変化した理由がわかりました。

字義についても、

 反物の単位 ⇒ 銭貨の数え方 ⇒ 動物を数える単位

へと遷移されたのでしょうか。


そういえば、準1級で学習した「匹夫の勇」や「匹夫匹婦」を憶えていますか。
あまり良い意味には使われていなかったような気がします。




1級的には、

「疋帛ヒツバク」 絹の反物。
「疋絹ヒケン」一疋ずつ巻いた絹


や、


「疋(ただ)しい」        ←これはないかも。。


というのも要チェックかもしれません。



「練り」と言っても羊羹ではありません。

2011-08-24 20:20:22 | ◇1級:読み(訓読み)
 
 白い霧の に包まれた。










とばり、かたびら



【解字】形声。巾+隹。音符の隹スイは、圍(囲)に通じ、めぐらすの意味。めぐらせた布と、とばりの意味を表す。

  1. とばり。たれぬの。たれぎぬ。カーテン。
  2. ひきまく。まんまく。
  3. 車の覆い。また、柩の覆い。
  4. おおう。かくす。



 



 ”とばり” というと「帳」の方が知れ渡っているようです。


では、「帷トバリ」と「帳トバリ」の違いはなんでしょう。


字義からいえば、


「帷トバリ」 ⇒ 囲い巡らす。周囲に巡らす垂れ幕。(帷幄)

「帳トバリ」 ⇒ 長く張る。長い垂れ幕。(緞帳)


なので ”夜のとばり” は、「帳」だと思います。

ちなみに「帷幄」は作戦計画を立てるところ。本陣。本営。
「帷=垂れ幕」「幄=引き幕」





ところで、わたしが興味を持ったのは、こちらのほう。



かた‐びら 【帷子】

《袷(あわせ)の片枚(かたひら)の意》
1 裏をつけない衣服の総称。ひとえもの。
2 生絹や麻布で仕立てた、夏に着るひとえの着物。
3 経帷子(きょうかたびら)。
4 几帳や帳などに用いて垂らす絹。夏は生絹(すずし)、冬は練り絹を用いた。




帷子が片枚(かたひら)なんて、素敵だと思いませんか。
こんな当て字・訓読みなら大好きです。


帷子に用いる生絹(すずし)も1級配当でしょうか。
初めて耳にする言葉です。

夏に着る、薄くて軽い衣服なので、<涼しい> が語源なような気がします。


スズシもネリも男の人はあまり馴染みがないでしょう。



 生絹:生糸(灰汁で煮ない=練らない)で織った布。

 練絹:灰汁で煮てニカワ質をとり、軟らかくした布。




なんだか、以前書いた記事を彷彿させてくれます。

 羅、紗、絽、絅ベール、繻サテン・・・


織り方の違いなんてわかりません。
http://blog.goo.ne.jp/sh_tech/e/e42ed7657af0bf6c426e18355ada1071




中庸は徳の至れり

2011-08-16 21:40:32 | ◇1級:読み(訓読み)

 
 錦を衣て絅を う。









ケイ
うすぎぬ



【解字】形声。糸+冋。

  1. ひとえのもの。うすぎぬ。着物の上にかける布。ベールの類。



 




錦(にしき)を衣(き)て絅(けい)を尚(くわ)う。

と読みます。


出典はあの「中庸は徳の至れり」で有名な論語からの一節。





いきんしょうけい



【意 味】才能や徳を外にあらわに出さないこと。

【補 説】「錦を着るときは、上から薄衣を掛けて華やかさを表に出さない方が良い。
     己の美徳を表に出さないのが君子の嗜みであるということ。
     「絅」は薄いうちかけ。「尚」は加える、添え着すること。

【出 典】「中庸-三十三章」「詩曰、衣錦尚絅。悪其文之著也」






1級では、漢文の出典を文語文で読むことが求められます。
如何せんこれがなんとも厄介というか難しい。

衣錦尚絅(いきんしょうけい)なら、何とか読める。
でも、意味を識るには「出典」を理解しないと心に刻めない。



  衣錦尚絅 ⇒ 才能や徳を外にあらわに出さないこと。


では、キセルのようなもので、大事なものが中抜けしている。



  衣錦尚絅 ⇒ 錦を衣て絅を尚う ⇒ 才能や徳を外にあらわに出さないこと。


という具合に憶えないと頭に入らない。



でも、「絅を尚う」って耳慣れない言葉ですね。
「薄いうちかけを添え着する」、ここでは「ベールで覆い隠す」という意味であってると思います。



『己の美徳を表に出さないのが君子の嗜みであるということ』



中国の故事には論語然り菜根譚然り、自らを律し諫め戒める自己抑制が必要であることを説いているものが多いようです。
「自分を褒めない、相手を馬鹿にしない」
のは、きっと万国共通の宗教的な考えだと思います。

でも、理解しているのに実行できないのが悲しいかな凡人の凡人たる所以なのでしょうか。








簡単な字なんですがね。

2011-08-14 19:20:48 | ◇1級:書き(書き取り)
 
  園芸の熟練者である。









くさ、さか(ん)



【解字】会意。艸+屮。草がたくさん集まったさまから、多くの草の意味を表す。


  1. くさ。草の総称。
  2. くさき。草木の総称。
  3. 盛ん。
  4. はやい。
  5. さかん。
  6. 風の音の形容。


「卉」は本来 芔 と書き、双葉が開いた後、本葉が出始めている草を3つ並べた字で、「もろもろの草」を意味し、草の総称。






普段私たちが目にするのは「花き」。

”普段”といっても、お正月の卸売り市場における「初セリ」の光景をテレビで映し出されるのをぼんやり眺めているくらいであるが。

”混ぜ書き”には、慣れっ子になっているが、ある程度凡その文字が朧気に浮かんでくるものである。
テレビ・新聞で漢字制限をかけだしたのは最近のことだし、小説では漢字で書かれていることが多いので、漢字が私たちの記憶の中に「図柄」として残っているのだと思う。


・駐とん地 駐屯地
・ほう助  幇助
・口てい疫 口蹄疫
・憂うつ  憂鬱
・ら致   拉致
・だ捕   拿捕
・改ざん  改竄
・ねつ捏  捏造
・補てん  補填



断然漢字の方が読みやすいですね。

漢字の成り立ちは、象形文字に代表されるように形の特徴を簡単に絵で表現したものですからイメージが湧き易いのだと思います。

でも、花きから花卉はなぜか想像できませんでした。
それほど花卉は露出度が少ないのでしょうか。




それでは、参考までに。。





園芸とは。 本来「園藝」と書き、生きた植物を絶対的素材とする芸術


園芸─┬─鑑賞園芸─┬─洋ラン
   │      │
   │      ├─盆栽
   │      ・
   │      ・
   │      
   └─生産園芸─┬─果樹園芸(果物)
          │
          ├─蔬菜園芸(野菜)
          │
          └─花卉園芸(草花、観葉植物、山野草など)






ブラウザにより表が崩れているかもしれません。
ご容赦ください。

なかった昔には戻れない

2011-08-06 19:49:20 | ◆準1級:書き(書き取り)

 
 原発事故の炉心融解を政府は外部に秘 トク した。








トク
かく(す)、かく(れる)、かくま(う)




【解字】形声。匚+若。音符の若は、素直でおとなしいの意味。個性を出さずに隠すの意味を表す。

  1. 隠れる。潜む。
  2. 隠す。かくまう。つつみかくす。






今日、ヒロシマに原爆投下されてから66年を迎えました。

世界で唯一原爆を投下された国ニッポン。しかも2回。
おそらくもう被爆者も当時を知っている方も少なくなってきていると思いますが、
まだまだ後遺症で苦しんでおられる方も多いことでしょう。



そして今回の大震災による福島原発の核炉心融解メルトダウン事故。

人類化学の研鑽・発達により原子力が発明されたが、残念ながら用途は、原子力発電所、戦争・外交カードくらいであろうか。リスクを無視し「利益コスト」を優先してきた結果でしょう。倫理を持たない民族にこのまま核を持たしていたら「地球」まで破壊してしまいそうです。




もし、あの人が生きていたなら、今回の震災、原発事故についてどう仰るのか興味がありました。




今を遡ることおよそ半世紀前の言葉ですが、まったく色褪せていないと思います。




やぶから棒 -夏彦の写真コラム-(S57.6.24)

「なかった昔には戻れない」


~前略

 かくしてひとたび原子力があらわれたら、あらわれない昔にはかえれない。核もまたそうである。私は原子力の発明を呪っているが、マイカーやテレビのごときよしんば渋々でも認めたら、その科学技術の絶頂である核だけ廃絶しようなんて出来ない相談だとあきらめている。いくら憎んでも原子力の存在は認めなければならないと、私は署名せよと言われてもしないのである。ほかでもないそれをつくったのは自分自身だと無限の悔いと怒りをこめて!









なにも政府、東電が悪いとは言っておりません。

マクロで見たら、国民(人類)である自分自身が原因なのですから。


「ささら電車」は冬の季語。

2011-08-04 21:29:43 | ◇1級:書き(国字)
 
 吹雪の早朝から出動し除雪する ささら 電車。








セン
ささら



【解字】会意。竹+彫。


  1. ささら。竹を細かく割って束ねたもの。





『Wikipedia』
ささら(簓)とは竹や細い木などを束ねて作製される道具の一つである。洗浄器具として用いられるほか、楽器や民族舞踊の際の装身具の一部としても用いられる。





全国的に暑い毎日が続いておりますが、
冬の話題で気持ちだけでも涼しく。


北海道ではお馴染みのササラ電車。
初出動時には必ずニュースで話題にのぼる「ササラ電車」の存在を誰しもが知っています。
今でも北海道で電車が走っているのは、札幌市と函館市。




雪が降り始める11月下旬から運行を開始しますが、あの”竹ブラシ”だけで豪雪の北海道の軌道を除雪してるなんてすごいと思いませんか。

でも、「ささら」が「簓」と書くとは大多数の道民は知りません。
音読みもあるようですが、熟語は見当たらないようです。
当たり前ですか、国字なんだから。


日本全国に現存する路面電車は以下のとおりです。

 札幌市交通局
 函館市交通局
 東京都交通局
 東京急行電鉄
 豊橋鉄道
 富山地方鉄道
 富山ライトレール
 万葉線(富山)
 福井鉄道
 京阪電気鉄道
 京福電気鉄道
 阪堺電気軌道
 岡山電気軌道
 広島電鉄
 土佐電気鉄道
 伊予鉄道
 長崎電気軌道
 熊本市交通局
 鹿児島市交通局



この中で北海道以外で豪雪と思われるのは、富山と福井。
おそらくだが、「ササラ電車」は使っていないと思う。
では軌道の除雪をどのようにしているのか気になるところ。
どなたかご存知の方がおりましたらお知らせください。



わたしは除雪以外にササラって何に使っているのか知りませんでした。
で、ネットで検索してみました。笑



1.中華鍋のこげ落とし洗浄。魚の腹わた取りにも使用。






2.富山県に伝わる108枚の木の板をつないだ民族楽器。








もしかしたら、、

こちらの方が「ササラ電車」より、人口に膾炙しているのかもしれませんね。