これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

4月26日今日は何の日

2018年04月26日 21時40分52秒 | エッセイ
 父の様子がおかしいと、母から聞かされたのが今月初めである。
「ご飯を食べなくなっちゃってね。口に入れても、噛まずにずーっとそのままの姿勢でいるんだよ。放っておくと、昼過ぎまで座っているよ。動くのもイヤみたい」
 いよいよ認知症かと覚悟を決めた。
「実は、認知症の薬は5年前から飲んでるんだよ。木の実を見つけたとか言って、ガラクタばかりを拾ってくるようになったからね」
 そんなことがあったとは! でも、薬を飲み始めてからは元に戻ったそうだ。
「気になるのが足のむくみでね。何でだか知らないけど、パンパンになってるんだよ」
「それはもう、病院に連れて行くべきだよ」
「そうだねぇ。そうしようかねぇ」
 母もだいぶ参ってきたらしい。数日後には、いやがる父を無理やり病院に引っ張っていった。
「肺炎です。すぐ入院してください」
 医師の診断はまったくの想定外で、母も私も驚いた。
 50年近く喫煙を続けていたせいで、父の肺はボロボロになっているそうだ。十分な酸素を取り込むことができず、頭はボンヤリ、酸素が行き届かない足はパンパンとの説明を受けた。酸素ボンベからつながった管を鼻に入れて、毎日ベッドの上で過ごすことになった。
 先週、娘と一緒に父の見舞いに行った。母から聞いた病室に着くと、「砂希か」と声がする。
 よかった、ボケていなかった。
 話が弾む相手ではないので、妹が置いていったタブレットを借りる。数独、五目並べ、ソリティアなどのゲームをしていると、父も笑って見ていた。1時間ほど滞在したあと、母が一人で住む家に向かった。
 いつもは那須塩原駅まで父が迎えに来てくれるが、あいにく入院中なので、東北本線に乗って最寄駅まで行く。
「うわ、無人駅だよ、ここ」
自動改札はおろか、券売機すらないではないか。
 券売機の代わりにあったのが、乗車駅証明書を発行する機械である。



 これを持って、他の駅で清算すべしと書いてあった。のどかだな……。
 両親の家まで、歩いて15分かかる。蝿がブンブン飛び、毛虫が地面を這う道をトコトコと歩いた。田んぼではカエルがゲロゲロ合唱している。マイナスイオンがたっぷりありそうだ。
「こんにちは~」
 一泊して夕食を作り、少しは母の手伝いができたかな?
 酸素が十分に行き渡ったせいか、父は2週間ほどで回復した。
「おかげさまで、お父さんは今日退院だよ。ありがとうね」
 朝から母の弾むようなメールが届いた。それは何より。今日はいい日だな~。
 ラジオから「4月26日。今日は何の日」という声が聞こえてきた。
「1937年、ドイツがスペインの都市ゲルニカを攻撃し、2000人以上の死者を出しました。画家のピカソはこれに抗議し、わずか1カ月で大作『ゲルニカ』を仕上げました」
「1986年、ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所で大規模事故が起こり、多くの人が被ばくしました」
 …………。
 おっと、ろくな日じゃないぞ、今日は。
 ちなみに、私がブログを始めたのも2008年の4月26日である。今日は記念すべき10周年のはずなのだが、ゲルニカとチェルノブイリのあとでは素直に喜べない。
 ひとまず、父の退院おめでとう!


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (8)
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