特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

あなたも味わってみませんか?

2006-02-26 23:42:45 | ソウル見て歩き
 曇り朝のうち一時雨。最低気温-3.5度。最高気温7.5度。風が強い一日。

 以前、下の階に下宿していた日本人のYさんが久しぶりにソウルへ遊びに来た。夕方、Yさんと一緒に東大門(トンデムン=동대문)にある「タッカンマリ(닭한마리)」の専門店へ。つい最近、韓国内でも鳥インフルエンザが人に感染していた事実が明らかになったばかり。しかし店内を見渡す限り全く商売には影響が無いようだ。見事にどのテーブルもお客さんで埋まっている。焼酎(ソジュ=소주)片手に皆さん実に上機嫌。

【写真上】これが「タッカンマリ(닭한마리)」。キムチやコチュジャン(고추장)といったヤンニュム(양념=調味料)などを加えて戴く。

 ちなみに「タッカンマリ(닭한마리)」の「タッ=닭」は“鶏”、「ハンマリ=한마리」は“一羽”とか“一匹”という意味。強いて言うなら、韓国風鶏鋤(とりすき)鍋といったところか? 私は辛いものが苦手な上に、「刺激物を避けるように」と主治医の先生から言われているので、ほとんど何も加えずにタレだけで戴いた。それでも十二分に美味しい。鶏を食べ終わったあとは、ラーメンなどを入れたりもする。

 お腹が一杯になったところで、昨年末にリニューアルオープンを果たした「Nソウルタワー」へ向かった。
 「Nソウルタワー」はソウル市の中心部にある南山(ナムサン=남산)の山頂に建つ電波塔だ。テレビやラジオの電波を送信している。タワー自体の高さは236mだが、南山(ナムサン)山頂までの海抜(243m)を合わせると海抜479mとなる。つまり「東京タワー」(333m)よりも146mも高いということで、韓国の人たちの溜飲が下がるというわけだ。同じくソウル市のヨイド(여의도)にある「63(ユクサム)ビルディング(63빌딩)」も池袋にある高層ビル「サンシャイン60」と同じ地上60階建てなのだが、地下3階の分も加えると63階になるので「63(ユクサム)ビルディング」と呼ばれている。とにかく韓国では、お隣の国に対するライバル意識は尋常ではない。

【写真上】南山(ナムサン)の山頂に建つ「Nソウルタワー(N서울타워)」

 私は「Nソウルタワー」がリニューアルオープンして訪れたのは今回で二度目たが、夜景を見るのは初めてだった。昼間の眺めももちろん素晴らしいが、ソウルの夜景が思った以上に美しいのには驚かされた。実は1988年の夏に「ソウルタワー」を初めて訪れたのだが、その頃は夜景と言っても幹線道路に沿った黄色い街路灯と、教会を示す赤い十字架だけがやけに目立つ、暗くて寂しいものだった。それにその頃は、依然として南北の緊張状態が続いており、軍事上の理由から高所からの写真撮影は全て禁止されていた。その時に比べるとソウルの街は格段に明るく華やかになり、写真撮影も自由に出来るようになった。ソウルの夜景を眺めながら18年という歳月の長さと、南北関係の変化を実感せずにはいられなかった。

 今回のリニューアルであらゆる箇所が見事に生まれ変わった。以前の寂びれた雰囲気は微塵も感じられない。展望台に設けられたお手洗いもその一つ。その名も「空の化粧室(ハヌレ ファジャンシル=하늘의 화장실)」。日本語版のパンフレットでは「スカイ化粧室」となっている。少しでも“お洒落な雰囲気”を醸し出そうとした努力は認めてあげたいが、いかんせんカタカナと漢字語の相性がイマイチ。ここは素直に「空の化粧室」としたほうが断然スッキリする。トイレだけにスッキリしないと非常に困る。で、内部がどんな具合かというと・・・。ご覧の通り

  

【写真左】洗面台から眺めた「空の化粧室」。 【写真右】小便器の眼下に広がる美しいソウルの夜景。

 どうですか?素敵でしょう。この小便器、一番奥は台がついているので問題がないのですが、手前の台の無い二つは便器の位置が微妙に高いのです。いわゆる「American standard」という訳ですよ。足が短いカルビにとっては、脹脛(ふくらはぎ)をピクピクさせつつ、微妙に爪先立ちをしたまま用を足さねばならず、夜景を眺めている余裕などございませんでしたのよ!「空の化粧室」でソウルの景色を満喫されたい諸兄には、一番奥の小便器を強くお勧めする次第であります

 「Nソウルタワー」のパンフレットには「空の化粧室」について以下のようなコメントがついています。
 「하늘의 화장실」:서울에서 가장 높은 화장실인 N서울타워의 하늘 화장실. 아름답고 시원하게 펼쳐진 서울 풍경을 바라보며 잊지 못할 쾌감을 느껴보세요.
 「空の化粧室」:ソウルで最も高い(所にある)化粧室である「Nソウルタワー」の「空の化粧室」。美しく見事に広がったソウルの街並みをながめつつ、忘れられない快感を味わってください。そこのアナタ!そう、アナタです!あなたもぜひソウルで忘れられない快感を味わってみませんか?

 追記(2/28):残念ながら女性用トイレはどのような構造になっているか未確認です。

新入生はバスに乗って

2006-02-24 20:43:20 | 韓国留学記
 晴れ。最低気温-1.7度。最高気温11.5度。

 韓国の学制は“初等学校(チョデゥンハッキョ=초등학교=日本の小学校に該当)”から“大学校(テハッキョ=대학교=日本の総合大学に該当)”にいたるまで日本と同じ6.3.3.4制を採っている。但し日本と違う点は、年度始めが日本よりも1ヶ月早い3月であること。3学期制の日本に対して2学期制であること。そして、大学は入学式と卒業式が年に2回行われることの3点である。大学での入学式は原則的に3月と9月、卒業式はそれぞれ8月と2月に行われる。大学がこのような制度を採っている背景には、韓国における男子の徴兵制度を挙げることができる。入学式や卒業式が年に1度ずつしか無いと、入隊や除隊の時期が限られてしまうため、休学や復学をしやすいように便宜を図っているのである。また海外で教育を受けた学生たちが編入しやすいようにということもあるだろう。

 今日(2/24)延世(ヨンセ)大学の学食で昼食を済ませて外に出たら、観光バスが列を成して停まっていた。優に10台以上いる。バスのフロントガラスには「商経大(サンギョンデ=상경대=日本の商学部・経済学部に当たる)」と書かれた紙が貼ってあった。

【写真上】延世大学のキャンパスにずらりと並んだ観光バス。今年の新入生たちがオリエンテーションに出かける。

 これから1泊2日の予定で「オリエンテーション(Orientation=오리엔테이션)」に出かけるのだ。韓国では一般的に「OT(オーティー=오티)」と呼ばれている。「OT」では学生生活に関するレクチャーや新入生同士や先輩たちとの親睦を深める行事などが朝から晩まで行われる。新入生にとっては校則や受験勉強などで常に縛られてきた高校までの生活とは一転して、自由を満喫できる大学生としての一面を垣間見られる初めての機会となる。

 先に述べたように、韓国は男子の徴兵制があるため兵役に就いていない学生と、兵役を終えて復学した学生とが同じ学年として勉強することとなる。従って、日本のように単純に学年で先輩、後輩の区別は出来ない。例えば、大学2年生でも兵役を終えていない学生は満19~20歳であるが、およそ2年に及ぶ兵役を終えた学生は少なくとも20歳以上であるからだ。そこで韓国では入学した年度を基準にして、先輩・後輩を区別している。これは「学番(ハクポン=학번)」と呼ばれている。今年(2006年)入学したのであれは「06学番(コンニュクハクポン=공육학번)」となる。ちなみに私カルビの場合、大学は日本で1987年に入学したので「87学番(パルチルハクポン=팔칠학번)」、大学院は2002年に韓国で入学したので、俗に「o2(酸素学番=サンソハクポン(산소학번)」と呼ばれていた。最近では学番(ハクポン=학번)ごとに様々な“俗称”が付けられているようだ。
 
 新入生は韓国語で「シニプセン=신입생(新入生)」だが、最近は「セネギ=새내기」というのが一般的。「セネギ=새내기」には“新米”とか“駆け出し”といった意味がある。今年もまもなく大勢の「セネギ=새내기」たちで各大学のキャンパスは賑わうことだろう。春はもう、すぐそこまで来ている

求む消火器!

2006-02-20 22:31:12 | 時事問題
 晴れ。最低気温-0.1度。最高気温9.1度。日中はジャケットいらずの良い天気。

 日向にいるとお日様の匂いが気持ち良い一日でした。

 通院日だったので、朝食後病院へ。
 朝の通勤時間帯なのでバスは見事に満員。今朝のバスの運転手さん、防寒対策のためか大きなマスクを着用。道路が混雑してストレスが溜まっているのか、これでもかとばかりにクラクションを鳴らしまくり、周囲の車を煽っている。煽りまくりである。少しでもノロノロ運転している車がいると「なにノロノロ走ってんだよ!」とか、ウィンカーも出さずに割り込んでくる車には「割り込むんじゃね~よ」とか、女性ドライバーには「こいつ、一体どんな運転してんだよ!」と独り言の嵐。マスクをして両目だけが覗いているだけにちょっと怖かったです。もちろん運転も。私は心の中で叫びましたね。「運転手さん、イライラするのはよ~くわかります。でも、あなたの独り言そのままあなたにお返しします!」と・・・。

 なんとか無事に鐘路(チョンノ=종로)まで辿り着き、ホッとしながら地下鉄1号線の鐘閣(チョンガク=종각)駅のホームを歩いていたら・・・。
 消火器の表示板がありました。

 下を見ると・・・。

 肝心の消火器がありませんでした。消火器さんたら、今日は有給(休暇)でも取ったのかしらん?

 大邱(テグ=대구)で起きた地下鉄火災の惨事から先週の土曜日(2/18)で三年目を迎えました。2003年2月18日午前9時53分、ラッシュアワーのピークこそ過ぎていたものの192人もの尊い命が失われ、負傷者だけでも148人を数える大惨事でした。

 ソウルの地下鉄も最近ようやく、車両の耐燃化や駅構内の防災設備などが整えられつつあります。しかし、こんな現実を目にすると、あの痛ましい惨事が既に忘れ去られているのではないかと思ってしまいます。
 地下鉄公社は「赤字で経営が苦しいのに、政府は防災・安全対策を一方的に押し付けるだけで何の支援もしてくれない!」と声高に主張しています。しかし、赤字を理由に防災・安全対策が疎かになっては決してなりません。乗客の安全を第一に考えるのが公共交通機関の使命であり、安全は乗客のみならず、そこで働く人たちひとりひとりの身を守ることでもあるのですから。

カルビ遂にKTXデビュー

2006-02-18 22:21:41 | 韓国留学記
 晴れ。最低気温-5.3度。最高気温5.3度。

 朝6時に起床。ソウル(서울)駅へ。朝は冷えるので何を着ていこうかと迷ったが、バスに乗るまでの我慢とばかりカシミヤ(cashmere)のセーターにジャケットを羽織る。土曜日の早朝ということもあり、バスがなかなか来ない。バス停は中央分離帯にあるので、すぐ脇をバスや自家用車が猛スピードで駆け抜けて行く。いつハンドル操作を誤った車がバス停に突っ込んで来ても逃げられるように、常に緊張状態を保つのがソウル流バス停での流儀。自分が乗るバスが来たなら、「私はあなたのバスに乗りますよ~!」と運転手さんへのアピールを決して忘れてはならない。逆に自分が乗らないバスが来た場合は「私はあなたのバスに乗りませんよ」とこれまたアピールする必要がある。特に車が空(す)いている時間帯は、バスの運転手さんもなるべくアクセルから足を離したくないらしい。つまりスピードを落とすことを嫌うのである。つまり赤信号で止まったり、バス停でお客さんを乗せたり、降ろしたりするためにわざわざ右足をブレーキに置き換えるのが面倒なのだ。バス会社は一体誰のお陰で成り立っているのかを考える余裕さえ与えられていないのだ。ソウルを走る路線バスの運転手さん達は実に可哀想である。そんなバスの運転手さんの立場を慮(おもんばか)るのが、心優しいソウル市民なのである。
 今朝も私は何度も「あなたのバスには乗りませんよ(←乗らない、乗らない)」とアピールするハメになった。両腕を顔の前で大きく交差させて×印を作ったり、運転手さんと目が合ったら首を横に振ったりと忙しい。たまに若くて綺麗な女性の運転手さんに見とれていると、お互いの視線が熱く交錯し、一瞬にして恋に落ちてしまったことも一度や二度ではない

 すっかり横道にそれてしまった。今日はバスの話しではない。韓国が世界に誇る高速鉄道であるKTX(Korea Train eXpress)のお話しだ。2004年4月1日に開通したKTXに今朝(2/18)初めて乗ったのである。

【写真上】ソウル駅に出発時間直前に入ってきたKTX(スピード感を出してみました。決してブレている訳ではありません。)

 今さらという気がしなくもないが、私は今まで乗る機会が無かったのだから仕方が無い。今日(2/18)は鮮文大学(ソンムンデ=선문대)で「全国韓国語教育修士論文発表会」が催されたので最寄駅の天安・牙山(チョナン・アサン=천안・아산)駅までKTXを利用した次第。

【写真上】KTXの特室車両

 KTXはフランスのTGVを土台に開発されたため日本の新幹線と違い、全てがフランス仕様となっている。韓国の鉄道は全て広軌(日本の新幹線と同じレール幅)なのだが、KTXの車体は一回り小さい。そのため従来の特急や急行列車に当たる「セマウル(새마을)号」「ムグンファ(무궁화)号」などに比べると、天井も低く、客室も思いのほか狭い印象を受ける。特に新幹線「のぞみ」などをイメージしているとその狭さに驚くだろう。関東地方にお住まいの方なら、新宿箱根・江ノ島などを結ぶ小田急特急「ロマンスカー」をイメージして戴ければ良いかもしれない。
 客室内の座席も一般席(イルパンソク=일반석)は固定式。しかも車内中央にあるテーブルを境にして座席が向かい合っているタイプなので、乗客の半分は進行方向と逆向きに座ることを強いられる。何とも居心地が悪いのだ。一方、日本の「グリーン車」に当たる「特室(テゥクシル=특실)」の座席は全て可動式なので全て進行方向を向いている。座席配置も一般席は通路を挟んで2列ずつの計4列なのに対し、特室は1列、2列の計3列だ。

【写真上】KTXの特室車両乗降口(デッキ部分)

 KTXに乗ったことがある友人たちから「KTXに一人で乗るんだったら特室が良いよ」と聞いていたので、昨夜(2/17)ネットで午前8時発の特室チケットを予約しておいた。天安・牙山(チョナン・アサン=천안・아산)駅まではソウル駅からあっという間の34分。運賃は全て込みで1万6千ウォン(およそ1,900円)。高い!
 KTXに実際に乗ってみた感想は、①車内が狭い。②新幹線に比べると走行音と振動が大きい。③テーブルと座席との間が広い。④テーブルがやたら重い。⑤客室とデッキを仕切っているドアの開閉音が気になる。⑥携帯電話を使う際のマナー違反が目立つ。⑦特室には飲み物とお菓子の無料サービスがある。⑧特室のデッキには新聞が置いてあり自由に読める。⑨特室には専属の女性CA(Cabin attendant)が乗務している。⑩駅到着の車内アナウンスがあってから停車するまでの時間が短い(のんびり降りる支度をしていると、乗り越しかねない)。
 
 目的地の「天安・牙山(チョナン・アサン)」駅には定刻通り8時34分に到着。
 ちなみに帰りは「天安(チョナン=천안)」駅から「ムグンファ(무궁화)号」を利用。ソウルまで1時間半かかったものの、運賃は5,200ウォン(およそ640円)で済みました。KTXはもういいや

 追記(2/24):為替レートの計算を間違えておりました。お詫びして訂正致します。

後輩よオソオセヨ!

2006-02-15 23:39:30 | 韓国留学記
 曇り。最低気温2.9度。最高気温6.5度。

 今日(2/15)は私の大学で卒業式が行われた。

 去年(2005年)の冬の卒業式は雪が降ったりしてとても寒かった覚えがあるが、今年(2006年)は天気こそ曇りであるが、さほど寒くもなく足元も悪くないので、卒業生とその家族、そして親戚一同集まっての一大イベントが繰り広げられ、キャンパスは終日賑わっていた。

 卒業式へ向かう地下鉄の車内で偶然にも今回卒業する同期のPさんとそのご家族と出会う。どんなときも笑顔を絶やさない彼女は、いつにも増して嬉しそうだ。卒業式ということでメイクも普段よりも念入りにしているのか、いつもより数倍綺麗だった。彼女は日本の大学にも留学した経験があるので日本語にはまったく不自由しないのだが、私の前では絶対に日本語を話してくれない。私にとっては厳しくも優しい韓国語の先生であり同期である。

 私は卒業式会場に向かう前に指導教授に挨拶を済ませ、私の後輩たちと会う。
 実は私の母校の後輩たちが、冬休みの間、うちの大学で韓国語研修を行っているのだ。授業の合間にお邪魔して後輩たちにご挨拶。私は日本で大学に入学してから19年、卒業してからはすでに15年が経っている。今回会った後輩たちの多くはまだ生まれて間もない頃のことだろう。もちろん知っている後輩もいないし、彼(彼女)らも私のことを知らない。それでも、こうやって、お隣の国で母校の後輩たちと出会えるというのは実に嬉しい。今回の研修で得たものを生かして、これからも一生懸命韓国語の勉強に取り組んでもらいたい。

 私は思う。今回の研修に参加して、もし韓国に対するイメージが以前よりも悪くなったとしても、それはそれで彼(彼女)らにとって良い経験(学び)であることに変わりはない。一番良くないのは、その国について詳しく勉強もせずに、一方的に批判や非難をすることだ。外国に長く暮らしてみると、国と国との付き合いにおいて“食わず嫌い”だけは良くないということを痛感させられる。

 お隣の国の言葉文化そして歴史などについて関心を持ち、真面目に学んでいる日本の若者たちがいる限り、たとえ遠回りはしたとしても、日韓関係は必ず良い方向へ進んで行くものと私は信じている。
 今日は思いがけず、後輩たちから元気を貰った一日であった。私も頑張らねば!まだまだ後輩たちには負けていられない。

 追記:表題の“オソオセヨ(어서오세요)”とは韓国語で「いらっしゃい」とか「ようこそ」という意味。