特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

映画『パッチギ』をソウルで観る

2006-03-07 23:27:45 | 映画
 晴れ。最低気温1.2度。最高気温11.1度。今日も風が強いので外に出ると肌寒く感じる一日。

 今週の日曜日(5日)韓国の映画界で観客動員数最多記録が塗り替えられた。

    

【写真上】左から観客動員数が多い順に『王の男』、『太極旗を翻して(ブラザーフッド)』、『シルミド』の各映画ポスター

 『ブラザーフッド』が今までもっていた記録(1,174万人)を現在公開中の映画『王の男』が更新したそうだ。総観客動員数は5日の午後5時時点で1,175万人。しかも『太極旗-』の場合は公開100日目で達成したそうだが、『王の男』は昨年末(12/29)の公開以来64日目にして成し遂げられたスピード記録である。この映画の特徴は制作費を抑え(純制作費45億ウォン)大物スターも不在(チョン・ジニョン(鄭進永)がちょっぴり可愛そう)、更に若者たちから敬遠される史劇(사극=サグッ:韓国版時代劇)であるという点だ。当初260あまりだった上映館数も観客動員数の増加とともに400以上にまで増え続け、大記録達成と相成った。また、この映画にコンギル(공길)役で出演しているイ・ジュンギ(이준기)※注意:音楽が流れます♪の美貌が話題となり、“男性も美しくありたい”と20~30代の男性を中心として、メンズコスメやエステなどに対する関心が徐々に高まっていると各マスコミはこぞって報じている。

 天邪鬼(あまのじゃく)な性格の私は「王の男」には目もくれず、日本で去年(2005年)1月に公開された井筒和幸(いづつかずゆき)監督『パッチギ(박치기)』を観た。タイトルの“パッチギ”とは韓国語で“頭突き”という意味。

【写真上】今日(3/7)観た映画『パッチギ』の韓国語版ポスター

 ソウルでは先月(2月)に公開されたが、上映しているのは明洞(ミョンドン=명동)にあるシネカノンだけのようだ。公開から半月以上も経っているし平日なのでガラガラかと思いきや、思ったよりお客さんがいてちょっとビックリ。映画自体はケンカのシーンが多くてビックリ。
 この作品はあまり斜に構えずに、素直に観たほうが楽しめるだろう。1968年の京都が舞台となっているので、当時の世相に関する知識があれば、より一層理解も深まることと思う。歌手の沢知恵(さわともえ)さんがご自身のホームページで「『パッチギ』最高!」とおっしゃっていたので、私も以前から一度観てみたかったのだが、ソウルの映画館で韓国の人たちに囲まれて観る機会が与えられたことに感謝。家に戻るバスの中でもひたすら映画の余韻に浸ることができた。

  

【写真上】映画『パッチギ』の撮影で実際に使われたアンソン(高岡蒼佑)とキョンジャ(沢尻エリカ)の衣装。館内に展示されていた。

 ところで今日(3/7)のニュースによると、韓国政府が各映画館に課している国産(韓国)映画の上映日数を、現行の年間146日から73日に短縮するというスクリーン・クォータ(Screen Quota)制の改正案が今年(2006年)の7月から正式に実施されることになったそうだ。映画業界は強く反発しているが、『王の男』の大ヒットで韓国映画が勢いづいている時機だけに、賛否両論様々な論議が繰り広げられている。しかし一つだけ確かなことは“観客は決して嘘をつかない”ということである。
 
 ちなみにスクリーン・クォータ(Screen Quota)制についてはこちらをご参照下さい。

映画『ウェルカム・テゥ・トンマクゴル』を観る

2005-08-08 23:28:24 | 映画
 のち曇り夕方から雨。最低気温23.7度。最高気温30.2度。風もあり、陽射しが無い分、暑さもそれほど気にならない一日。

 今朝雨が降ったせいか、ソウルの街に吹く風も心地よく秋の気配を感じさせる。
 昨日(8/7)ソウル駅で「お金を貸してくれ」って言われたけれど、週末にお金を下ろすのを忘れた私は、あの時おじさん(アジョシ=아저씨)に貸せるお金さえ持ち合わせていなかったのです。もちろんATM(Automatic Teller Machine)で休日に下ろすことも可能ですが、手数料(確か600ウォンだったと思う)を考えると、そう簡単に下ろす気にもなれません。確かに日本円で考えれば60円足らずのお金です。でも、ソウルで暮らしている者にとっては600ウォンは600ウォン。新聞(500ウォン)を買っても100ウォンお釣りが来るし、延世(ヨンセ)大学にある自動販売機なら紙コップのコーヒー(150ウォン)が四杯も飲めるのです(そんなに飲みたくないけど)。600ウォンを侮(あなど)るなかれ!
 という訳で、月曜日の朝一番で銀行へ走ったカルビ。とりあえず今日のところは世宗(セジョン=세종)大王を三人財布に押し込みました。銀行に行ったついでに今日の為替レートをチェック。100円=891.51ウォン也。私の財布の中では福沢諭吉先生も三人ほど待機しているのだけれど、ご登場願うのは当分先になりそうです。手持ちのウォンで頑張ろう
 
 銀行からの帰りに映画館の前を通ってしまった私。先週の木曜日(八月四日)に公開された『ウェルカム・テゥ・トンマクゴル(웰컴투 동막골)』が以前から気になっていたのです(写真は映画のポスター)。


 上映開始時刻もピッタリ!しかも今の時間なら早朝割引(チョジョハリン=조조할인)が適用されるので安く観られるではありませんか!(※韓国の映画館では午前中の第一回目の上映に限って早朝割引が適用され、通常よりも500~1,000ウォン安い料金で映画を楽しむことが出来ます)。気がついたら入場料6,500ウォンを払って、映画館の中にいました。なぜ?どうして?。「え~っと、あの~、さっき書いたATMの手数料の話し、読まなかったことにして下さい
 
 この映画、音楽をあの久石譲(ひさいしじょう)さんが担当してるんですよ。
 思いっきり笑える映画なのかなと思ったら、それほど笑えず。思いっきりシリアスな映画というわけでもなく。かと言って、息を呑むようなスリルとサスペンスが満載というわけでもない。個人的な感想としては、色んなものを欲張って盛り込もうとしたあまりに、消化不良を起こしている印象を受けました。勉強に疲れた頭を気分転換するにはちょうど良い映画かもしれません。単純なストーリーなので韓国語が全く解せなくても楽しめます。但し、ヒアリングの練習には不向きです(聞き取れなくても決して落胆する必要はありません)。主演女優のカン・ヘジョン(강혜정)さんのプロモーション映画?って思ってしまったのは私だけでしょうか・・・。

 ところで、今日(8/8)郵政民営化法案が衆議院で否決され、衆議院が解散しました。今後の日本の政局とっても気になります。

韓国映画『オンマ』を観る

2005-04-09 22:05:52 | 映画
 。最低気温11.3度。最高気温15.8度。

 昨夜、地元新村(シンチョン)の映画館で韓国映画『オンマ』を観た。近頃には珍しく、夜(と言っても七時半過ぎだが)に映画館の前をぶらぶら歩いていたら、ちょうど上映時間だったので思わずチケットを買ってしまった。

 公開初日の夜の回で六割ほどの入り。別に観たいと思っていた訳でもなく、映画に対する予備知識も何も無いまま観始めてしまった。タイトルの『オンマ』とは韓国語で“お母さん”とか“おふくろ”とか“ママ”という意味。

 ひどい“目まい”のせいで乗り物に一切乗れない68歳の母が、末娘の結婚式に出席するため、家から200里(78.4km)の道のりを3泊4日かけて家族と一緒にひたすら歩いて行くというのが基本的なストーリー(※韓国の1里は約392メートルで日本の1里の10分の1に該当)。その道中に起こった出来事を描いた映画だ。

 初めのうちはちょっと期待したが、物語が進むに従ってどんどん先が読める展開になって行くのだ。しかも観客を無理に笑わせたり、泣かせようとするシーンが何箇所かあり、演出にもかなり無理があった。ラストは韓国映画らしい「お決まり」で終わる。これも予想通りだった。

 ストーリー展開もエピソードも、盛り上がりに欠けるので、全体的に間延びした作品というのが私の個人的な感想。8,000ウォン、もったいなかったなぁ~。

 母親役の女優コ・デゥシムさんが最近ドラマなどで人気があるので、彼女のために作っちゃった映画かも知れない。実際は1955年生まれなので、今年(2005年)でちょうど50歳の女優さんです。

 韓国の“家族”のあり方や絆(きずな)について興味がある方は“参考までに”ご覧あれ。

 家に帰って、「朝鮮日報」の映画評(4/8)を観た。
 それによると、今週末の上映作品推薦順位では10位中9位。コメント欄には「涙を流す準備は既に出来ていたのに・・・」とある。つまり、思った以上に「泣けない映画」だったということだろう。私も同感!同じカテゴリーの作品として韓国映画『家族(カジョク)』(2004年9月公開作品)が挙げられていた(残念ながら私は未見)。

 そんな訳で、昨日は体調もすこぶる良かったのだが、今日は朝から一日中雨ということもあり、思いっきり気分も沈む。結局夕方近くまで横になって過ごしてしまった。何だかすごく損した気分

 写真は映画『オンマ』のポスター。

 追記(4/15):一週間後の『朝鮮日報』映画評では『オンマ』について次のように酷評していた。
        20字コメント:最初から最後まで予想通りに展開する無謀さ。
        観る前に:期待するほど泣けない。
 ↑いくら何でもこれだけ言われちゃったら、映画を観に行こうという気も失せるでしょうが(自分の感想を棚に上げるワタシ・・・)。

韓国に静かに広まる「いま会い」感動の輪

2005-03-29 23:18:05 | 映画
 晴れ。最低気温2.2度。最高気温10.3度。

 私が韓国で何かとお世話になっている。O先生の奥様から昨夜(3/28)電話を戴いた。最近体調が優れない私を気遣ってのものだった。その暖かい心遣いに感謝。
 
 今朝、映画「いま、会いにゆきます」韓国語公式ホームページの掲示板の書き込みを読んでいたら、思った以上に韓国の人たちにも快く受入れられたようでホッとした。と同時に書き込みを読んでいたら自然と涙が溢れてきた。ここのコメント欄にも書いたのだが、映画関係者でもないのに一つ一つの書き込みから、観た人の“感動”が伝わってきて、思いっきり涙腺を刺激された。こんな経験は初めてだ。

 昨年(2004年)の十月半ばに、ソウルから長崎へ飛び、二泊三日でロケ地巡りまでした「解夏(げげ)」と並んで、私のツボに見事にハマった映画だったからかも知れない。

 二つの作品を敢えて一言で表現するならば、「解夏」は実際にもあり得るストーリーだけれど、あまりに“綺麗過ぎて”、いわゆる“理想の純愛映画”だ。一方、「いま、会いにゆきます」は実際には絶対にあり得ないストーリーだけれど、“誰もが経験したことがある出来事”が全編にわたって散りばめられている“等身大の純愛映画”だと言える。原作を読んだ時も思ったことだが、日常と非日常を上手く描き分けている。だからこそ、たとえメルヘンチックなストーリーであっても、日韓問わず多くの人から支持を得られたのだと思う。

 私は「いま、会いにゆきます」の秋穂巧(あいおたくみ)には非常に親近感を抱いたが、「解夏」の隆之(たかゆき)に対してはそのような感情は抱けなかった。巧には自分を重ね合わせることが出来ても、隆之に自分を重ね合わせることなど到底無理だ。

 韓国の書き込みで印象に残った場面として挙げられていたのが、澪(みお)が幼い佑司(ゆうじ)を相手に料理の作り方や、革靴の磨き方、そして洗濯物の干し方などを一生懸命教える場面だった。日本以上に母子(おやこ)の絆や家族の繋がりが強い韓国では、余計に涙を誘われる場面なのだろう。母親が自分の子どもをいとおしむ気持ちは世界共通だ。

 掲示板を読んでいたら、韓国の友人達にも是非観てもらいたくなり、数人に携帯でメールを送った。週末に観に行って来たという友人もいた。その友人いわく「テレビの映画批評番組を見ないで行ったらもっと感動できたのに」との由。

 韓国の事情に詳しい方ならご存知だろうが、韓国の映画批評番組(コーナー)は、親切にも全てネタバレだ。お陰で映画館に足を運ばなくとも、映画のあらすじは勿論のこと結末までがわかってしまうのだ。それでもお客さんが映画館に来てくれるのは、大人でも7,000~8,000ウォン(700~800円)という手ごろな映画料金のお陰かも知れない。

 昨今の「独島(トクト=竹島の韓国での名称)領有権問題」や「歴史教科書歪曲問題」に絡んで、韓国内では酷評続きの日本映画だが、そんな日本映画を純粋に愛してくれる沢山の人がいてくれるという事実を、一人でも多くの日本の人たちに伝えたい。韓国に暮らす一人の日本人として・・・。

 今朝、Iさんが三ヶ月にわたる語学研修を無事終えて、日本へと向かった。ソウルでの貴重な体験を胸に、また新たな一歩を踏み出して欲しいものだ。主の祝福が豊かにありますように!Iさんも昨日(3/28)「いま、会いにゆきます」を観て、「良かった~」と言っていた。「いま会い」の感動の輪は静かに、そして着実に広がっている。

 写真は「いま、会いにゆきます」の韓国版宣伝ポスター。

映画「いま、会いにゆきます」を韓国で観る

2005-03-26 16:13:28 | 映画
 曇り。最低気温2度。最高気温14度。何となく肌寒い一日。

 韓国の映画館はエンディングロールが流れ始めると途端に照明を明るくしてしまう。観客もどっと席を立ち、出口へと向かう。映画の余韻を楽しみたい私としては、あれだけは止めて欲しい。今日も例外ではなかった。

 『いま、会いにゆきます』が昨日(3/25)から韓国で公開された。早速今朝一番で観に行って来た。地元、新村(シンチョン)の映画館で観たのだが、土曜日の朝一番ということでガラガラだった。
 昨夜一時四十五分からワールドカップアジア最終予選の韓国対サウジアラビア戦が行われ、0-2で韓国代表が完敗してしまったせいもあるだろう。今朝の街はやけに静かだった。

 『いま、会いにゆきます』は、昨年(2004年)末に日本国内で公開中に一度観ているので、今回は二度目だったが、やはり良かった。二度目にもかかわらず、まるで初めて観たような新鮮さがあった。逆に今回のほうが映画自体を存分に楽しめた気がする。前回観た時には見逃していた何気ない場面、一つ一つに込められているメッセージを読み取ることも出来た。

 ソウルに戻ってから原作本も読んだので、原作との違和感を感じるかなとも思ったが、自然と映画の世界に入り込めた。『ビューティフルライフ』、『GOOD RUCK!』そして『オレンジデイズ』などで演出を担当した土井裕泰(どいひろやす)が初めてメガホンを取っただけある。原作の味わいを決して損なうことなく、同時に独自の映像世界を形成している。そして何より観客の“ツボ”をしっかりと押さえている。これも数多くのテレビドラマ作りを通して培った土井監督ならではのものだろう。
 
 また『ちゅらさん』を初め、数多くのテレビドラマの脚本を手掛け、今回脚本を担当した岡田恵和(おかだよしかず)もこの作品の映像化にあたって非常に大きな貢献をしたと言って良いだろう。

 出演者の中では秋穂佑司(あいおゆうじ)役を演じた武井証(たけいあかし)の演技力が抜きん出ていた。今後の活躍が楽しみな、子役である。他にYOUが佑司のクラスの担任の先生役として出演していたこと。先日観たばかりの映画「誰も知らない」での母親役とは全く対照的な役柄だっただけに強く印象に残った。

 映画が始まる前に、韓国のお客さんたちのおしゃべりに耳を傾けていたら「日本映画だから、お客が全然入らないんじゃない?」なんていう声も聞こえたが、無視、無視。観たい人だけ観てくれればそれで良い。

 今朝の韓国の新聞「朝鮮日報」のA12面に「韓国パビリオン賑わう・・・“独島(トクト=竹島の韓国での名称)問題なんて知らない”」という見出しが躍った。昨日(3/25)開幕した「愛・地球博」の韓国館(パビリオン)に関する写真付きの記事が掲載されていた。記事の最後に、横浜から来場したという山本さん(女性・29歳)が「日韓両国の間にどんな外交問題があるのか、よく知らない」と述べた、とある。きっと日本国民の多くが、彼女と同じような言葉を口にすることだろう。
 
 日本国内では「竹島(独島)領有権問題」や「歴史教科書歪曲問題」に関心を持っている日本人が、韓国の人たちが考えるよりも“圧倒的に少ない”という事実を知らな過ぎると思う。残念ながら、それが現実だ。韓国内のマスコミ報道に煽られて、反日感情を露(あら)わにし、韓国の人たちが感情的な行動に走るのは得策ではないと思う。韓国が感情的になればなるほど、日本は“引いてしまう”し、何故韓国がそこまで“熱くなるのか”全く理解できない人がほとんどだ。

 同様に、日本のマスコミ報道のみに基づいて「韓国や韓国の人たちを単純に批判する」のは私達日本側にとっても百害あって一利なしであるということを、改めて述べておきたい。特に最近のネット上での韓国批判や攻撃は見るに耐えないものが多く、同じ日本人として、とても残念であると同時に恥ずかしく思う。

 写真は映画「いま、会いにゆきます」の韓国版ポスター。