特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

“現代(ヒュンダイ)ライオンズ”誕生か!?

2005-04-01 08:02:13 | 韓国留学記
 晴れ。最低気温6.3度。最高気温16.1度。

 ソウルに来てから現地の新聞を定期購読したことはない。いつも街中の売店で買うことにしている。普段私が読むのは、国内最大発行部数を誇る朝鮮日報(チョソンニルボ)だ。たまに気になる記事があると東亜日報(トンアイルボ)を読むこともある。現在主要な日刊紙は一部500ウォン(50円)だ。因みに韓国の日刊紙は一日一回の発行で、毎週日曜日は休刊である。

 何故私が定期購読をしないのか?もちろん理由がある。それは韓国の新聞配達の仕方が日本の場合に比べると、良く言えば大らか、悪く言えば雑なところがあるからだ。

 日本なら郵便ポストに新聞が配達される。しかしこちらでは、家の玄関前にただ置かれる場合が多い。不思議なことに玄関前にきちんと郵便ポストがあっても、配達員は律儀に床(地面)に置いて行くのだ。雨の日は新聞が濡れないようにきちんとビニール袋に入って配達されるが、それ以外の日はそのままだ。そのため、新聞は必然的に汚れてしまう。家で新聞を読む前には、まず新聞に付いた汚れをパンパンと、落とさなければならない。
 
 しかし、こちらの人たちは何の不平も不満も言わず、玄関前に“置かれた”新聞を拾って読むのである。“置かれた”と書くと“キレイ”だが、折り込み広告などが新聞からはみ出して、周囲に散乱していたりすることも多々ある。どう考えてもこれは、バイクで走りながら玄関前に狙いを定めて新聞を“投げている”としか思えないのだ。

 郵便ポストには、郵便物しか入れてはいけないという“取り決め”でもあるのかも知れない。

 先月30日、韓国の日刊紙中央日報(チュンアンイルボ)ライブドア堀江貴文(ほりえたかふみ)社長との単独インタビュー記事を掲載した(写真)。海外のマスコミとの単独インタビューは初めてとのこと。日本国内でもマスコミ各社がこぞって引用報道をしていた。そこで、その日は普段読まない中央日報(チュンアンイルボ)を買って読んでみた。

 記事の主な内容は二つで、一つは「日本企業の成長が止まったのは(強い力を持った)オーナー不在のため」。そしてもう一つが「現代(ヒュンダイ)自動車は西武ライオンズを買収したら良い」というもの。

 西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載問題からコクド堤義明(つつみよしあき)会長がグループ役職を辞任し、逮捕までに至った事件。西武グループの今後の動向に関心が集まっていただけに、堀江氏のこの発言は相当強烈なインパクトがあったことは間違いない。

 堀江氏は「日本企業の成長が止まったのは韓国三星(サムスン)のような強力な指導者(オーナー)がいないためだ」と主張したと書いている。

 確かにそうだ。今や押しも押されもせぬ三星(サムスン)電子を率いる尹鐘龍(ユン・ジョンヨン)代表理事・副会長は1944年1月21日生まれの61歳。2000年(56歳)から現職に就(つ)いている。氏は昨年(2004年)十月十三日の「Newsweek韓国版」“世界のデジタル革命を先導する三星(サムスン)”というタイトルの特集記事の中で自ら「スピードがカギである」と述べている。

 堀江氏もインタビューの中で「(日本企業より)若く優秀で、攻撃的な韓国企業が市場規模が大きい日本でお金を稼ぐチャンスは多い」と述べ、また「まずブランドを広める(知名度を高める)戦略で市場を狙わなければならないと思う」と韓国企業に向けてアドバイスしている。

 日本のマスコミでは「現代(ヒュンダイ)自動車西武ライオンズを買収したら良い」という堀江氏の発言だけが大きく取り上げられたようだ。しかし、堀江氏が突然こんな発言をした訳ではない。記事を読んでみると「もし韓国企業のCEOなら、(日本市場で)どんな戦略を取れば良いか?」という記者の質問に対する答えとして述べたのである。

 堀江氏は「現在、韓国企業の日本市場における最も不利な点はブランド(知名度)だ。これは日本のメジャーブランドの中で経営不振に陥った企業を継続して買収すれば良い。例えばプロ野球の西武球団のようなものを現代(ヒュンダイ)自動車が買ったら良い。日本に100%子会社を作ればやっていける。そうすれば認知度は100%上がる。現代(ヒュンダイ)の車がとても良いというのは解かるが、日本では現代(ヒュンダイ)がどんな会社かをユーザーが知らないがゆえに買おうとしないのだ。知られるようになれば売れる。今、西武球団を買うのが良いチャンスだ」(翻訳・文責:特上カルビ)と話している。

 西武ライオンズが日本企業ではなく外国企業、しかも韓国企業が買収したら・・・。最近の韓国や中国企業の急成長ぶりにただでさえ危機感を募らせている日本企業である。堀江氏の言葉が現実味を帯びている分、日本のマスコミも過剰に反応したのかも知れない。

 堀江貴文社長に対する評価は人によって大きく異なると思うが、旧態依然とした日本企業の間に問題提議をした点ぐらいは認めてあげてもいいのではないだろうか?

 中央日報(チュンアンイルボ)はもともと三星(サムスン)グループ系列の新聞社だ。堀江氏が日本企業の成長が止まった理由として、三星(サムスン)のような強力なオーナーがいないという点を挙げてくれたのが余程嬉しかったのだろう。別刷り経済面のトップ(カラー)を含め二ページも割いて写真入りで大々的に報道したところに、それが見て取れる
 
 一つ気になることがあった。三星(サムスン)は三星(サムスン)ライオンズという韓国のプロ野球チームを持っている。万が一、現代(ヒュンダイ)が西武球団を買収することになったら、日本に「現代(ヒュンダイ)ライオンズ」が誕生することになるだろう。三星(サムスン)は日本に「現代(ヒュンダイ)ライオンズ」というプロ野球チームが誕生しても良いのだろうか?今や飛ぶ鳥を落とす勢いの三星(サムスン)である。きっと、それくらいのことは大した問題ではないのだろう。そう言えばロッテも韓国ではロッテジャイアンツというチーム名だし、現代(ヒュンダイ)は現代(ヒュンダイ)ユニコーンスというプロ野球チームを持っている。

 堤義明(つつみよしあき)氏も、堀江氏が言うところの「強力な指導者」ではあった。しかし、あまりに強力過ぎたのだ。長い年月を経るうちにいつの間にか「独裁者」となってしまっていた。知らぬは本人ばかりなり。今までの歴史が物語っているように「独裁者」はいつか必ず滅びる宿命にある。名誉も地位も権力も一夜にして失ってしまった。

最新の画像もっと見る