Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

映画『ひとくず』@千葉劇場-児童虐待を克服する可能性を示唆する作品-

とんでもない映画作品と出会ってしまいました。

児童福祉や社会的養護の「リアル」を描きながら、その克服の可能性を示唆する作品です。

その名も、

ひとくず

です。

オフィシャルHPはこちら

これまでに、僕も、教育や福祉の研究者でもあるので、国内外の100本くらいの「児童虐待に関する映画」を見てきました。その中でも、この「ひとくず」は、そのトップⅢに入る「凄い作品」「素晴らしい作品」でした。

徹底的に「児童虐待」のリアルを示しながらも、それほど過度にグロさはなく、また時折ほっとするような(笑ってしまうような)シーンもあり、また、どこか「希望」を感じる作品でした。

徹底的なリアリズムの追及というよりは、どこかドラマチック(ドラマ仕立て)になっていて、「こうなってほしい」というユートピア的な要素もある映画で、最後は、…もう「号泣」しかありませんでした。立て続けに涙腺を攻めてくる場面が迫ってきて…もう、、、😿😿…

監督・脚本・主演・プロデューサーの上西雄大さんの存在は、圧巻でした。脚本もすごいものですが、とにかく演技者としてとっても素敵で、ファンになってしまいました。(どこか、千原兄弟のジュニアさんに似ているというか…(n*´ω`*n))

この予告編だけでは、本編の深い内容は伝えきれませんが…。

映画「ひとくず」の詳しい解説はこちら

***

「児童虐待」を描く映画作品は、これまでにもたくさんありました。どちらかというと、虐待のリアルに迫ろうとする作品が多く、その「悲惨さ」ばかりが強調される感じがして、「うーん」って思うところも多々ありました。

でも、この作品は、「リアルの向こう側」を必死に描こうとしているような気がして、とても質の高い作品でありました。監督自身、かつて父親の母親へのDVを見て育った過去をもっていたからだと思いますが、「その先」を強く感じる作品になっていました。映画の冒頭では、「リアルさ」が強調されていますが、「空き巣」が登場する場面以降、どんどん話が進展していき、ドラマティックに展開していくのです。

露骨に「子ども」を描く作品ではなく、どちらかというと主人公?の金田(上西)と鞠(まり、子ども)の母親の北村凛(古川)とのぶつかり合い(対決)を通じて、「家族とは何か?」を問い続ける作品になっています。

子を育てる親(特に母親)の状況は本当にそれぞれです。豊かで愛情のある両親という状況もあれば、片親で貧しくてロクでもない男に振り回される母親という状況もあります。一人(あるいは夫婦二人)で、誰の助けも必要なく、ゆうゆうと子育てができる人もいれば、誰かの助け(介入)がなければ、子を殺してしまいかねない人もいます。

この映画の最大の凄みは、金田にも、鞠にも、母親にも、「助けてくれる人」がいてくれたところです。詳しくは書きませんが、危機的な状況で誰かが入り込んでくるんです。ここに、「子育てには、親以外の誰かが必要だ」というとても大事なメッセージが潜んでいるような気がします。

その助けてくれる人の中に、「教員」や「児童相談所職員」も(脇役的に)います。好意的に言えば、「間接的にでも、こういう危機的状況に必要な存在だ」ということになりますが、やや否定的に見れば、「結局、お役所的な対応しかできていない!」ということにもなりそうです。この「教師」や「児童相談所職員」の描き方も、お見事だったと僕は思いました(詳しくは是非映画を見てほしいと思います。特に、教育や福祉や保育などに関わる人には是非とも見ていただきたいな、と)。

むしろ、「助けとなる人」は、そういう専門家的な人ではない「その外部の人たち」だ、ということが、この映画の隠れたメッセージになっているように思いました。まさに「金田匡郎(まさお)そのもの」が、そういう存在でした。いくら「専門家」が増えたところで、結局は「お役所仕事」でしかない。もちろん専門家は意味がないとは言いませんが、それだけではダメなんだ、ということが暗に訴えられているように思いました。

また、映画の途中に、「焼肉店」でのワンシーンがあるのですが、そのシーンがとっても印象的でした。経済的にも愛情的にも豊かな家族のやりとりと、金田と鞠と凛のやりとりが非常に示唆的で寓話的で見入ってしまいました。一口に「子ども」と言っても、その置かれている状況はひとりひとり全く違っているんだ、と改めて教えられた気がしました。

ところどころに「考えさせる箇所」がいっぱいあって、「児童虐待」に関わる全ての人に「問い」を投げかけているような映画でもありました。

そして、後半~終盤にかけては、「いかにして虐待は克服されうるのか」「どうしたら虐待は克服されたと言えるのか」というテーマが加わっていくような感じでした。「母親(親)はどうしたら変われるのか」「子どもはどのようにして過去を乗り越えるのか」「他人でも親の代わりになるのかどうか」…、児童福祉や社会的養護の実践的な問いがいくつも入り込んでいるように思いました。…人を追い詰めるのも人であるなら、人を救うのもやっぱり人なんだな、、、とも。

あと、蛇足ですが、いわゆる「悪役」の俳優さんがどれも「クズ過ぎ」で、ムカつきました(苦笑)。特に木下ほうかさん(寺田)がとってもムカつきました(苦笑)。あと、税所篤彦さんもホント、悪役として完璧で、本当にムカムカしました(すみません…💦)。「演技」だと分かっていても、本当にクズ過ぎて、、、(でも、きっとそんな「クズ」な人も、また過酷な環境で育ったんだと思いますが…)

そんなわけで、この作品は、もう絶対に見てもらいたいなって思いました(特に「こども」にかかわる仕事をしている人には!!)。

上西監督のインタビュー記事はこちら


なお、千葉では、千葉県内でも最も渋い映画館の一つである「千葉劇場」で公開されています!

(県内ではこの千葉劇場のみ!)

しかも、一日一回のみの上映となります。12時20分~です

千葉劇場のオフィシャルHPはこちら

ラーメンあや、ラーメン二郎千葉店のすぐ近くです!

千葉劇場は、いわゆるシネコン(複合映画館)と違って、フロアが一つしかないクラシックな映画館なんです。上映される映画もいつもマニアックというかコアな作品ばかりで、千葉で最も大事にしなければならない映画館だと思っています。

千葉の人で、こどもに関わる仕事をしている人は、是非、千葉劇場に行ってほしいなって思います。この映画もいつまでやるか分からないので…。


それから、、、

「ひとくず」の主題歌が本当に本当に素敵だったので、、、、

思わず、CDも買ってしまいました(n*´ω`*n)。

パンフレット+CDで、合計3000円也。両方買って、応援したい!って思ったので…。

そのCDがこちら!

主題歌「Hitokuzu」を歌うのは、吉村ビソーさんという方。

歌詞は監督の上西さん×吉村ビソーさん。

歌詞も本当にいいんですけど、このビソーさんの「お声」がとても素晴らしいんです。

関西の方かな? なんか僕の愛する上田正樹さんに通じる「臭さ」がある感じで…。

吉村さんの楽曲にも惚れてしまいましたね…(n*´ω`*n)。

是非、聴いてもらいたいなって願います。

この曲、すごくすごく素敵でいい曲ですけど、、、

僕が作ったこの曲も、施設の子と作った曲で、是非聴いてほしいところでございますm(__)m

僕も非力ながら、これからも「児童虐待」「母子支援」「ケア論」を探求し続けたいと思います。すべての子どもが安全に安心して一番大切な幼少期を過ごせるその日まで…

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