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追憶の彼方。

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衆院選始末記―続2  国民民主の幼稚な戦略 

2024年12月27日 | 政治・経済

衆院選始末記―続2  国民民主の幼稚な戦略 

今回の選挙、野田・立憲は「政治とカネ」の争点に特化し、腐敗しきった自民党の政治を終わらせる事こそ「真の政治改革」だと言う事を選挙戦の主要テーマにし、それが功を奏して自公過半数割れに導いた。国民民主やれいわ新選組は、この「自公政権ノー」の民意を下敷きにして、独自の経済対策を上澄みした為、物価高に悩む若年層を中心とする有権者に刺さって「自公政権ノー」の批判票を取り込み大きく票を伸ばした。自公の過半数割れにより、国民民主や維新がキャステイングボートを握り得る立場に立ったのだが、この情勢を背景に国民民主は自公政権寄りに大きく舵を切った。躍進した立憲は後回しに、先ず最初に惨敗した自民と幹事長レベルで会談し、自民との「部分連合」にサッサと応じ、特別国会での首相指名選挙について、決選投票になっても党として玉木に投票すると広言したのである。立憲からの党首会談要請も拒否し国民民主の28票全てを無効票とすることに依り、石破政権続投の後押しをしたのである。衆院選で国民民主へ投じられたのは「自公政権にノー」の批判票なのに、野党第1党の党首と会うことすらせず、自民党に擦り寄る玉木代表の行動は、有権者を欺く裏切り行為だという声が次第に強くなった。選挙では「ザ・野党」のように振る舞いながら、選挙が終わった途端、「原発増設」を訴え、「裏金問題だけが重要政治課題ではない」と嘯き、自公補完勢力の様な動きが目立ち始めた為である。

本来選挙で議論されるべきテーマとしては、「年金・社会保障」という大きな問題、能登半島地震・洪水など災害対策、成長戦略とリスキリング(Reskilling=新たな業務等のスキル習得)、人口減少を伴う地方経済の崩壊などであるが、立憲は「政治と金」に特化した為、その隙間をついて、国民民主は「手取りを増やす」と言うポピュリズムその物の政策を打ち出し、感覚的に若者の共感を得て票を集めたのである。

 「子育て世帯のために手取りを増やす」や「若者をつぶすな=手取りを増やす」為に103万円の所得控除を178万円に引き上げると言う政策を打ち出したが、「103万円の壁」問題は、約8兆円の財源(国税4、地方・住民税4)を必要とするが、その手当ては自公政権で考えろ、自分達は与党では無い、財源を考えるのは与党の責任だと言い放った。有権者に甘い事を言い、尻ぬぐいは頬被り、凡そ公党の発言とは思えぬような無責任極まりない暴言である。

所得税の非課税枠103万円(基礎控除48+給与所得控除55)は、30年来据え置かれたままであった為、国民民主は最低賃金の上昇率を根拠に非課税枠を178万にする案を提示、これに対し自公は生活必需品の物価上昇幅を目安に、基礎控除・給与所得控除を各10万円引き上げ非課税枠を123万円にする案を提示、来年度の税制改正大綱に盛り込んだ。

しかし国民民主は選挙前に充分検討を加えたのか甚だ疑問である。178万円への75万円の引き上げの内訳には何等触れていないし、178万円に引き上げた場合、年収300万円の人で年間約11万円、年収800万円の人で約22万円増えるように高所得者程、所得が増えると言う租税の重要な機能である「所得再分配機能」に逆行し格差拡大に繋がるとの批判が上がっている。更に地方税の大幅減収により地方行政が行き詰まり満足な行政サービスが出来ないとの悲鳴も聞こえている。

パートで働く主婦の年収が103万円に達すると夫の配偶者控除の適用が外れて、世帯の手取りが減少する為、働き控えが必要と言うのは昔の話、2018年税制改正で150万円迄引き上げられていて、103万円を超えると超えた分が課税されると言う課税ラインの意味しか持たない。年収113万の場合僅か5千円程度の所得税で112万5千円の所帯収入の増加となるので就労障壁では無いのである。

一方、大学生の場合、19歳~22歳の扶養控除額は1人あたり63万円、高校生にあたる16歳~18歳は38万円となって居り、収入が103万円を超えると、親の扶養控除適用が無くなるので、世帯主の課税所得が63万円増える。仮に世帯主の所得税が10%とすると、単純計算で6万3千円負担が増えると考えられ(住民税は別)、課税対象額が増えた結果、世帯主に適用される所得税率が一段階上がってしまったり(10%の次は20%)、勤務先から支給される家族手当などがなくなったりする可能性も出て来る。

しかし学生がアルバイトに多くの時間を割くのは極めて問題である。時給1200円として、103万円を稼ぐには年間850時間以上の労働が必要である。一日(3時間、週5日)労働で年約720時間、(4時間週5日)で960時間となるので、この中間程度の労働が必要となるが、肉体的、精神的疲労を考えると学業に専念することはほぼ不可能に近いと思われる。大学に対する助成金は国立で年1兆800億円、私立で2800億円弱と巨額の税金が投じられており、学業に専念することが学生の責務である。国民民主党は103万円の壁を取り払い、学生にどれだけのアルバイトをさせるつもりなのか、其の見識が問われる。大学は本当に学問をしたい人間に絞るべきで、学業の成績次第では奨学金を無償・軽減策をとればよいだけの話である。

何れにせよ、国民民主の案は人気取りだけの愚策であり、国民全体の所得を増やし、消費を喚起する為には、食料品・日用品に対する消費税を廃止することが今最も求められている事である。


衆院選始末記―続

2024年12月14日 | 政治・経済

衆院選始末記―続

話は古くなるが、総選挙の結果を振り返ってみると、次の通り勢力図が大きく変わった。自民191(-65)、立憲148+50)、維新38(-6)、国民28+21)、公明24(-8)、れいわ 9+6)、共産8(-2)で、自民は大きく減らしたものの、立憲を43上回ってトップの座は維持した。自公連立与党の獲得数215に対し野党・無所属は250。定数は465なので過半数は233となるが、裏金疑惑などが理由で、自民党非公認で選挙を戦った4名と与党系無所属の2名の計6名を自民党会派に戻すことを決めたので、与党は221、野党・無所属は244となり、与党が首班指名に必要な議席数は12人(233-221)が必要となる。立憲の場合は85人(233-148)必要で略不可能に近い。

裏金疑惑による自民党議席減の受け皿は立憲・国民・れいわがその役割を果たしたが、維新は政治資金規正法の取り扱い方法で自民寄りの態度をとった為、馬場代表のガバナンスに疑問符が投げかけられたほか、相次ぐ不祥事で支持を落とした。大阪の19小選挙区をすべて制したが、比例の近畿ブロックでは前回選挙から100万票以上減らしており、大阪の地域政党としか見られなくなった事や音喜多政調会長の落選もあって馬場代表の退陣に繋がった(現有38で立憲に次ぐ3位)。

公明党も惨敗と言えるだろう。代表の落選も含め議席数は32から24に減ったが、何よりも比例代表が600万を割り込んだ事が公明党の凋落傾向を示している。4半世紀に亙る自民との連立が自民(及び国政)を堕落させた原因だと国民が気付いた点と、支持母体の創価学会の衰退が止まらない事にある。自民党に引きずられ、『清潔な政治』、『平和』といった党の原点を見失った事も輪をかけた。今後じり貧は免れないだろう。

国民民主は7から4倍の28に増加し、現有勢力4位に滑り込んだ。その勝因は「103万円の壁撤廃の」公約を、党公式YouTubeチャンネルの生配信を通じてリアルタイムに若者を中心とする有権者と意見交換する、或いは支持者の作成した動画やコンテンツも画面上に取り上げるなどの巧妙なデジタル戦略が注目を集め功を奏したものと考えられる。

総選挙後の特別国会で行われる首相指名選挙で野党が結束し、野党第一党である立憲民主党の野田佳彦代表に投票すれば、野田代表を首相に担ぐ野党連立政権が誕生する。野党各党が第一回投票で自らの党首に投票しても、石破首相も野田代表も過半数に届かず、決選投票に持ち込まれる。そこで野党が結束して野田代表に投票すれば、自公政権は倒れるはずだった。しかし現実はそう進まなかった。総選挙で躍進した国民民主党も、総選挙で敗北した日本維新の会も、首相指名選挙で石破首相には投票しないものの、野田代表にも投票しない姿勢を早々に打ち出し、更には決選投票でも自らの党首に投票することに依って無効票とする事を明言したのである。

これにより、首相指名選挙は石破首相と野田代表が決選投票に進み、石破首相が過半数を獲得できないものの野田代表を上回って勝利し、「少数与党政権」として続投する方向が固まった。

立憲支持層には「国民民主党が野田代表に投票しないのは、政権交代を期待して自公を惨敗させた総選挙の結果を裏切るものだ」という声がある。しかしながら自公を過半数割れに追い込みながら、政権交代を実現させることができなかった最大の責任は、野党第一党の立憲民主党にある。

立民は「政権交代こそ最大の政治改革」と訴え、総選挙の「目標」として、①自公を過半数割れに追い込む、②立憲が比較第一党になる(自民の議席を上回る)事を挙げ、その結果として「政権交代を実現させる」と訴えた。しかし現実には109日解散時点で立憲公認候補は209人、全員当選でも単独過半数に届かない。公示日目前に駆け込みで比例単独候補29人を公認し、ほぼ全員当選でやっと衆院過半数の233を超え、単独でも政権を担える」(大串選対委員長)体裁を取り繕ったが、単独過半数を獲得する気構えが欠けていたのである。野田代表は総選挙で「政権交代こそ最大の政治改革」と訴えたが、野党連立政権樹立の為の準備工作は一切しなかった。立憲が50議席を増やしたのは、小選挙区で自民候補を落選させるため、立憲支持でなくても立憲候補に投票した有権者が多かったからだ。その多くは比例代表では立憲に投票せず、国民民主党やれいわ新選組に投じた。事実立憲の比例票は1156万票で、惨敗した前回総選挙から7万票しか増えていない。「自民も立憲もイヤ」という二大政党への拒否感が、国民(比例617万票、獲得議席は4倍の28)とれいわ(比例380万票、獲得議席は3倍の9の大躍進を生んだのだ。野田代表を首相に担ぐ野党連立政権の機運が高まらなかったのは、野田立憲には野党各党を束ねて政権交代を狙う野党第一党の責任をハナから放棄し、その熱意が不足していたのが大きい。自民党が公明党とタッグを組んで候補者を一本化したのと対照的に、野党陣営の戦線は最初から崩壊して居り、野党間で激しい戦いが繰り広げられる始末であった。その結果が東京24区で元経済産業相の萩生田光一の様な薄汚い人間を僅かな差で当選させる羽目に陥ってしまったのである。

最近の自民党の動きを見ていると、反省の色は全く見えない。矢張り政権交代こそ『真の政治改革』、参議院選に向って立憲・野田の本気度が問われる。

衆院選始末記―続2  国民民主の戦略へ