(マックス・ヴェーバー入門 (山之内 靖))
西林克彦氏の「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」という本にも「ステレオタイプの当てはめの弊害」が指摘されていました。
すなわち、過去の記憶・先入観等の「思い込み」や「受け入れやすい概念」が、ステレオタイプ的な「わかったつもり」の状態に誘導するとの仮説です。
この本でも、従来からのヴェーバー研究の歪みの原因が、まさに同様の理由によるものとして説かれています。
すなわち、著者の主張によると、ヴェーバーは「近代主義の批判者」であったにも関わらず、ある種のステレオタイプ的な立論により、多くの研究においては「近代主義者」であったとされているというのです。
(p54より引用) 読者には、近代世界に入って以降の人間の歴史を進化論的ないし弁証法的に、一定方向的な発展過程を歩むものとして理解してしまう解釈体系が暗黙のうちに前提されてしまっている。この前提があるために、ヴェーバーの作品について著者本来の意図とは異なったステロタイプ化されたスタンダードな解釈が成立してしまう。こうした不幸な歴史があったため、ヴェーバーの作品について、きわめて一面的な読み取りがなされてきた。
本書は、従来の多数説・定説に対して一石を投じた挑戦の著作です。
この本の論旨が正しいか否かは、従前の定説を理解していない私には判断できませんが、こういう思索の論争はその形式だけでも勉強になります。