毎朝、職場に着くとすぐにコーヒーをいれる。
マンデリンフレンチの豊かな風味が口いっぱいに広がり、幸せな気分になったところで楽しくない仕事に取りかかる。仕事が嫌いなわけではないが、休日に家でのんびり過ごす方がよいに決まっている。特に月曜日は気合いが必要だ。
「ぶつくさ言ってないで、さあ頑張ろうか」
その日も、エンジンがかかったはずだったが、何やら左の奥歯がジンジン脈を打っていた。
「いたたたた」
どうやら熱いコーヒーが歯に沁みたようだ。上の奥歯、ちょうど犬歯の隣あたりが痛い。虫歯だったら厄介だが、気をつけて様子を見なくては。
モチベーションはイマイチ上がらなかったが、その日はそれ以上悪くならなかったからまだよかった。
問題は次の日だ。お約束のモーニングコーヒーを三口ほど飲んだところで、上の奥歯だけでなく、下の奥歯まで痛くなってきた。
ズキズキ、ズキズキ。
痛みと連動して左目から涙がブワッとにじむ。頬を伝って口に入り、しょっぱい味がした。これはただ事ではない。
「ひー」
涙だけではなかった。左耳付近のリンパも腫れているし、肩も凝っている。これは医師に診てもらわないとダメだろう。私は涙目で電話を掛け、歯科の予約を取った。
「笹木さん、これは知覚過敏ですね」
「あらまあ、またですか」
「磨くとき、どうしても左側に力が入っちゃうんでしょう。何本も削れています」
「ああ……」
心当たりはある。歯ブラシを替えたせいだ。「やわらかめ」と表示されているものを買ったのだが、なぜか、それまで使っていた「ふつう」表示のものより硬かった。そのときは、疑問を感じながらも「まあいいや」と思ってしまった。力を抜いて磨けば平気だろうと考えていたが、朝の慌ただしい時間だと雑になる。そこで傷ついたのかもしれない。
「薬を塗っておきますから、来月また見せてください」
「はい」
医師が塗ってくれたものは、白いコーティング剤のようなものだった。完全に沁みなくなったわけではないが、通院前に比べれば9割減といったところか。あとは時間の経過とともに軽くなっていくはず。
「あー、腹立つわぁ。あの歯ブラシは掃除用にしてやる」
硬い分、さぞかし汚れが落ちるだろう。
「で、新しい歯ブラシはどうしよう」
もしや、買い置きがあったかもと引き出しを漁ってみる。
「あったあった」
パッケージには「ふつう」と書かれたものが見つかったが、これは夫に使ってもらおう。
「他のないかな」
別の引き出しを開けて探してみると、それらしいものが目に入る。
「ややっ」
ラッキーなことに、以前使っていたものと同じメーカーで「やわらかめ」のものが見つかった。
買い置きをすっかり忘れ、「ヘッドの小さいやつにしようかなぁ」と安易に買い替えたことが間違いだったわけだ。
「最初から、これを使えば痛い思いをしなくてすんだのに」
唯一の利点は、痛くて食欲が抑えられ、余計なものを食べずに済んだことかもしれない。
ようやく涙がとまってきた。
明日はきっと、熱いマンデリンフレンチが美味しく飲めるはず!
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
マンデリンフレンチの豊かな風味が口いっぱいに広がり、幸せな気分になったところで楽しくない仕事に取りかかる。仕事が嫌いなわけではないが、休日に家でのんびり過ごす方がよいに決まっている。特に月曜日は気合いが必要だ。
「ぶつくさ言ってないで、さあ頑張ろうか」
その日も、エンジンがかかったはずだったが、何やら左の奥歯がジンジン脈を打っていた。
「いたたたた」
どうやら熱いコーヒーが歯に沁みたようだ。上の奥歯、ちょうど犬歯の隣あたりが痛い。虫歯だったら厄介だが、気をつけて様子を見なくては。
モチベーションはイマイチ上がらなかったが、その日はそれ以上悪くならなかったからまだよかった。
問題は次の日だ。お約束のモーニングコーヒーを三口ほど飲んだところで、上の奥歯だけでなく、下の奥歯まで痛くなってきた。
ズキズキ、ズキズキ。
痛みと連動して左目から涙がブワッとにじむ。頬を伝って口に入り、しょっぱい味がした。これはただ事ではない。
「ひー」
涙だけではなかった。左耳付近のリンパも腫れているし、肩も凝っている。これは医師に診てもらわないとダメだろう。私は涙目で電話を掛け、歯科の予約を取った。
「笹木さん、これは知覚過敏ですね」
「あらまあ、またですか」
「磨くとき、どうしても左側に力が入っちゃうんでしょう。何本も削れています」
「ああ……」
心当たりはある。歯ブラシを替えたせいだ。「やわらかめ」と表示されているものを買ったのだが、なぜか、それまで使っていた「ふつう」表示のものより硬かった。そのときは、疑問を感じながらも「まあいいや」と思ってしまった。力を抜いて磨けば平気だろうと考えていたが、朝の慌ただしい時間だと雑になる。そこで傷ついたのかもしれない。
「薬を塗っておきますから、来月また見せてください」
「はい」
医師が塗ってくれたものは、白いコーティング剤のようなものだった。完全に沁みなくなったわけではないが、通院前に比べれば9割減といったところか。あとは時間の経過とともに軽くなっていくはず。
「あー、腹立つわぁ。あの歯ブラシは掃除用にしてやる」
硬い分、さぞかし汚れが落ちるだろう。
「で、新しい歯ブラシはどうしよう」
もしや、買い置きがあったかもと引き出しを漁ってみる。
「あったあった」
パッケージには「ふつう」と書かれたものが見つかったが、これは夫に使ってもらおう。
「他のないかな」
別の引き出しを開けて探してみると、それらしいものが目に入る。
「ややっ」
ラッキーなことに、以前使っていたものと同じメーカーで「やわらかめ」のものが見つかった。
買い置きをすっかり忘れ、「ヘッドの小さいやつにしようかなぁ」と安易に買い替えたことが間違いだったわけだ。
「最初から、これを使えば痛い思いをしなくてすんだのに」
唯一の利点は、痛くて食欲が抑えられ、余計なものを食べずに済んだことかもしれない。
ようやく涙がとまってきた。
明日はきっと、熱いマンデリンフレンチが美味しく飲めるはず!
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
私はかための歯ブラシを使っていますが、やわらかめの歯ブラシに変えた方がよさそうです。
そういえば、ここ1カ月は酢玉ねぎを作って食べていました。
お酢をたくさん使うので、歯に悪い影響があったかも。
今日から軟らかいブラシを使い、快適です!
いろんなハブラシがあるとつい試してしまい、
合わないこともありますよね。
今頃は、熱いモーニングコーヒーを堪能できていることでしょう。
上の奥歯は痛みが治まりました。
しかし、今度は下が……。
マンデリンフレンチは期待どおり美味しくいただいております。
歯ブラシのやわらかさはケースから出さないとわかりませんね。
早く元気な歯を取り戻したいです。