これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

たまには「死」について考えてみた

2020年03月22日 21時46分22秒 | エッセイ
 20代の娘に『100日後に死ぬワニ』という4コマ漫画の内容を聞き、話題になっていることは知っていた。
「今日はね、100日目だからワニが死んじゃうの。どうやって描くんだろう」
 娘も興味津々で、最終回の3月20日を迎えた。
 連載開始は12月12日。ラストは最初から決まっていたというから、桜の開花を予想し、逆算してスタートしたのではないか。
 ワニ君はフリーターらしい。バイト先では「センパイ」と呼ぶ異性に恋をして、一人暮らしをしているアパートではゲームに没頭しカップ麺をすする毎日のようだ。バイトを辞めたり、約束の時間に遅れたりと、今どきの「自由人」に見える。もっとも、人間ではないけれど。
 この漫画は、毎回「死まであと○○日」との言葉で締めくくられ、読み手に結末を予告するところが面白い。キャラたちはワニの寿命を知る由もなく、毎日普通に呼吸をし、深く考えずに生きている。ワニはワニで、一年後に届く布団を注文したり、「死んだらあげるよ」などと発言したりして、自分の人生がカウントダウンに入ったことなど頭の片隅にもない。
 だからこそ、交通事故死らしき最期が衝撃的なのだ。伏線もあり、よく計算されていると感心した。
「なんかね、この漫画家の友達が事故死してるんだって。人生、何があるかわからないから、限りある時間を大切にしてほしいと思って描いたらしいよ」
 娘の解説に大きく頷く。残念ながら、最終回直後にアニメ化や書籍化の話が浮上し、炎上してしまったのは気の毒に思う。
ところで、無事に明日を迎えられる保証などどこにもないのに、私たちはなぜ「今日死ぬかもしれない」とは思わないのだろう。もちろん、死んだことがないから、死後どうなるかは誰もわからない。だけど、誰もがいつかは死ぬのだから、たまにはこれに向き合うことも必要だ。
 もう2年も前のことになるが、職場で隣の席だった男性が亡くなった。滅多に休まない人だったのに、頭痛がするといって3日ほど休暇をとり、家で休養していた。4日目の朝に、家族が様子を見に行ったら、すでに布団の中で冷たくなっていたそうだ。死因はくも膜下出血だった。
 亡くなってすぐに、彼のPCの電源が入ったままであることに気づいた。机の中からは、帰りが遅くなったときに備えてカロリーメイトなどの備蓄食料が残され、出勤できない事態を一瞬たりとも考えていなかった様子がうかがえる。私の場合、やりかけの仕事を残したまま旅立たぬよう、キリのいいところまで終わらせてから帰ろう。机の中には、クッキーやナッツ、カステラ、ビスケットなどが入っているけれど、「何だ、この食料は」と驚かれたら恥ずかしいから、必要最小限に減らそうと決めた。
 男性が亡くなったのは10月だったが、ワニ君は3月である。
 どうせ死ぬなら、桜の咲く時期にと願う話を、若いときに読んだ気がした。
 わが家の桜は、まだ5分咲きといったところか。



 桜に見送られて、生涯を終えるのも一興であることは間違いない。



 でも、私は雪に見送られたい。
 今年、東京に雪は積もらなかった。一面の銀世界と化した日に、あの世に旅立てば、天国に行かれそうな気がするのだが。
 殺しても死にそうにないって、誰か言いましたか?


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コメント (10)
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