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映画「風立ちぬ」、牛が引く戦闘機に日本を見た

2013年07月25日 | 映画

過日今話題の「風立ちぬ」を見た。清々しい良い映画だったと思う。映画全般の評価は、詳しい人に任せるとして、私が興味を持ったシーンは、二郎たちが作った戦闘機が牛が引く荷車で飛行場に運ばれていくシーンだ。

欧米列強に並ぶべく独自に戦闘機を開発する設計力とそれに見合う運搬力を持たないというアンバランス。このシーンに宮崎監督のどれほどの思い入れがあるのかは知らないが私は第二次大戦における日本の戦争突入の原因と敗因を見事に象徴していると感じた。

ゼロ戦、酸素魚雷など部分的には日本は優れた兵器を開発した。当時から戦術的には過去の遺物となっていたが戦艦大和や武蔵も当時のハイテクのかたまりだった。この一部の優れた兵器を軍部が国民に喧伝して「日本は強い、米英とも戦える」という神話が醸成され多くの国民がそれに酔った。そして神話を語っている内に、冷静であるべき指揮官まで「敵を知り己を知る」ことを忘れてしまった。それが戦争突入の原因である。

だが優れた兵器はそれを運用する基盤がなくてはならない。南洋の島で日本軍がつるはしで土を起こし、もっこで土を運んでいる時、米軍はブルドーザーで一気に飛行場を建設していった。これでは日本の飛行機の性能が優秀だとしても運用力で太刀打ちすることはできない。

情報と兵站の軽視、はっきりいうと無視が日本の敗因である。武道には「技は力のうちにあり」という言葉があるが、部分的に優れた技術があっても、牛に戦闘機を引かせているような国力では、米国とまともに戦うことは無理だったと示唆するシーンだったと私は感じている。

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