過去1ヶ月程度の間で、私のブログの中で一番読まれたエントリーは「セゾン投信、様々」である。セゾン投信(バンガード・グローバル・インデックスファンド)は世界最大のインデックスファンド・バンガードに投資しているが、円安時のチョコッと利食いすることで、パフォーマンスを向上させることができる・・・・という話を書いたものだ。
もっとも「チョコッと利食いをする」ことを、長期運用の伝道者であるバンガード投信の創始者ジョン・ボーゲルが推奨するとは思えない。ボーゲル流に考えると「利食いができる」と考えることも、浅知恵なのだろうが。
さてそのジョン・ボーゲル、83歳になったそうだが、最近11冊目の本The clush of the culturesを書いて、短期的な利益を狙う「投機」が横行する昨今の傾向に強い警鐘を鳴らしている。
The clush of the culturesは読んでいないが、ボーゲルの主張に関する記事がニューヨーク・タイムズに出ていた。記事によると、彼は「短期の投機的な取引を抑制するような税制の強化」「レバレッジ(借入)の制限」「金融デリバティブの透明性の向上」「金融犯罪に対する罰則の強化」などを主張しているが、とりわけ力点を置いているのが、Fiduciary standardの統合だ。
Fiduciary standardは日本語に直訳すると「受託者基準」だが、ボーゲルはFiduciaryとは「総てのマネーマネージャーにとって、顧客の利益を第一とすることだ」と言っているので、忠実義務基準というべきだ。
ここ数年の金融危機は、資産運用者等の金融機関が、顧客の利益よりも自己の儲けを優先したことにより引き起こされたものが大きい。
ボーグルの盟友である元連銀チェアマン・ボルカーも「忠実義務基準の統一」を強く支持している。恐らく忠実義務の強化は、米国のみならず日欧でも重要な課題になるだろう。
余談ながらボルカー氏は過去25年で金融機関の最大のイノベーションはATMの開発で、過去40年まで遡るとボーグルのインデックスファンドの創設が入る、と述べている。これは辛口に過ぎる批評だと思うが。
ボーゲルは投資環境は悪いけれど「低コストの分散投資を続けなさい」と主張している。市場の透明性を信じて、コツコツと投資を続ける人々にとって、インサイダーなど不正行為で金儲けを図る連中は許しがたい悪人だ。ローコスト・インデックス投資の創始者ボーゲルが、6度の心臓発作と1度の心臓移植という健康状態にもかかわらず、市場改革に力を入れようとしていることは賞賛に値する、というべきだろう。