インドが好調だ。日本では余り話題になっていなかったが、インドではコモンウエルス・ゲームという英連邦72カ国が参加する4年に1度のスポーツ大会が始めて開催された。開会式は3日に行われたが、ウォールストリートジャーナルWSJによると「おおむね滞りなく行われ、大会準備時の懸念を一部なりとも払拭する効果があった」ということだ。
話はわき道にそれるが最近私はWSJの日本語ヘッドラインをツイッターで読んでいる。「大会無事開催」というニュースもこのツイッターで読んだ。一部有料の記事もあるが、無料の記事だけ読んでいても結構面白い。国際情勢や金融に関心のある人にはお奨めだ。
さてインドのコモンウエルス大会に話を戻すと、先週つまり大会開催直前に書かれたエコノミスト誌の記事は「大きなスポーツイベントはホスト国について何か重要なことを告げると信じている人がいる。だが恐らくこの大会はshamble(散らかし放題の場所)なものとして記憶されるだろう。インドは二流国に見えるかもしれない」と警鐘を鳴らしていた。
エコノミスト誌の記事に主旨は、スポーツ大会の準備や運営について、インドは2008年に上海オリンピックを成功させた中国に較べると見劣りするかもしれない~準備の遅れで期日に開催できるかどうか懸念されたこともあった~けれどインドの経済は順調に拡大していて、経済成長率で2013年までに中国を上回るというものだ。
また何人かのエコノミストは向こう25年間で他の主な主要国より成長率が高いと考えている。
エコノミスト誌がインドが中国を成長率で上回るだろうと考える理由は2つある。一つはデモグラフィー(人口動態)だ。中国ではまもなく労働人口の老齢化が始まり、人口が減少し始める。これは一人っ子政策の影響だ。
一方インドでもインディラ・ガンジーが人口抑制策を導入しようとしたが、人々の反対で頓挫し、インドは少子化政策を採らなかった。その結果インドは今後Demographic dividendを受けることができる。Demographic dividendは直訳すると「人口動態配当」で、総人口に占める就業年齢層の比率が上昇することで経済成長が促進される現象を指す。「人口ボーナス」と同じ概念と考えて良いだろう。
もう一つの理由はデモクラシー(民主主義)だ。インドには中国のように強い権力を持った中央政府がない。だからスポーツ大会の準備を進める場合など中国のように強権発動で工事を進めることができない。だがインドの民間企業は活力がある。
エコノミスト誌は中国かインドかどちらでビジネスを行うか選択を求められると大部分の外国人投資家は恐らく(今のところ)中国を選ぶだろうと述べる。だが世界経済がさらに知識集約型になっているので、インドの優位性は高まっていると結んでいる。
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好調といえばインドの株価も好調だ。先週金曜日Sensex指数は20,445ポイントに達した。これは過去33ヶ月間の最高値。Sensexの最高値は2008年1月11日の20,827ポイントだったので、最高値更新も視野に入ってきた。もっとも現在の相場は外国資本流入による流動性相場で上昇速度が速過ぎるだけにちょっとしたきっかけで一旦値を崩す可能性は否定できない。
しかしデモグラフィーとデモクラシーという二つの「D」を牽引力とするインドの成長は期待できる。たとえコモンウエルス大会で少々の失敗があったとしても、インドの潜在力を見誤ってはいけないというエコノミスト誌のアドバイスを大事にしたいと私は考えている。