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相続税

2015年02月12日 | 冬ネタ

「ウチには財産がないから相続は関係ない」と答える人がいる。これは相続税の負担への誤解からくる発言で、相続は、その手続きを中心に全員がかかわることになる。

 死亡の届出は、届出義務者(親族など)が、死亡の事実を知った日から7日以内にしなければならない。そして、死亡の届出を受けた市区町村は、死亡届の記載内容を税務署に通知しなければならない。

 通知を受けた税務署は、死亡した人に相続税がかかるか否かを確認する。税務署に蓄積された確定申告のデータや、市区町村から一緒に通知される固定資産税のデータを基に、その判断をするといわれる。

 しかし、税務署でも現金や預貯金などは把握できていないので、相続税がかかりそうな場合は「相続税についてのお尋ね(相続税申告の簡易判定シート)」を送付する。相続税の申告書が一緒に送られることもある。書類の送付時期には幅があって、死亡から半年前後が多い。

 「お尋ね」には、まず被相続人の(1)住所氏名や生年月日(2)勤め先(3)相続人の名前と人数、といった情報を書く。次に、被相続人が所有していた(4)不動産(5)株式や投資信託(6)現金や預貯金(7)生命保険などの財産(8)相続時精算課税制度を利用した贈与財産(9)死亡直前3年以内の贈与財産(10)借金や葬式費用を書く。

 財産の全体を記載したら、相続税の申告書の提出が必要かどうかの判断をする欄を埋める。加算減算した財産の全体から基礎控除を差し引いて、黒字であれば相続税の申告が必要であり、赤字であれば不要と判定される。これらをすべて記載したうえで、期日までに書類を税務署に返送する。

 ここで注意したい点は、不動産は小規模宅地等の特例による評価減をしていないこと、配偶者に対する相続税額の軽減なども記載する欄がないことである。これらの特例や軽減は、相続税の申告をすることによって受けられる。したがって、相続税がかからない人には、遺産が基礎控除の範囲内であるために、申告をしなくてもよい人と、申告をすることによって、相続税がかからない人がいるのだ。

 相続税は、その課税割合が低く、「関係ない」と勘違いされるが、思い込みで申告を怠れば、特例の恩恵が受けられないだけでなく、加算税などの負担も生じる。なぜ相続税がかからないのか確認しておくことが必要だ。

 ■安食正秀(あじき・まさひで) アセット・アドバイザー代表。相続アドバイザー協議会会員。不動産コンサルタント。1963年、東京都生まれ。立教大卒。熊谷組を経て、2006年に起業。次世代への財産承継を最優先に、相続対策の企画立案、実務支援を行う。