本日(8月23日)の日経朝刊が金融機関の投信販売に対する顧客の不満をまとめて記事にしていた。顧客の最大の不満は「販売手数料の高さ」で二番目が「購入後の情報提供の少なさ」である。三番目は「リスクの説明が不十分」ということだ。気になるのはその記事の中で「先週後半から投信の販売会社には『円高はどこまで進むのか』『株価下落はどこで止まるのか』との問い合わせが相次いだ」と出ていることだ。顧客からの照会が多いのは事実だろうが、この様な質問に販売会社が断定的な回答が出来ないこともキチンと説明しておいた方が良いだろう。そもそも将来の為替や株価について誰もどうなると断言できないし、法律でも断定的判断を与えることは禁止されている。
金融商品取引法第38条2項は「顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」を禁止している。従って先程日経新聞に出ていたような質問に販売会社が断定的な答を出すことはない。
ところで余談になるが、上で引用した条文は第一法規㈱のサイトで見たものだ。同サイトでは無料の会員登録を受け付けており、会員になると法令の全文を閲覧することができる。便利な世の中になったものだ。
投信の話に戻ると高い販売手数料を取る銀行や証券会社は「資産形成やリスク説明の費用」と言っている。それはそのとおりで否定はしないが、そもそもリスクについて投資上の意味のある説明ができるかどうかという点について疑問はある。リスクとは想定したリターンからの乖離度で標準偏差等で表すが、今般のサブプライム危機の時には過去のデータをベースにした絶対安全圏を突き抜けるような事象が頻発した。リスクとはそれ程コントロールしにくいし、また一般顧客には理解し難いものだろう。
そうであれば高い金を払って説明を受けるよりは、販売手数料のかからない直販ファンドを買うという投資行動にも合理性はあるかもしれない。投信において確かなことは収益は不確実だが、手数料は確実に取られるということだからだ。