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長い論理 (国家の品格(藤原 正彦))

2006-08-11 20:10:59 | 本と雑誌

 先のコメントに続いて、次のなるほどは、「長い論理の危険性」についてのくだりです。

(P58より引用) 一般の世の中では、長い論理というのは非常に危険なのです。すべてのステップは灰色だから、小数のかけ算を何度もすることとなり、信憑性はどんどん下がっていきます。

 例として「風が吹けば桶屋が儲かる」話が示されていましたが、そのとおりです。
 ロジックとしては、それなりに因果関係が認められるものの、原因と結果が成立する「確率」を考慮すると、結果として最終結論(桶屋が儲かる確率)は極めて小さくなるというわけです。

 このように、数学者でもある著者一流の説明は、結構分かりやすく、的を得たものも多く見られます。

 もちろん、非常にハッキリした主張内容なので、私にとっては、その内容自体、100%首肯できるものではありませんでした。
(この本が、今でもなおベストセラーで残っているという現象の方により興味を惹かれます)
 本書自体、著者の講演記録に筆を加えたものとのことですから、十分な根拠データや反論を想定した重厚な理論武装を求めるのは無理だと思いますし・・・。

 ただ、1点、気になるところがありました。

(p13より引用) 産業革命の家元イギリスが七つの海を武力によって支配し、その後をアメリカが受け継いだ結果、いま世界中の子供たちが泣きながら英語を勉強している。侵略者の言葉を学ばなければ生きていけないのですから。
 もしも私の愛する日本が世界を征服していたら、今ごろ世界中の子供たちが泣きながら日本語を勉強していたはずです。まことに残念です。

 藤原氏は、この文で何を伝えたかったのでしょう。
 局所的にこの部分だけ採り上げるのはフェアでないかもしれません。ただ、私は、(申し訳ないのですが、)この一文で、藤原氏の立論に偏見を抱いてしまいました。
 残念です。

コメント (3)
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