金融そして時々山

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最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国、暴動というリスク

2006年12月21日 | 国際・政治

中国の株式相場が戻ってきた。私も香港ハンセン銘柄に投資しているので、中国のことは気になり時々ウオール・ストリート・ジャーナルなどを読んでいる。というのは日本の新聞では全く中国の正しい情報が入らないからだ。もっともウオール・ストリート・ジャーナルなどの記事を読んで真実が分かるというとこれは疑問だ。つまりそれらの新聞は事実を報道していても、事実の単純な累積が真実になるとは限らないからだ。幾多の事実の山から真相を見つけ出すことは容易いことではない。そこに中国を理解する難しさと面白さがある・・・・・。それはまさに投資という行為の持つ本源的な面白さでもあるだろう。

最近読んだウオール・ストリート・ジャーナルでは香港の近く~といっても地図で見ると100km以上は離れているが~のDongzhou東洲というところで起きた暴動の話を報じていた。この記事の面白いところは事件の真相を求めてウオール・ストリート・ジャーナルが電話で東洲の住民に話を聞いているところだ。この取材精神、これがアメリカのマスコミの良いところだろう。それにしても中国モノの記事を読むのは手間を食う。というのは英語で書かれた地名や人名を中国語(といっても日本で使う漢字)に置き換えて理解する必要があるからだ。

さて東洲という人口数百人の小さな漁村で起きた事件というのはこういうことだ。去る11月中旬暴動を起こした数名の村人は役所を襲い、8名の下級官吏を捕まえ近所の寺院に彼等を閉じ込めた。というといかにも村人が暴挙を行なった様だがこれには原因があり、話は昨年の12月に遡る。

昨年12月数百人の村人は政府が農地を収容して発電所を建設することに抗議して道路の角に集まった。政府は~金額は不明だが~補償金を支払うと提案したが、農民達は金額が小さすぎると拒絶した。ある住民はフリーアジア放送(米国政府がスポンサーの民間放送)に「トイレットペーパーを買うにも足りない」補償金だと告げている。

住民と政府の衝突は流血に至った。新華社Xinhuaによると170名以上の村人がナイフや杖、ダイナマイト、火炎瓶で警察隊を攻撃し、警察隊はこれに発砲で対応した。新華社によると3人が死に5人が怪我をした。

余談であるが、インターネットで「東洲」を検索するとこの事件に関する日本語サイトにも出会うことができる。私は今まで知らなかったが人権上でも問題になっている事件の様だ。

この12月の抗議活動の後も村人達は「金を返せ。生活を返せ。」という登り旗を立てて政府に抗議していた。今年の11月初めに地方警察はChen Qian(銭辰?)という50代の男を抵抗勢力を組織したとがで逮捕した。11月9日に警察はChenを拘置所に入れたが、これが村人達の抗議行動に火をつけた。そして冒頭の8人の下級官吏の村人が拘束した事件につながっていく。村人達をChenの釈放を求めて官吏を捕虜にしたのである。そして約1週間後の夜銃を持ち犬を連れた数十人の警察官により官吏達は開放された。

以上が大体の話だが、小説的で結構面白く読める記事だった。何年か何十年後かに「水滸伝」のような小説が出来るかもしれないなどと想像させる話だ。

全体でどれだけの抗議行動があるのか数字を入手することはできないが、政府は10年前には約1万件だった「大衆事件」~地方での抗議活動を含むカテゴリーだが~が2004年には7万4千件に増加していると報告している。この主な原因は地方政府による土地の収用が主な原因である。ここ数年地方政府は農地に何であれ金を生むもの~工場、ハイウエイ、住宅開発等~を建設すると主張している。また地方官僚が開発業者から多額の金を得ても土地を使用している農民には僅かな補償金しか渡さないので抗議や暴動が起きている。それにしても中国の農民は共産主義革命で多少の幸福を手に入れることができたのだろうか?と疑問を感じさせる話だ。

ウオール・ストリート・ジャーナルによるといまのところ、各地の暴動の間に横のつながりはないということだ。私は中国共産党が過去の王朝のように農民の暴動で倒れると思うほど単純な循環史観を持っている訳ではないが、農民の暴動が~特にそれが大規模になると~中国のリスクの一つであることにはかわりはない。

ついでに中国のリスクを言えば、漢民族以外の少数民族の自治・独立問題、資源特に水資源の問題などがある。中国という巨大な市場の魅力とリスクの真実を捉えるというのは中々大変なことである。

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