突然の「全国一斉休校要請」には参った。
都では「学年末考査のあと自宅学習」の方針が決まっていただけに、大どんでん返しで考査ができなくなり大混乱だ。安倍首相の爆弾発言は2月27日夜。職員室でも騒ぎになった。
「笹木先生、今こんなニュースが流れてますよ」
「えっ」
あの日、若手のカトウ君が自分のスマホを私に見せてきた。「休校」の2文字が視界に飛び込む。
「ありゃ~、こんなこと言ったのか」
「どうなるんですか」
「休校になるんじゃないの? 私たちに決定権はないからね」
「じゃあ、テスト、作らなくていいですか」
「いいんじゃない」
カトウ君は試験問題を作るのがツラかったようだ。ニコリとして席に戻っていった。
「いや、私は作りますよ! 万一、休校にならなかったら大変だ」
慎重派のベテラン、小柳先生の意志は強かった。次々と帰り支度をする教員を尻目に、何事もなかったかのように手を動かし続ける。心底「偉い」と感心した。
予想通り「休校」になったわけだが、すでに試験問題の印刷まで終わらせていた先生は、有効活用できる方法を考える。英語の若手先生は授業でこう言ったそうだ。
「みんな、試験はできないけど、希望者にはテストをあげるから家でやっておいで。実力をためしてみよう」
「わあい、先生、ワタシ欲しいです」
「俺も」
「アタシも」
一人がこれを始めると、生徒は全部の先生が同じことをしてくれると思い込む。
「カトウ先生のテストもください」
「私も欲しいです」
だが、カトウ君のテストは……。
「い、いや、僕は……モゴモゴ」
小柳先生の対応も独特だった。
「私はテストを配りません。来年用にとっておきます」
あらためて、刺激に対する反応は人それぞれと感じた。
一方、この騒ぎで私はセキュリティカードを学校に置いたまま、家に帰ってしまった。
「しまった! カードがないと、朝、学校に入れないじゃん。どうしよう」
誰かが学校を開けてくれればよいのだが、次の日はたまたま土曜日だ。土曜は出勤する人が少ない。毎朝6時半に来る英語の教員も、事務方の男性も休みだ。7時に到着する体育の男性は休暇を出していたし、化学の男性も出勤日になっていない。
「まあいいや。7時半ぐらいに行けば、誰か来てるだろう」
読みは当たった。のんびり自転車をこいで、職員玄関のドアに手をかけると、何の抵抗もなく開いた。
「ラッキー! やっぱり誰か来てる」
職員室の警戒も解除されていた。中にいたのは、日本史のベテラン男性だった。勢いよく声をかけてくる。
「今日は私が一番でしたよ!」
生徒は土曜日まで登校したが、明日から学校に来ない。
しっかり勉強するんだよ。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
都では「学年末考査のあと自宅学習」の方針が決まっていただけに、大どんでん返しで考査ができなくなり大混乱だ。安倍首相の爆弾発言は2月27日夜。職員室でも騒ぎになった。
「笹木先生、今こんなニュースが流れてますよ」
「えっ」
あの日、若手のカトウ君が自分のスマホを私に見せてきた。「休校」の2文字が視界に飛び込む。
「ありゃ~、こんなこと言ったのか」
「どうなるんですか」
「休校になるんじゃないの? 私たちに決定権はないからね」
「じゃあ、テスト、作らなくていいですか」
「いいんじゃない」
カトウ君は試験問題を作るのがツラかったようだ。ニコリとして席に戻っていった。
「いや、私は作りますよ! 万一、休校にならなかったら大変だ」
慎重派のベテラン、小柳先生の意志は強かった。次々と帰り支度をする教員を尻目に、何事もなかったかのように手を動かし続ける。心底「偉い」と感心した。
予想通り「休校」になったわけだが、すでに試験問題の印刷まで終わらせていた先生は、有効活用できる方法を考える。英語の若手先生は授業でこう言ったそうだ。
「みんな、試験はできないけど、希望者にはテストをあげるから家でやっておいで。実力をためしてみよう」
「わあい、先生、ワタシ欲しいです」
「俺も」
「アタシも」
一人がこれを始めると、生徒は全部の先生が同じことをしてくれると思い込む。
「カトウ先生のテストもください」
「私も欲しいです」
だが、カトウ君のテストは……。
「い、いや、僕は……モゴモゴ」
小柳先生の対応も独特だった。
「私はテストを配りません。来年用にとっておきます」
あらためて、刺激に対する反応は人それぞれと感じた。
一方、この騒ぎで私はセキュリティカードを学校に置いたまま、家に帰ってしまった。
「しまった! カードがないと、朝、学校に入れないじゃん。どうしよう」
誰かが学校を開けてくれればよいのだが、次の日はたまたま土曜日だ。土曜は出勤する人が少ない。毎朝6時半に来る英語の教員も、事務方の男性も休みだ。7時に到着する体育の男性は休暇を出していたし、化学の男性も出勤日になっていない。
「まあいいや。7時半ぐらいに行けば、誰か来てるだろう」
読みは当たった。のんびり自転車をこいで、職員玄関のドアに手をかけると、何の抵抗もなく開いた。
「ラッキー! やっぱり誰か来てる」
職員室の警戒も解除されていた。中にいたのは、日本史のベテラン男性だった。勢いよく声をかけてくる。
「今日は私が一番でしたよ!」
生徒は土曜日まで登校したが、明日から学校に来ない。
しっかり勉強するんだよ。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)