金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

実効支配の論理

2012年08月24日 | 国際・政治

日本海の島の領有権に関して、韓国・中国との関係が急速に悪化している。竹島と尖閣諸島では違う点も多いが、幾つかの共通点もある。一つは3年前に民主党が政権を取った時、外交戦略をアメリカ重視からアジア重視に転換すると打ち出したことだ。今の状況下では寝言のような話だが。

マキャベリは数百年前に「謙譲の美徳をもってすれば相手の尊大さに勝てると信じるものは誤りをおかすはめに陥る」という言葉をもってこのような甘い考えに釘をさしている。

政権取得後の民主党外交は結局「長年の盟友である米国との信頼を大きく傷付け、その代償として中国からは期待したメリットを得ることが出来ないどころか、尖閣諸島問題を含めて、demandingな姿勢を高めさせた」ことに終わった。

尖閣諸島は日本が実効支配しているし、日本が「先占」していることも事実である、と私は思っている。ここでいう「先占」とは「国家が無主地を領有意思を持って占有」することである。

尖閣諸島については、1884年に古賀辰四郎という人がアホウドリの羽毛の採取のため、沖縄県に借地願いを出し、80年台後半には事業を開始した。日本の領土であることを示す国標を建てる件については、沖縄県は1885年当時は中国との関係を考慮し、慎重な姿勢を取っていたが、日清戦争をはさんで1995年に内閣は沖縄県に標杭を建てることを支持した。

領土を巡る争いでは「先に発見し、領有を宣言する」先占と「現実にその土地を支配している」実効支配が競合する場合、いずれが優先するか?ということについては、国際司法上「国家機能の平和的・継続的発現」を重視する傾向が最近強まっていると聞く。

日本は竹島問題について国際司法裁判所に提訴する方針だが、今のところ応じない見込みだ。何故なら韓国は国際司法裁判所で勝訴する自信がないからだ、と思われる。それは韓国は竹島を「実効支配」していると主張するするが~そもそも平和的な支配であるかどうか問題だが~、「先占」という歴史的事実については弱いと判断しているからだ。

仮に将来韓国が提訴に応じる(あるいは韓国から提訴してくる)時があるとすれば、それは竹島の実効支配の有効性が国際的に認められた、と判断した時なのだろう。

尖閣諸島は実効支配するが、竹島や北方領土は実効支配されている日本にとって単純で表面的な実効支配優先の論理は危険だ。少なくとも支配の開始が「平和的」でないものは、「実効」支配ではない、と主張するべきだろう。しかしやはり現実的に支配していることは重い、と考えねばなるまい。

「謙譲の美徳をもってすれば、相手の尊大さに勝てる」などと思ってはいけないのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする