金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

プロでも難しいマイナンバー制度の実務

2016年02月10日 | ニュース

今月下旬に千葉県の某市でシニアの方向けにマイナンバーの講演を行う予定で、メインテーマは「マイナンバーと個人情報」にするつもりです。

また昨日(2月9日)マイナンバー制度を口実に東海地方の80代の女性が数千万円の詐欺被害にあったというニュースが流れていますから、詐欺被害防止も大きなテーマになると思います。

詐欺被害については「詐欺者が被害者のマイナンバーを聞きだし、詐欺グループの別のメンバーがマイナンバーを漏らしたから罪になる」という脅しをかけて金銭を搾取するケースもあります。

まず聴講者の方に強調しておきたいことは「本人の過失によるマイナンバー漏えいは犯罪にならない」ということです。番号法は罰則規定を設けていますが、「故意」が構成要件になっていますので、個人がたまたま過失でマイナンバーを漏らしたとしても犯罪にはなりません。

「個人情報」という言葉も「法律用語」として使われているのか、一般的な用語として使われているのかも分けて考える必要があります。

個人情報保護法でいう個人情報とは、生存する個人を特定する氏名・生年月日などを指します。いわばこれは封筒の表書きです。

しかし個人情報という言葉から、個人の健康・資産・信条などに関する情報~封筒の中身~を想像する人もいるかもしれません。

マイナンバーでは個人情報保護法でいう「個人情報」にマイナンバーを加えた情報を「特定個人情報」と呼んでいますが、これも封筒の表書きです。

ですから仮に封筒の表書きが漏えいしたとしても、それだけで封筒の中身を見ることはできません。むしろポイントは一般的な用語としての「個人情報」~総務省のHPでは「重要な個人情報」と言っています~つまり封筒の中身(センシティブ情報)がどのように保護されているか?を理解しておくことでしょう。

ところでセミナーを行う某市の窓口から「支払調書を作成するのに必要なのでマイナンバーを証明する通知カード等のコピーを送ってほしい」という連絡がありましたので、手続きをしました。

手続をしてから気がついたのですが、「支払調書(この場合源泉徴収税)にマイナンバーを記載する必要があるのは同一人に支払う年間報酬が5万円を超える場合」なのですね。残念ながら今回の報酬は5万円未満ですし、それ以降の講演も予定されていないので、本当はマイナンバーを控えておく必要ななかったのでしょうね。

今回某市は「個人番号関係事務実施者」として税務署(個人番号利用事務実施者)に支払調書を提出する訳ですが、市は社会保障等の事務では「個人番号利用事務実施者」にもなります。いわばプロなのですが、細かい運用についてはまだまだ不慣れなところがあると感じた次第です。

プロでも不慣れなマイナンバー制度ですから個人の方が細かいところまで分らなくても当然です。ですから個人番号の提出を求められた場合、多少でも不安に感じたら「個人番号の提出を求める根拠」を相手に確認しましょう。個人番号が求められる場合は法律で決まっていますので、根拠なく求められることはありません。

また税務署に提出する書類に個人番号の記載がない(あるいは誤記)場合でも税法上の罰則規定はありません。

ただし実務的には「個人番号関係事務実施者」として顧客からマイナンバーを収集する証券会社等はマイナンバーの申告がないと新規契約を受け付けていないようです。スムーズな社会生活を送るためには、合法的なマイナンバー申告の依頼には協力した方が良いと思います。

コメント (1)
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