今日(3月26日)北朝鮮がテポドン2と思われる長距離ミサイルを発射台に設置したことがスパイ衛星で観測されたというニュースがマスコミを賑わせていた。発射台に据え付けられたミサイルは技術的には燃料を注入し3,4日で発射可能となるので、北朝鮮が宣告している4月4日から8日の間にミサイルが発射される可能性が高まっている。北朝鮮では4月9日に国会が召集され金正日の再選が予定されているので、国威発揚のためにミサイル実験を成功させたいのだろう。
ちょっと興味があることはミサイルが発射された場合、米国がミサイル防衛システムを使って北朝鮮のミサイルを迎撃するかどうかという点だ。この点についてニューヨーク・タイムズはソウルの専門家の「最近アメリカのテレビ・ジャーナリスト2人が不法越境入国を理由に北朝鮮に逮捕されている。彼等の釈放を勝ち取るためにも迎撃することはほとんどありえない」という意見を紹介している。
それはそれとして私はアメリカのミサイル防衛システムの信頼性の問題から、ミサイルが米国本土にでも飛ばない限り、米軍・自衛隊とも迎撃ミサイルを発射することはないだろうと考えている。太平洋に飛ぶ北朝鮮のミサイルを迎撃するのはイージス艦からの防衛ミサイルである。この防衛ミサイルのテスト結果は必ずしも芳しいものではない。2002年から20回のテストが行われその内4回は失敗している。またテストは必ずしも実戦的なものではないので、実戦では成功確率はもっと低いという専門家の指摘もある。米国はレーガン大統領のスターウオーズ演説以来ミサイル防衛システムに1200億ドルという大金を投じてきた。しかしその実効性については相当議論がある。
今回米国(及び日本の自衛隊)がミサイル防衛システムから迎撃ミサイルを発射して迎撃できなかった場合、米国が失うものは極めて大きい。またミサイル防衛を推進しているミサイル防衛局に対する批判が高まり彼等は2013年までに予定している500億ドルという予算を得られなくなる可能性が高い。当事者としても現時点で迎撃ミサイルの本番使用はリスクが高いと見ているのではないだろうか?
勿論防衛システムが北朝鮮のミサイル迎撃に成功した場合、北朝鮮は対米交渉のレバレッジとミサイル輸出というビジネスチャンスを失う可能性が高い。しかしながら米国にとって迎撃失敗により失うものは、成功により得るものよりもはるかに大きいので、国際的緊張を高めることになる迎撃ミサイルを発射する可能性はきわめて低いだろう。
まあこの程度のことは、金正日も考えるので北朝鮮がミサイルを発射する可能性は高そうだ。