金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国は迎撃ミサイルを発射するか?

2009年03月26日 | 国際・政治

今日(3月26日)北朝鮮がテポドン2と思われる長距離ミサイルを発射台に設置したことがスパイ衛星で観測されたというニュースがマスコミを賑わせていた。発射台に据え付けられたミサイルは技術的には燃料を注入し3,4日で発射可能となるので、北朝鮮が宣告している4月4日から8日の間にミサイルが発射される可能性が高まっている。北朝鮮では4月9日に国会が召集され金正日の再選が予定されているので、国威発揚のためにミサイル実験を成功させたいのだろう。

ちょっと興味があることはミサイルが発射された場合、米国がミサイル防衛システムを使って北朝鮮のミサイルを迎撃するかどうかという点だ。この点についてニューヨーク・タイムズはソウルの専門家の「最近アメリカのテレビ・ジャーナリスト2人が不法越境入国を理由に北朝鮮に逮捕されている。彼等の釈放を勝ち取るためにも迎撃することはほとんどありえない」という意見を紹介している。

それはそれとして私はアメリカのミサイル防衛システムの信頼性の問題から、ミサイルが米国本土にでも飛ばない限り、米軍・自衛隊とも迎撃ミサイルを発射することはないだろうと考えている。太平洋に飛ぶ北朝鮮のミサイルを迎撃するのはイージス艦からの防衛ミサイルである。この防衛ミサイルのテスト結果は必ずしも芳しいものではない。2002年から20回のテストが行われその内4回は失敗している。またテストは必ずしも実戦的なものではないので、実戦では成功確率はもっと低いという専門家の指摘もある。米国はレーガン大統領のスターウオーズ演説以来ミサイル防衛システムに1200億ドルという大金を投じてきた。しかしその実効性については相当議論がある。

今回米国(及び日本の自衛隊)がミサイル防衛システムから迎撃ミサイルを発射して迎撃できなかった場合、米国が失うものは極めて大きい。またミサイル防衛を推進しているミサイル防衛局に対する批判が高まり彼等は2013年までに予定している500億ドルという予算を得られなくなる可能性が高い。当事者としても現時点で迎撃ミサイルの本番使用はリスクが高いと見ているのではないだろうか?

勿論防衛システムが北朝鮮のミサイル迎撃に成功した場合、北朝鮮は対米交渉のレバレッジとミサイル輸出というビジネスチャンスを失う可能性が高い。しかしながら米国にとって迎撃失敗により失うものは、成功により得るものよりもはるかに大きいので、国際的緊張を高めることになる迎撃ミサイルを発射する可能性はきわめて低いだろう。

まあこの程度のことは、金正日も考えるので北朝鮮がミサイルを発射する可能性は高そうだ。

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アメリカ人の貯蓄急増の意味

2009年03月26日 | 社会・経済

不況と不安定な株式相場が続く中、アメリカ人が預金を増やしていることは前から知っていたが、具体的な数字についてファイナンシャルタイムズが報じていた。

米連銀の資料によると年初から3月9日までの間に個人銀行預金は2,460億ドル(約24兆円)増加した。これは昨年1年間の個人預金増加額2,290億ドルより大きい。この個人預金の原資がどこかははっきりしないが、一部は株式や株式投信からシフトしている。1,2月に株式投信から200億ドルの資金が流出した。

ただし歴史的に見ると株式相場の悪化局面でもっと大きく資金が預金にシフトしている。2002年のITバブル崩壊時は4,650億ドルの資金が預金に流れ込んだ。どうして今回の資金シフトはそれよりも小さいのか?ということについてFTは解釈をおこなっていない。従って私の推量なのだが、株価の下落が急過ぎて売りのタイミングを失した人が多いのかもしれない。

私は注目するべきと思うことは、アメリカ人の個人預金の増加が持続するかどうかである。個人預金が増加するということは「消費が抑制される」ということと「株式市場」に個人資金が流入しないという二つの面がある。

「消費が抑制される」ということはモノが売れないということだ。モノが売れないということは、日本や中国等アジア諸国からの輸出が増えないということだ。もしアメリカ人が浪費家から倹約者に宗旨替えしたのであれば、日本やアジアの輸出産業は本格的にハンドルを切りなおす必要がある。

「株式市場」に個人資金が流入しないということは、株式を買い上げる力が弱いということだ。米国株はシティが今年に入って業績が好転し始めたという社員向けアナウンスをしてから上昇が続いている。不良資産買取プログラムが具体化してきたことも好材料。住宅市場にもプラス材料が少し見えた。

しかしニューヨーク市場ではプロの投機家達は株のショートポジションを積み上げている。つまりこの上げ相場は長続きしないと考えているのだ。銀行預金と国債に資金をシフトしている個人投資家も同じビューを持っているのだろう。

FTは相場が不安定な時はReturn on princialよりもReturn of principalに人々は懸念するというある調査機関の責任者の言葉を紹介していた。投資利回りよりも元本の安全性が気になるということだ。

「アメリカ人は金融リテラシーが高い」などと知ったかぶりをしていた日本のファイナンシャル・プランナーと称する無責任な連中がいたが、何のことはない、洋の東西、似た様なものということだろう。

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