30度、31度、33度、34度、35度。。。。
この国としては珍しいような夏日が続いている。
土手を覆う野草もすっかり焼けて景色の中の配色が変わった。しかし枯れ草色を背景に淡い青紫のチコリの花とマーガレットの白い花がちりばめられているのもまた美しい。
太陽の日差しは尖っているので痛い。
日陰を探しながら道を歩く。
老人ホームの"絵の時間"を手伝いに向かう道すがらは影はほとんど無く、日差しに背中を突かれて思わず早足になった。体中から汗が噴出す。
午後の脳味噌も蒸しあがってしまいそうな一番暑い時間帯だった。
"絵の時間"が始まって半時ほどたった頃、F婦人は急に落ち着きが無くなり「もう帰るわ、家に。。。両親の家に帰らなきゃ、すぐそこにあるのよ」と言って描いていた蝶の絵を放り出して立ち上がった。
彼女はふと"過去のある時点"に帰ってしまっていたのだ。
「帰る場所」
私なら、どこに「帰る」。。。と言うだろうか?