追憶の彼方。

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スマイリング・シンデレラ(渋野日向子)

2019年08月24日 | スポーツ

スマイリング・シンデレラ(渋野日向子)

ゴルフの全英女子オープンで、昨年7月プロテストに合格したばかり、プロほやほやの渋野日向子(20歳、RSK山陽放送所属)が1977年に全米女子プロで優勝した樋口久子さん以来42年ぶりとなる日本人史上2人目のメジャー制覇の快挙をやってのけた。
現在日本の女子プロゴルフは「黄金世代」や「プラチナ世代」と呼ばれる20歳前後の若手の活躍で大いに盛り上がっているが、この素地を作ったのは宮里藍である。
1998年韓国の「朴セリ」が全米女子オープンを史上最年少記録で優勝しその後も米ツアーで活躍、これが起爆剤となって韓国に一気にゴルフブームが起こって、『朴セリチルドレン』と呼ばれる有力選手を生み出した。今アメリカ・日本で活躍する韓国の女子プロ達は正にそのチルドレンなのである。
同様なことが日本でも起こりつつある。大活躍中の20歳前後の女子プロは異口同音に「宮里を尊敬している」「藍ちゃんに憧れて女子プロを目指した」と公言する。正に「宮里チルドレン、藍ちゃんチルドレン」そのものである。
このチルドレンが生まれる少し前頃からゴルフ界で中学生・宮里の名前が聞かれるようになっていたが、彼女が東北高校2年の時「ダイキンオーキッド・アマチュアゴルフ選手権」で優勝、「釜山アジア大会」で金メダルを獲得し、更にLPGAツアーの「フジサンケイレディスクラシック」で優勝争いに加わるなど(最終順位4位)、兄優作と共に俄然注目を集めた。高校3年生になると「日本女子アマチュアゴルフ選手権競技」で優勝したが、極め付きは東北高が所在する宮城県で開催された「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」で優勝、10月9日にプロ宣言をして、史上初の高校生プロゴルファーとなったことである。本格参戦となった2004年緒戦で優勝、年間5勝を挙げ獲得賞金が1億円を突破した。2005年2月第1回ワールドカップ女子ゴルフ(南アフリカ)大会に北田瑠衣とペアーで日本代表として出場し、韓国・アメリカ・オーストラリアなどの強豪国を抑えて劇的優勝、日本中を狂喜させた。
その後の内外での活躍は目を見張るものがあったが、何よりも彼女の大きな魅力は、その聡明さにもあるような気がする。彼女の卓越した発信力、ボキャブラリーの豊富さと理路整然としスポーツ選手らしいテキパキとした語り口に加え、彼女の言葉の端端に現れる相手に対する思いやりや、謙虚さがフアンを魅了し、低迷しかかっていた女子プロツアーの蘇生に大きく貢献したのである。その宮里が引退し,女子ゴルフ界の「盛り立て役後継者」として登場したのが「藍ちゃんチルドレン」であり、その中で彗星のごとく頭角を現したのが今年の全英を制した渋野日向子ということになる。
今年5月のツアー公式戦「サロンパスカップ」で初優勝、6月の試合終了 時点で年間獲得賞金ランキング3位に浮上し、運命を決める、8月の「AIG全英女子オープン」への出場権を獲得した。しかも7月には今年新設された「資生堂 アネッサ レディスオープン」の初代チャンピオンに名を残すおまけ迄つけ、彼女の持って生まれた運の強さを示すことになった。

全英女子オープンでの活躍ぶりは種々報じられているが,地元英国のBBCの報道を紹介すると「渋野日向子が初のメジャー(タイトル)を見事な勝利で獲得」との見出しを取り、「日本の渋野日向子が全英女子オープンでの驚愕の勝利をつかむために最終ホールでバーディーを奪った」と報じた。 記事は大激戦となった最終日の渋野の最終18番のプレーに注目。「17アンダーでプレーを先に終了したサラスがプレーオフの可能性を前にパットの練習をしている間、渋野は18番ホールのグリーンに向かい、フェアウェイの両サイドへ向けて手を振り笑顔を見せていた。初のメジャー大会出場。しかも、日本国外での大会出場が初めてだったというのに、ルーキー(の渋野)は、まったく緊張した様子も見せず、カップの後ろにぶつけ18フィート(約5.5メートル)のパットをしっかりと決めた」と伝えた。
 今大会中に旋風を巻き起こしていた渋野につけられた異名は「スマイリング・シンデレラ」。同記事は「先週、英国へ到着したときは、ほとんど誰にも知られていなかったが、3番ホールで4パットのダブルボギーの後でさえ絶やさなかった笑顔で多くの新しいファンをつかんだ」と、そのプレー姿勢を絶賛。「渋野は、ウォバーンでの1日目、2日目と2位だったが、土曜日に後半9ホールで首位に立ち、多くの関係者は日本のルーキー(の渋野)に注目し始め、もっと彼女を知りたがった」と、報道陣の注目度が日増しにアップしていたことを伝えた。
 さらに「彼女は、昨年7月にプロテストに合格、世界559位で今年を迎え、日本ツアーで2勝してランキングを上げてきた」と説明。「渋野がラウンド中やラウンド後にファンとハイタッチし、自撮りでポーズを撮るところを見るのはたやすいことだった。大会がクライマックスを迎えた17番と18番ホールでさえ、彼女はフェアウェイで、お菓子を食べ、キャディーと冗談を交わしていた」と、明るくプレーしていた様子をレポートした。
更に渋野はあらかじめ準備していた英語でのスピーチを読む間、いたずらっぽく笑みを見せていたと優勝スピーチの様子と、「リンクスコースだと思っていたが木々が立っているのを見て驚いた」という大会初日に渋野が残したユーモアあふれるコメントを好意的に紹介し、「ウォバーンに到着した際に世界44位だった彼女は、多くの新たなファンの獲得とともに、54万ポンド(約7000万円)の賞金を得てバッキンガムシャー州を離れる」と報じている。
BBCのウェブサイトでも、渋野に関する記事を複数掲載。その中で「感情のないポーカーフェイスでのプレーがはびこる時代に、彼女はゴルフ界が必要としているカリスマとキャラクターを備えている、ラウンド中にもファンとハイタッチを交わすなど、常に笑顔でプレーする様子は他の選手と違うし、観客を呼ぶ力を持っている。世界中のみんなが彼女のプレーを観たいと思うようになるだろう」と、人気アスリートに必要なプレー以外での魅力を絶賛している。
同じく英国の高級紙であるガーディアン紙も、「渋野は全英女子オープンのトロフィーを手にする前から(ファンの)心をつかんでいた。この大会前に、彼女が海外に出たのは、ゴルフとは関係のないタイ旅行の一度だけだったそうで、そんな20歳(の渋野)が、18フィート(約5.5メートル)のパットを沈めタイトルをつかんだ。彼女は、今年、最も愛される話題の1つを提供してくれた」と、そのキャラクターを含めて絶賛した。   さらに「『スマイリング・シンデレラ』のニックネームを持つ渋野は、その明るく攻める姿勢を4日間、貫いた。18アンダーまでスコアを伸ばした彼女のゴルフは、その姿勢の賜物だった」と称賛。「彼女は、戦いの最中、厳格な雰囲気を保つ、このスポーツの慣習とはかけ離れた様子で観客とハイタッチをして自らに敬意を向けるギャラリーに手を振って見せた」と、明るくプレーした異例の様子を伝えた。その上で、「それは今大会の最後のパットが決まる完璧な瞬間を作り出すための演出のようにも感じられた、と報じている。
一方アメリカでは専門メディア「ゴルフ.com」で記者が読者からの質問に答える企画を展開。渋野が楽しそうにプレーしていることについて問われると、同記者はこう答えている。
「ゴルフは楽しいものだ。シブノの喜びは人から人へと広がっていく。彼女のキビキビとしたプレーは素晴らしい。観客だけではなく、他のプロをインスパイアできればと思う。気難しいゴルフ選手たちは、もし態度や仕草がよりよくなれば、スコアも伴うということが分かるだろう」 プレーファーストの機運が高まるゴルフ界の中でも、際立った渋野のスピーディーなプレーについて高く評価し、ショットに時間をかけるベテラン選手たちも見習うべきだと指摘している。
渋野に向けられた数多くの賞賛の中で、この評価こそ本当にゴルフの楽しさを理解している人のものであり、我が意を得たりと最も共感出来るものであった。スポーツの楽しみ方には、「Playing、Watching、Reading」があると思うが、観戦するのはスポーツの持つ爽快感を味わいたいというのが根底にある。スピーデイーこそ爽快感の大きな要素の一つであり、特にゴルフの場合プレイする場合でも同伴者にストレスを与えぬためにもきびきびした行動が喜ばれることをゴルファーの多くがよく知っているのである。
アメリカNBCテレビの報道でもテレビ観戦者が133万人、視聴率が異常な高さに跳ね上がりゴルフの面白さを再認識したとの視聴者の声が多く寄せられていると報じている。

このように世界中のゴルフ愛好家の心を捉え魅了した渋野の魅力とは何だろうか。(新人らしいチャレンジングな姿勢)、(天真爛漫)、(気取らず・飾らずの自然体・等身大の振舞)、(全英でプレーし、その観客から歓迎されていることに対する喜びを率直に表す心の底からの笑顔)、彼女が日本で初優勝した時に私が感じたことを、イギリスやアメリカのゴルフ愛好家も感じ取って、その笑顔に引き込まれてしまったのである。

最後にTBSラジオ8月18日放送の「美輪明宏のバラ色の日曜日」で取り上げた美輪の渋野評は 「「笑顔こそこの世の交通手形」であることを渋野日向子さんの笑顔は証明した。笑顔の素敵な美人で、豊満で均整をとれた姿はミロのビーナス、マリリンモンローを彷彿とさせる。」と絶賛している。私も含めて男性の多くが彼女に魅了される理由の一つは美輪の指摘通りなのかもしれない。

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