(マックス・ヴェーバー入門(山之内 靖))
ヴェーバーの最も有名な著作といえば「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」です。
この著作において、ヴェーバーは、「営利の追求を敵視する禁欲的な中世プロテスタンティズムの経済倫理が、実は近代資本主義の生誕に大きく貢献した」との立論をしているというのが通説です。
山之内氏は、プロテスタンティズム、特にカルヴィニズムの影響に着目し、その「被造物神化の拒否」の姿勢が、近代の功利主義的・合理主義的組織体系を導出したとの論旨を紹介しています。
(p89より引用) カルヴィニズムは近代的な組織原理に大きく作用した、とヴェーバーは言います。・・・カルヴィニズムは徹底した被造物神化の拒否を通じ、個人の内面的孤立化をラディカルに進めました。・・・カルヴィニズム的信条をもった人々の場合には、・・・感情面を中心に組織がつくられるわけではない。被造物的なものに意味を認めることは一切排除されているわけだから、組織をつくってゆく場合、集合体としての目標は、功利主義的な意味での効率性を通して、社会の一般的な豊かさに貢献する以外には設定することができなくなっている。すなわち、数学的、物理学的に計算できるような意味での社会への貢献ということ以外にはもはや目標はなく、感覚的な領域で対人的に貢献するということには、意味が与えられなくなってしまった。
さらに、この流れで、組織における価値観、すなわち評価のメルクマールが「業績」に移っていったというのです。
(p90より引用) こうして、この近代化された功利主義的社会組織の中では、アスクリプション(帰属主義)に代わってアチーヴメント(業績主義)が人々の評価基準になっていったのです。