金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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中国人はスパイ好き

2009年03月30日 | デジタル・インターネット

「中国人はスパイ好き」などというと、中国人や中国びいきの人に非難されるかもしれない(私のブログを中国人が読んでいるとは思わないが)。もっとも私はスパイ活動が悪いという訳ではない。中国が生んだ世界最高の戦略書・孫子は用間編で「名君賢将の動きて人に勝ち、成功の衆に出ずる所以(ゆえん)の者は先知すればなり・・・・上智を以って間となす者にして必ず大功を成す」と述べている。大意は「名君や賢い将軍が人に勝つのは先に相手の情報をしるからである。彼等は賢い人間をスパイとして使うから大きな手柄を立てるのである」ということだ。孫子の兵法の最終章が用間(間は間者の間でスパイのこと)であることは、孫子が諜報活動を重視していることを表していて誠に興味深い。

さてニューヨーク・タイムズによるとダライ・ラマ事務所の依頼を受けたカナダ・トロント大学の研究機関が調査したところ、ダライ・ラマ事務所を含む世界103カ国1,295のコンピュータが中国に拠点を置くハッカーによって侵入されていることが分かった。ダライ・ラマ事務所は何者かによりコンピュータ・システムが侵入されている兆候があったので、トロント大学の調査機関に調査を依頼したということだ。この侵入者はゴースト(幽霊)・ネットと呼ばれている。

無差別的に他人のコンピュータに侵入して、銀行口座情報をなどを「盗み取る」行為はフィッシングといわれている。フィッシングは元々は魚釣りのFishingだったが、今ではPhisingと綴られている。これは魚釣りと洗練されるという意味のSophisticateの掛詞だ。これに対し今回のゴースト・ネットのように特定のターゲットを狙った侵入・情報詐取行為はクジラ獲りを意味するWhalingという言葉で呼ばれている。

トロント大学の研究機関は中国政府がゴースト・ネットに関与していると確実にいうことはできないと述べている。スパイ行為が営利目的で行われているか「愛国的ハッカー」という民間人によって行われている可能性もあるからだ。またニューヨークの中国領事館も関与を否定している。彼等は「中国政府はサイバー犯罪に反対だし厳密に禁止している」と述べている。

ゴースト・ネットが主にターゲットにしているのは、南アジアや東南アジアの政府機関である。ニューヨーク・タイムズは地図上の○の大きさで侵入されているコンピュータの数を示していた。それによると台湾・ベトナム・ブータン・インド・米国の○が大きかった(日本は小さい)。米国政府のコンピュータがゴースト・ネットに侵入された証拠はないが、ナトーのコンピュータはスパイに半日観察された形跡があるし、ワシントンのインド大使館のコンピュータも侵入されている。

ニューヨーク・タイムズはスパイ活動が現実の政治に与える影響について次のような例を示していた。「例えばダライ・ラマ事務所がある外国の外交官を招聘するメールを送ったとする。スパイはそのメールを読み、外交官のいる政府に対し要請を受けないように働きかけをする。」

この記事は多くの読者の関心を引きつけた記事だった。少なくとも北朝鮮のミサイル発射準備に関する記事よりも多くの関心を引いていた。目に見えるミサイルよりも、目に見えないサイバー・スパイの方が影響力が強いということだ。孫子のいうスパイ活動の重要性は今もなお生きているということだろう。

コメント (1)
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