毎朝、小さな商店街を抜けて職場に向かう。
午前7時半では、大半の商店がシャッターを下げ眠っているが、おにぎり屋とコーヒーショップは元気よく目覚め、何人もの客を飲み込んでいる。
販売せずに、シャッターを開けて準備をしている店もある。揚げ物屋だ。天ぷらやコロッケ、カツなど何十種類もの揚げ物を作り、順に並べていた。30代前半の夫婦が切り盛りしているようだ。朝からアップテンポの邦楽を流し、体でリズムをとりながらの作業である。楽しそうなのはいいとして、近所迷惑にならないのかと疑問に思っていた。
ところが、このところ、揚げ物屋のシャッターが開いていない。おおかた、寝坊でもしたのだろう。だが、気づいたら一週間も同じ状態が続いている。となると、引っ越しか? シャッターの隅の小さな貼り紙を見つけたので、読んでみた。
「失火のお詫び」
えっ、火事?!
不穏なタイトルに仰天する。本文には、半月前にこの店から火が出て建物を焼き、大変迷惑をかけた、申し訳ないと書いてあった。おそるおそる、シャッターの上に視線を動かしてみたら、ガラスのない窓枠が目に入った。黒ずんだ室内には天井がなく、焼け残った柱の間から青空が見える。通りに面した部分は残っているが、シャッターの中はがらんどうらしい。何とも無残な……。
いつも、シャッターから上は見ていなかったから、気づかなかったというわけだ。裏側から見たら、巨大な亡霊に見えるに違いない。怖い怖い。
「おや? お隣のシャッターも黒いな」
揚げ物屋の隣はソバ屋である。シャッターだけでなく、心なしか壁も黒ずんでいるような気がするが、間違いではなかった。こちらも、2階の窓が溶け落ちて、部屋の中が丸見えとなっている。隣家からの火が燃え移り、人の住めない場所に変えてしまったらしい。
「ああ……」
炎が、ヌラヌラとうごめく大ダコに見えるのは私だけだろうか。8本の長い足に触れられると、すべてが焼け焦げてしまう。いや、タコには申し訳ないと思うが。
だが、タコは、地震や大雪、大雨と違って封じ込めることができる。揚げ物屋がすべて火災に見舞われるわけではないし、たとえ火が出ても、正しく消火器を使って消し止められるのだから。
関東地方の冬はカラッカラに乾燥している。
みなさん、火事には十分お気をつけて。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
午前7時半では、大半の商店がシャッターを下げ眠っているが、おにぎり屋とコーヒーショップは元気よく目覚め、何人もの客を飲み込んでいる。
販売せずに、シャッターを開けて準備をしている店もある。揚げ物屋だ。天ぷらやコロッケ、カツなど何十種類もの揚げ物を作り、順に並べていた。30代前半の夫婦が切り盛りしているようだ。朝からアップテンポの邦楽を流し、体でリズムをとりながらの作業である。楽しそうなのはいいとして、近所迷惑にならないのかと疑問に思っていた。
ところが、このところ、揚げ物屋のシャッターが開いていない。おおかた、寝坊でもしたのだろう。だが、気づいたら一週間も同じ状態が続いている。となると、引っ越しか? シャッターの隅の小さな貼り紙を見つけたので、読んでみた。
「失火のお詫び」
えっ、火事?!
不穏なタイトルに仰天する。本文には、半月前にこの店から火が出て建物を焼き、大変迷惑をかけた、申し訳ないと書いてあった。おそるおそる、シャッターの上に視線を動かしてみたら、ガラスのない窓枠が目に入った。黒ずんだ室内には天井がなく、焼け残った柱の間から青空が見える。通りに面した部分は残っているが、シャッターの中はがらんどうらしい。何とも無残な……。
いつも、シャッターから上は見ていなかったから、気づかなかったというわけだ。裏側から見たら、巨大な亡霊に見えるに違いない。怖い怖い。
「おや? お隣のシャッターも黒いな」
揚げ物屋の隣はソバ屋である。シャッターだけでなく、心なしか壁も黒ずんでいるような気がするが、間違いではなかった。こちらも、2階の窓が溶け落ちて、部屋の中が丸見えとなっている。隣家からの火が燃え移り、人の住めない場所に変えてしまったらしい。
「ああ……」
炎が、ヌラヌラとうごめく大ダコに見えるのは私だけだろうか。8本の長い足に触れられると、すべてが焼け焦げてしまう。いや、タコには申し訳ないと思うが。
だが、タコは、地震や大雪、大雨と違って封じ込めることができる。揚げ物屋がすべて火災に見舞われるわけではないし、たとえ火が出ても、正しく消火器を使って消し止められるのだから。
関東地方の冬はカラッカラに乾燥している。
みなさん、火事には十分お気をつけて。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
自分だけならまだしも他人は巻き込めませんよね~!
今でも怖いけれど、リスク管理を徹底すれば、やみくもに恐れる存在ではないと思っています。
しかし、隣家からの出火にはなすすべもありません。
ソバ屋さんは本当に気の毒です。
隣家は選べませんからね。
保険が下りれば、新店舗を作るだけの資金ができるのでしょうか。
ZUYAさんはさすがだと感心します!
失火責任法については高校時代に習いました。
しかし、重大な過失って、どこで線引きされるんでしょうね。
判例を見てみたいものです。
火災保険は万能ではありません。
半分焼け残ったからといっても、資産価値はゼロでしょうに。
家財保険なるものもあるようです。
災害に備えて、保険会社も新商品を増やしています。
都合のいい保険に入っておけば安心ですね。
ヌラヌラは砂希さんが描いたのですか(笑)
以前聞いた話ですが、呉服屋が何回か火事を出して、その都度店構えが大きくなっていったそうです、高額の反物の査定額が怪しいかも(笑)
幹線道路近くに住んでいるので消防車はけっこう通りますが、火事以外だと、やる気なさそうにサイレンを鳴らしていきます、
先日の爆弾低気圧の時は屋根が飛ばされたとか木が倒れたとかで終日サイレンが聞こえてきて、、、
いざ本当の火事の時のサイレンは鐘も鳴らして異常にハイになり、やはり消防士のパニック感が伝わってきます。
関東地方は冬の火事が多いと思います。
ヌラヌラは無料のイラストをダウンロードしました。
もっと性悪そうなタコがよかったのに、可愛いのしかなかった(笑)
呉服屋の火事太りは許しがたいことですね。
保険金詐欺第一号かしら……。
実家が救急病院の近くにありました。
寝ているときに何度サイレンで起こされたことか。
やる気まではわかりませんでしたが。
そちらの消防士は感情表現が豊かですね。