これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

牛の角

2014年07月03日 20時13分13秒 | エッセイ
 目覚まし時計が鳴る前に起きたのに、洗面台の鏡を覗きこんだ瞬間、布団に戻りたくなった。ショートカットの髪が、牛の角のように張り出し、左右に広がっていたからだ。



 なにこれ、サリーちゃんのパパみたい!

 幼いときに見たアニメ「魔法使いサリー」に登場する、サリーちゃんのパパもこんな髪型だった。
 当時、私は中学生である。同性の目も異性の目も気にする年頃だというのに、あまりにも悲惨な寝癖がついていた。水で濡らしてドライヤーをかけても全然直らない。時間切れのまま学校に行ったら、思った通り友達に笑われた。
 もっとも、左右対称ならまだいい。困るのは、右だけ、左だけが外側を向いている寝癖である。そんな日は、授業中に指されるのはごめんだし、人様に意見する気も失せる。とにかく目立ちたくなかった。女子にとって、寝癖の有無は一大事なのだ。
「朝、お風呂に入ればいいのに」
 仲良しのナオミが不思議そうな顔でつぶやいた。うちは、光熱費を気にする母が厳しくて、夜にしか入浴できない。奇妙な寝癖がついても、忍の一字でやり過ごすしかなかった。
 ところが今では、寝癖風に髪をセットする若者がいる。ワックスやジェルをつけて、根元を膨らませたあと、毛先をわざと左右に散らすのだ。この時代に生まれていれば、寝癖を恐れることもなく、もっと自己主張の強い人間になっていたかもしれない。
 あれからウン十年たち、立派にオバさんの仲間入りをしたら、寝癖に悩まされることがなくなった。寝相がよくなったのか、髪にハリがなくなったのかは不明だが、朝は平常心で鏡を見ることができる。
 ところが、珍しく8時間眠った翌朝、久しぶりに牛の角が登場した。今までは、寝癖がつくほど寝ていなかったらしい。寝癖をなくす代償として、睡眠時間を奪われたのだろうか。
 はて、悪魔と取引した覚えはないのだが。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (13)
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