特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

マゴリッ・テチョ首相

2009-02-13 23:45:06 | Bravo!韓国語
曇り.最低気温5度. 最高気温16度.

朝鮮戦争(한국전쟁)で仁川上陸作戦(인천 상륙 작전)を成功させその名を馳せたマッカーサー将軍(Douglas MacArthur)が,韓国語では더글러스 맥아더(ドグルロス・メガド)と表記されるという話は,韓国を題材としたエッセイなどでもおなじみだ.

【写真】ダグラス・マッカーサー(Douglas MacArthur)連合国軍最高司令官

私も大学時代に韓国語を学び始めてから日韓の外国語表記の違いに興味を抱き,あれこれメモをしておいた.

私が最も驚いたのが,当時イギリスの首相を務めていたサッチャー(Margaret Hilda Thatcher)首相の韓国語表記である마거릿 대처(マゴリッ・テチョ)だった.

【写真】1979~1990年までイギリス首相を務めたマーガレット・サッチャー(Margaret Hilda Thatcher)女史

韓国の新聞にサミット(先進国首脳会議)参加国首脳の似顔絵が載っていて,それぞれ名前が併記されていたので대처(テチョ)がサッチャーだとすぐに分かったが,似顔絵がなければ誰のことかさっぱり分からず頭を抱えていたことだろう(当時はネットも無かったし・・・).

地名での発見はオーストリア(Austria/오스트리아)の首都ウィーン(Wien)が빈(ピン)となることだった.調べてみれば,ドイツ語読みのWien(ヴィーン)を採ったわけだ.もし地理の試験で“빈(ピン)はどの国の首都か答えよ”などという問題が出されたら手も足も出ない.

そのいっぽうで,ウィンナ・コーヒー(Wiener Kaffee)のことは英語読みのVienna(ヴィエナ)を採って,비엔나 커피(ビエンナ コピ)として韓国のコーヒーショップのメニューに並んでいる.

ちなみに共和国(北朝鮮)でのウィーンの表記は윈(ウィン)である.

そういえば,一昨年(2007年)の夏に東京で韓国語教師研修を受講した時に,ある講師の先生がおっしゃっていたことを思い出した.
「韓国語が全く分からない日本人が韓国系航空会社の飛行機に乗って,離陸前に韓国語の機内アナウンスを何気なく聴いていると,突然韓国語が理解できる部分があるんでビックリするんだよね.どこだか分かりますか?――そう,산소 마스크(サンソ マスク)の部分!」

サッチャーは대처(デチョ),ウィーンは빈(ピン)や비엔나(ビエンナ)に化けるけど,酸素マスクは산소 마스크(サンソ マスク)のまま.だから韓国語は面白い!

アソ タロ

2009-02-10 23:26:42 | Bravo!韓国語
晴れ.とっても暖かな一日.最低気温4度. 最高気温13度.

韓国版ウィキペディアで「G8」を検索すると参加国が次のように表示される.

독일(ドイツ),러시아(ロシア),미국(米国),영국(英国),이탈리아(イタリア),캐나다(カナダ),프랑스(フランス),일본(日本).

日本語の五十音順に該当する가나다라(カナダラ)順に並んでいるはずなのに何故か日本(일본)はイタリア(이탈리아)の次ではなく,殿(しんがり)に控えている.まぁ,そんなことはどうでも良い.

今日,お話ししたいのは韓国語(ハングル文字)による外来語表記についてである.特に人名となると聞き取りは出来たとしても,正しいスペルで書き取ることは困難を極める.

「Yes We Can!(그래요, 우린 할 수 있습니다!)」の名演説でアメリカ(미국)初の黒人大統領に就任した버라크 오바마(ボラク・オバマ)はバラック・オバマ氏のことだと推測しやすいだろう.

イギリス(영국)の고든 브라운(ゴデゥン・ブラウン)首相もゴードン・ブラウン氏であるという勘が働く.

니콜라 사르코지(ニコルラ・サルコジ)は,たとえ니콜라(ニコルラ)が聞き取れなくとも,사르코지(サルコジ)とくれば,フランス(프랑스)のニコラ・サルコジ大統領だとピンとくるはずだ.

ドイツ(독일)の首相であるアンゲラ・メルケル女史は앙겔라 메르켈(アンゲルラ・メルケル).

ドミトリー・メドヴェージェフロシア(러시아)大統領は드미트리 메드베데프(デゥミテゥリ メデゥベデプ)と,何の肩書も紹介されずに名前を聞いただけではどこの誰だか分らない.ちなみにウラジーミル・プーチン首相は블라디미르 푸틴(ブルラディミル プティン).

カナダ(캐나다)のスティーヴン・ハーパー首相は스티븐 하퍼(スティブン ハポ).別に「ハポ~!ハポ~!」とアン●ニオ●木の真似をしているわけではないので念のため.

G8参加国には入っていないが,何と言っても頭が痛いのが中国(중국)の人名.日本では漢字を音読みにするのが慣例であり胡錦濤(こきんとう)主席だの江澤民(こうたくみん)主席と呼んでいるが,韓国では全て中国での発音に準じてハングル表記をするからだ.

후진타오(フ ジンタオ),장쩌민(チャン ツォミン)がそれぞれ胡錦濤,江澤民主席を指す.参考までに小平(とうしょうへい)は덩샤오핑(トン シャオピン),毛沢東(もうたくとう)は마오쩌둥(マオ ツォテゥン).

そして台湾の現総統である馬英九(ばえいきゅう)氏は마잉주(マ インジュ)で,孫文(そんぶん)は쑨원(スン ウォン)である.

最後に我が日本の首相,麻生太郎首相は아소 다로(アソ タロ)と,現在の政権支持率のように今一つ冴えない.

血圧ありますか?

2005-09-30 15:33:38 | Bravo!韓国語
 昼前から激しくなる。最低気温16.6度。最高気温21.2度。

 論文に集中していたら、いつの間にか朝の五時を回っていた。
 今日は通院日。このまま横になると、朝九時半の診察予約時刻に間に合いそうにないので、結局一睡もせず。
 病院へ行くまでアイロンがけをし、朝食の間に洗濯機を回す。洗濯物を干してから小雨の中病院へ。
 


 今週は体調が芳しくなかったこともあり、服薬量を若干増やしてもらう。
 主治医の先生が薬を処方するにあたって、血圧を測ることになった。診察室の外にある血圧計で看護士さんが血圧測定をした。腕にマジックテープの大きいのを巻き付けて、シュッパ、シュッパ、シュッパっと空気を送るアレである。

 無事測定が終わると、看護士さんが「血圧ありますか?(ヒョラビ イッソヨ?=혈압이 있어요?)」と私に尋ねてきた。
 「け、血圧ありますかぁ~?」って、あるに決まってるじゃないの。無かったら死んじゃうのよ看護士さん。
 「はい、あります(ネー、イッソヨ=네,있어요.)」と看護士さんの質問に真面目に答える私。看護士さんは私に何を言いたのだろうか?
 私の答えを聞くと、看護士さんは何事も無かったかのように診察室にいる主治医の先生に私の血圧の値を告げた。
 それを聞いて、今回の服薬量をパソコンに打ち込む先生。
 再び診察室に戻って、先生から今後の治療方針と、生活上の注意点についてお話しを伺い、今日の診察は無事終了。
 先ほど血圧を測ってくれた看護士さんにカルテを渡して、一階にある会計カウンターへ向かった。それにしても「血圧ありますか?」ってどういう意味なの?と考えながらカウンター前の椅子に座っている時にようやく理解できた。

 「血圧ありますか?」=「血圧高いですか?」の意味であるということが・・・

 日本語講師や翻訳家として活躍している韓国の友人に確認したところ、やはり「血圧高いですか?」の意味で使われるとのこと。但し、「血圧高いですか?(ヒョラビ ノップセヨ=혈압이 높으세요?)」と言うのが一般的だそうだ。ちなみに「血圧低いですか?」は「ヒョラビ ナジュセヨ(혈압이 낮으세요?)」である。

 私は決して高血圧ではないのだが、病院で血圧を測ると数値が高めになってしまう。緊張しやすいタイプなのだ。
 韓国で血圧を測ったことは今まで何回かあったものの「血圧ありますか?」なんて尋ねられたのは初めてだった。ところで皆さんは「血圧ありますか?」。

 写真は院内薬局にある病院の建物をあしらったステンドグラス。

ヨッチュオボゲりなさい!

2005-06-10 19:33:27 | Bravo!韓国語
 のち曇り。最低気温18度。最高気温23.1度。暑さからは解放される。

 またやってしまった

 今日はいつもの通院日。主治医の先生に訊きたいことがあったので「質問したいのですが(チルムナゴ シップンデヨ=질문하고 싶은데요…)」と言ってしまったのだ
 もちろん間違いではないのだが、先生など自分より目上の方に対しては「お伺いしたいのですが/お尋ねしたいのですが(ヨッチュオボゴ シップンデヨ=여쭤보고 싶은데요…)」というのがフォーマルな言い方なのである。

 大学院に入ったばかりの頃、講義中に教授に質問があって「質問したいのですが(チルムナゴ シップンデヨ=질문하고 싶은데요.)」と言ったら、教授が間髪入れずに「質問じゃなくて、伺いなさい(チルムンナジマルゴ ヨッチュオボセヨ=질문하지 말고 여쭤보세요)!」とおっしゃったのである

 それからしばらく、日本人留学生の間では「お伺いします(ヨッチュオボゲッスムニダ=여쭤보겠습니다.)」の「ヨッチュオボゲッ=여쭤보겠」の部分を取って「ヨッチュオボゲりなさい!」という言葉が流行った。

 その講義は韓国語教育の専攻科目だったので、留学生のみならず、韓国人学生達の韓国語の使い方(言葉遣い)についても教授は一つ一つ厳しく指摘された。

 それ以来、自分では気をつけているものの、習慣というのは恐ろしいもので何度か同じ失敗を繰り返している。気を抜いていると、ついつい“日本語→韓国語”の余計な翻訳作業を頭の中で行ってしまうのだ。実際、頭の中での翻訳作業は時間もエネルギーも消費するし、非効率的なことこの上ない。何も考えずに“韓国語モード”に切り替えて意思疎通をしたほうが数倍楽なのである。

 しかも韓国語には「質問(チルムン=질문)」という発音も日本語と似通った漢字語が存在するから余計厄介だ。

 さすがに主治医の先生は私の言い間違いを一切訂正されることもなく、至極丁寧に私の“質問”に対して答えて下さった。私の主治医も医学部の教授で偉い先生には変わりない。それにしても、毎回、私の拙い韓国語にも辛抱強く付き合って下さるし、的確なアドバイスも下さるので本当に感謝している

 私が病院に向かう際には最寄のバス停から、バスに乗り、地下鉄三号線の「独立門(トンニンムン=독립문)」駅から地下鉄を乗り継いで行く。「鐘路3街(チョンノサムガ=종로삼가)」駅で三号線から一号線に乗り換えるのだけれど、この駅にはもう一本、地下鉄五号線が乗り入れている。
 しかし、地下鉄一号線から五号線に乗り換えるには階段の上(のぼ)り下(お)りに加え、駅構内を延々と歩かねばならない。その不便を少しでも解消すべく、一号線と五号線を結ぶ通路の両脇に“動く歩道”が設置された。

 何週間か前の朝のことである。その日も病院に向かうため「鐘路3街(チョンノサムガ=종로삼가)」駅で三号線から一号線に乗り換えようと、“動く歩道”の脇の通路をてくてくと歩いていた。
 すると五号線から一号線方面へ向かって動いている“動く歩道”の降り口付近で、必死になって、“動く歩道”を逆走している年配のおばさん(アジュンマ=아줌마)を見かけた。そのおばさん(アジュンマ=아줌마)は逆送を試みるものの、何せご年配なので足腰が弱っていらっしゃるご様子。何歩か前に進んだかと思うと“動く歩道”に負けて、降り口に押し戻されてしまうのだ。でもそんなことで簡単に諦めない。何せ“韓国のアジュンマ(おばさん)”は世界最強と称されているのだ。簡単に諦めた日には“世界最強”の名が廃(すた)るとばかり、血相を変えて逆走を試みている。

 このまま“アジュンマ(おばさん)”の血圧が上がって、倒れられでもしたら大変と思った私は、「“アジュンマ(おばさん)”そこで何をしていらっしゃるのですか?」と思い切って声を掛けてみた。すると「五号線に乗りたいんだけど・・・行けないんだよぉ」とのこと。

 私が、反対側に五号線へ向かう“動く歩道”があることを伝えると、「私もヘンだなぁ~って思ったんだよ・・・ありがとう!」と照れ笑いを浮かべながら、“動く歩道”を乗り換えて、五号線の方へ向かったのでした。 それにしても、何て可愛い“アジュンマ(おばさん)”なのでしょう

 私はおばさんの後ろ姿に向かって「頑張れ、おばさん(アジュンマ、ヒムネセヨ=아줌마 힘 내세요!」とつぶやいて、一号線のホームに向かったのでした。

 因みに“動く歩道”のことを韓国語で“ムービンウォーク=무빙워크”と言います。英語の「moving walk」をそのまま韓国語表記しただけですね。

 写真が「鐘路3街(チョンノサムガ=종로삼가)」駅にある五号線方向への“ムービンウォーク=무빙워크”(今朝(6/10)撮影)。

最古は最高

2005-06-07 22:42:52 | Bravo!韓国語
 晴れ時々曇り。最低気温18.3度。最高気温25.1度。

 韓国は軍事政権時代、政府に対する批判などが自由に出来ませんでした。
 そんな影響もあって、以前は大統領や政府の政策をユーモアで笑い飛ばす「ジョーク集」のようなものが流行っていました。有名なものを一つご紹介しましょう。

 某大統領がある博物館を訪れました。
 館長が大統領のそばで、展示物について一つ一つ説明しています。
 古い土器が展示されている前での会話です。

 館長:「大統領閣下、この土器は今から3,000年前のものでございます」
 大統領:「館長!君は私に嘘を言うのかね?これは3,000年前のものではない!」
 館長:「いや、確かにこれは3,000年前のもので間違いございません」
 大統領:「これは3,005年前のものだ!私が五年前にここを訪れた時に、君は3,000年前のものだと言ったではないか!」
 
 韓国内の最新ニュースを手っ取り早く知ることが出来るこのサイト皆さんも利用されていることと思います。

 韓国語の記事を日本語で読めるのでとても便利です。
 日本語が不自然だったり、“こなれていない”のは仕方が無いと思います。でも、明らかに誤訳と判る記事が掲載されている時があります。

 今年の一月に掲載されたこの記事(短い記事なので、時間がある方は読んで見て下さい)。

 この記事の二段落目の“ソウル市は5日、「市立美術館、ソウル駅舎博物館”と書いてあり・・・。
 四段落目を見ると“例えば、入場料700ウォンの市立美術館を観覧した市民が、美術館のチケットを持って14日以内にソウル歴史博物館を訪れると・・・”と書いてあります。

 韓国語と、ソウル市内の博物館についてご存知の方なら、どこが誤訳かお判りになりますよね。 
 実は二段落目に書いてある“ソウル駅舎博物館”と四段落目の“ソウル歴史博物館”は同じ博物館なんです。ソウルには“ソウル歴史博物館”はあっても、“ソウル駅舎博物館”はありません。

 ではなぜこんな間違い(誤訳)が生じたのか?

 それは、韓国語で書くと両方とも「서울 역사 박물관(ソウル ヨクサ パンムルグァン)」になってしまうからです。韓国語では「駅舎」も「歴史」も「ヨクサ=역사」と表記することから生じた誤訳です。この博物館名に漢字が併記されていたら決してあり得ない間違いです。また、漢字が表記されていなくとも、ソウル市内の博物館の事情に詳しければ“ソウル駅舎博物館”という誤訳はしないはずです。

 不思議なのは四段落目ではきちんと“ソウル歴史博物館”と訳してあるところです。韓国語の記事を自動翻訳ソフトで訳し、それをそのまま掲載してしまったのではないかと思います。

 韓国語を自動翻訳ソフトにかけると、このような誤訳が頻発します。自動翻訳機はソウルにある博物館名まで正確に把握していませんから。

 確かに、以前ソウル駅(旧駅舎)の構内には“鉄道博物館分館”というのがありました。
 しかし、昨年(2004年4月1日)ソウル駅が新築移転された際に閉鎖され、現在は地下鉄一号線の「儀旺(ウィワン=의왕)(旧 富谷プゴク=부곡)駅」近くの鉄道博物館に全て移転展示されているそうです(日本語での案内はこちらのサイトを参照)。

 最近すっかり漢字を使う機会が無くなった韓国では、「駅舎」と「歴史」のように漢字が併記されていれば間違えないような、同音異義語による間違いが時々起こります。

 初めに出てきた大統領と館長。今度は朝鮮白磁が展示されている前にやって来ました。

 館長:「大統領閣下、これが我が国“最古(チェゴ=최고)”の白磁と言われております」
 大統領:「こ・れ・が・か・・・?」
 館長:「はい。左様にございます(先ほどの失敗を恐れて、何年前のものとは言えません)」
 大統領:「一部が欠けていて、沢山ひびも入っている上に、これだけ薄汚れているもののどこが、我が国“最高(チェゴ=최고)”の白磁だと言うのだ?嘘を言うな!嘘を!」

 次の日、博物館には新しい館長さんがやって来たそうです。

 写真はソウル駅の旧駅舎(昨日(6/7)撮影したもの。歴史的建造物として、以前あった場所にそのまま保存されています)。